garamanのマジック研究室

マジシャンのための ウケるキッズ・ショーの作り方

キッズ・マジシャンとして評判の高い デビッド・ケイ(David Kaye)、本名デビッド・フリードマン(David Friedman)による解説書です。マジックを演じる時には、大きな眼鏡をかけた変わったキャラクターで、シリー・ビリーと名乗っています。大人を相手にしているマジシャンは、子供を相手にしているマジシャンを見下すケースがあるようです。子供向けのマジックは文字通り「子供騙し」と思っているからでしょう。しかし、この本を読むとその認識がひっくり返ります。

一般的なマジシャンは大人を相手にします。観客を舞台に上げる時や手伝いを頼む時には、相手を選ぶことに注意を払います。小さな子供や目立ちたがり屋、酔っ払いなどは慎重に対象から外します。言い換えれば、一般常識を備えたある一定の範囲の観客しか相手にできないとも言えます。トランプの数字やマークの意味がわからないほどの小さな子供をマジックで楽しませるにはどうしたら良いのか、冷静に考えればその難しさがわかります。相手の認知レベルに合わせた演技をする難しさについては、年齢が低いほど細かく検討する必要が出てきます。落ち着いた大人しか相手にしないことが簡単に思えてくるほどです。この難しさに真摯に向き合った著者の集大成的な解説書です。

心理学的考察や、子供向けのマジックの作り方、よく起きる問題への解決法など、全体を通して非常に示唆に富む内容です。特に子供に焦点を当てた心理学的考察は、机上の空論でも想像でもなく、実践に裏打ちされています。マジシャン向けのアドバイス満載ですが、小さな子供の子育てに悩む人にも有効だと思われます。

David Kaye(著)
滝沢 敦(訳)
新城 真知子(訳)
Kaufman and Company
株式会社リアライズ・ユア・マジック

レビュー

なし