garamanのマジック研究室

興行師たちの映画史

マジックについての解説ではありませんが、数名のマジシャンに関する興味深い記述が含まれていますので、ここで紹介します。1895年12月28日、パリで初上映されたシネマトグラフを、プロマジシャンのジョルジュ・メリエスが客として観ていた時から、映画とマジシャンとの密接な関係が始まります。当時メリエスは、レビューとマジックを織り込んで、ファンタジックな芝居を見せる「夢幻劇」というジャンルを作り出していました。その夢幻劇をシネマトグラフがさらに魅力的なエンターテイメントにしてくれる事や、マジシャンとしての自分を宣伝するための最高の道具になる事に、彼はいち早く気が付いたのです。そもそもシネマトグラフを発明したリュミエール兄弟が「駅に到着する列車」や「工場を出てくる人々」といった、ドキュメンタリーを上映していたのに対し、「月旅行」などをはじめとする幻想的な映像で魅了したメリエスの作品が、観客の心を掴んだであろう事は容易に想像がつきます。その後、ハリー・フーディーニも映画に強い可能性を見いだし、いくつもの作品を作り上げました。メリエスにしても、フーディーニにしても、マジシャン・興行師・映画監督・俳優といった全てをこなしていたのです。
映画というジャンルから見たマジシャン達のエネルギッシュな活動を垣間見る事ができる、興味深い本です。フーディーニの演技シーンも数枚の写真で見る事ができます。

柳下 毅一郎
青土社

レビュー

なし