garamanのマジック研究室

マキシマム・エンターテインメント

映画に監督がいるように、コンサートに指揮者がいるように、舞台に立つ人には演出家がいます。舞台上に表現される世界をエンターテインメントとして完成させるために責任を持つプロたちです。そんなプロの力を借りずに舞台に立つ役者がいるでしょうか?演出家の意見を聞かずに舞台に立つ役者の演技を見て、舞台上で表現される世界に入り込めるでしょうか?答えは明確に No です。もちろん、演出家も兼務できてしまう役者さんもいますが、そんなケースでも演出家が不在なわけではないのです。かならず、演出家の目線を持った人が舞台上の世界作りに責任を持っているわけです。もし、演出家の力を借りられずに、ましてや自分自身に演出家としてのセンスもない状況で、唐突に舞台に立てと言われたらどうでしょう?もし臆せずに舞台に飛び出せるとしたら、よっぽどの才能を持っているか、勘違いしたパフォーマーかのどちらかでしょう。

ところで、演出家をつけずに舞台に上がるほとんどのマジシャンたちは、どちらでしょうか?ちょっと考えるだけで、背中が冷たくなる思いです。大抵のマジシャンは演出家をつけません。特に自分の腕一本で演技していると自負している、ストリート・パフォーマーやクロースアップ・マジシャンは、演出面でアドバイスをくれる存在はいないケースがほとんどでしょう。でも、だからこそ、演出家的な視点で自分の演技を見つめる必要があります。パフォーマーとしての練習時間を確保するのと同じように、演出家としてエンターテインメントに昇華させるための時間を確保するべきなのです。

そんな、当たり前のことに気づかせてくれる良質の一冊。

Ken Weber(著)
田代 茂(訳)
スクリプト・マヌーヴァ

レビュー

なし