garamanのマジック研究室

ファイブ・ポインツ

スペインの個性的なマジシャン、ホワン・タマリッツ。その奇抜な演技に目を奪われがちですが、緻密な計算に基づいた「超」が付くほどの理論派です。今や、アルトゥール・デ・アスカニオと並んで、スペイン・マジック界の至宝です。その彼が、1980年頃のレクチャーでいくつかのレクチャーノートを作成しています。それを元に、補足してハードカバーにしたものが本書の原型です。それが日本語になって読めるようになりました。古い本ではあります。しかし、内容が劣るわけではありません。時代を超えていつまでも通用する、プレゼンテーションの本質が分かりやすく解説されています。プレゼンテーションというよりコミュニケーションと言った方が適切かもしれません。

「視線」「声」「両腕」「両足」「体全体」の5つに焦点を当てて、それぞれのポイントを解説しています。ちょっとした無駄な動き、何気ない癖、その細かなことが観客を混乱させ、マジックの現象を曇らせてしまいます。その曇りをなくし、より観客の心に印象を残すためのアドバイスが満載です。写真やイラストも多く、実例と共に解説されているので、実際にレクチャーを受けているような構成になっています。

本編は100ページにも満たないボリュームながら内容は濃く、巻末の13ページにも及ぶ参考文献もまた魅力です。ハードカバーにした目的は、この後に刊行されるものと合わせて綺麗に三部作として揃えるためだそうです。完結編である「マジック・レインボウ」は25年の歳月かけ2012年にスペイン語版が完成したそうです。

Juan Tamariz
滝沢 敦(訳)
スクリプト・マヌーヴァ

レビュー

なし