garamanのマジック研究室

エリック・ミード クロースアップマジック

TED での偽薬に関するプレゼンテーションで話題になった、エリック・ミードの著作です。原作は [Tangled Web]、"絡まった蜘蛛の巣" といったところでしょうか。2006年に出版されたこの本が、角矢幸繁氏の翻訳でようやく日本語で読めるようになりました。クロースアップマジックと銘打っていますが、クロースアップの作品解説がメインではありません(なぜこのタイトルになったのでしょう?)。エリック・ミードのマジックに対する考え方が述べられている解説書と思った方が間違いないと思います。その理論を説明するために幾つかの作品も解説されていますが、やはり作品解説がメインではありませんので、技術的な細かいところは別の本を参照するように、という添え書きがある程度です。すでに演技をする機会を多く経験してきた人が、一度立ち止まって自分の演技を見直す時に読むと、得るものがありそうな内容です。少なくとも、これから趣味でマジックを始めようという人が読む本ではありません。

中でも注目は「治安紊乱行為(ちあんびんらんこうい)」という章です。タイトルが分かりにくいですが、社会の秩序や風紀を乱す行為のことで、アメリカでは多くの州で規定されている罪だそうです。そんな物騒な名前をつけて何を語っているかというと、ずばり、メモライズド・デックについてです。スタックをいかに維持しながら他の作品を演じるか、といった視点や、一度崩れたスタックをどのように戻すか、といった視点での分析がなされていて、これはもう一つの論文です。メモライズド・デックを活用したいと思うなら、この20ページは充実の内容と言えるでしょう。

Eric Mead
角矢 幸繁(訳)
東京堂出版

レビュー

なし