garamanのマジック研究室

アスカニオのマジック

スペインを代表するマジシャンたちが、声をそろえて絶賛する人物。それがアルトゥーロ・デ・アスカニオです。日本では独自のマジック文化として「和妻」が盛んに行われていた時期がありますが、スペインのマジックも他とは一線を画しています。どちらの国も英語を母国語としないため、英語による書物が普及するのも遅く、独自の発展を遂げていく礎になっているようです。逆にその国で書かれた書物が英語圏に広まることもないため、独自の文化がいつまでもミステリアスなままになってしまいます。「和妻」は無くなってはいないものの、日本人マジシャンでさえ詳しいことが分からなくなっているような状況ですが、スペインのマジック文化は現在まで確実に栄えています。

その土台を築いたのがアスカニオで、ホワン・タマリッツやロベルト・ジョビーなどにもその思想が受け継がれています。誤解を恐れずに書くと、アメリカを中心とするマジックがエンターテインメントとして発展しているのに対して、スペインのマジックは芸術としての完成度を高めていくことに力を発揮しています。そんなマジックの本質を見つめる深い洞察力が生み出した理論書が、この「アスカニオのマジック」です。既に英語版も出版されていて、全世界から評判を得ている理論書です。全4巻ですが、第1巻が全てマジック理論の考察に当てられており、第2巻以降にはマジックの解説があります。今回翻訳されたのは、第1巻です。

この本の存在価値に深い衝撃を受け、4年以上に及ぶ翻訳の大事業を達成されたのは JCMA の会長の田代茂氏です。「観客にウケるかどうか」だけでマジックの良し悪しを判断することに抵抗のある人は、ぜひご一読ください。あなたの心に響く言葉がきっと見つかります。

Jesus Etchevery
田代 茂(訳)
Paginas Library MAGIA

レビュー

なし