garamanのマジック研究室

スエズ運河を消せ

第二次世界大戦中、イギリス軍に実在したマジシャン、ジャスパー・マスケリン。彼が率いるそのチームは「マジックギャング」を名乗り、敵軍を相手に様々なイリュージョンをしかけます。物語は、マジックのスキルを戦場で役立てたいと、マスケリン自身が売り込んでいくところから始まります。徐々にその腕前が認められ、絶体絶命のピンチを何度も切り抜けていく間に上官からかの信用を勝ち取り、最後の切り札として、考えられないようなミッションを与えられるようになっていきます。そのミッションとは、本のタイトルにもあるように「スエズ運河を消せ」といったものや、「自軍の戦車隊を気づかれないように敵軍の傍につけろ」といったものばかり。無理難題をマジック的手法で次々と解決していく痛快なストーリーです。

原題は「The War Magician:The Man Who Conjured Victory in the Desert」。一応、ノンフィクションということになっていますが、おそらくフィクションが混ざっているでしょう。歴史的事実を知るには相応しくないかもしれませんが、読み物としては非常に面白い内容です。また、フィクションが混ざっていると言っても、登場するのは実在の人物ですし、イギリス軍に「マジック・ギャング」が存在していたのも事実です。功績が誇張されていたり、面白いエピソードが追加されていたりしますので、それを踏まえて楽しんでください。

なお、マスケリンの功績は、イギリス軍の最高機密として扱われ、1946年から100年間封印される事が決まったそうです。つまり、公開されるのは2046年になります。

デビッド・フィッシャー
金原 瑞人(訳)
杉田 七重(訳)
柏書房

レビュー

なし