garamanのマジック研究室

メンタリズムの罠

現代を代表するメンタリストの1人、ダレン・ブラウンの「Tricks of the MIND」の翻訳です。全文翻訳したところ2部作になるほどのボリュームになってしまったとのことで、多少割愛した部分もあるようです。もともとマジックと催眠術のショーを両方こなしていたダレン・ブラウンが、マインドリーディングをテーマにしたテレビ番組に出演するようになり、メンタリストとして名を馳せるようになりました。倫理的に問題視されかねない心理学的実験を行ったり、実弾を使ったロシアンルーレットを強行するなど、お騒がせな面も多々ありますが、その実力は万人の認めるところです。初期の彼のパフォーマンスを支えていた様々な分野のトピックスをこれでもかと盛り込んだ内容で、470ページ以上もある大冊です。マジック・催眠術・記憶術・科学と、彼のショーで多用されるあらゆる分野での考察が記されており、楽しい実例をあげての解説が飽きさせることなく読者を引き込みます。ウィットに富んでいるという表現では生ぬるいくらい辛辣な文章も多々ありますが、示唆に富んだ鋭い指摘が多く、結果的には有益なアドバイスになっています。

なお、Essential Magic Conference 2012 ではスピーカーの1人として名を連ねていますし、自分自身を「マジック野郎」であると、あとがきに記すほどですので、マジックから離れてメンタリストに転身したというわけではありません。そういう意味でもマジックを扱った私のサイトで紹介する事には、私自身は何の違和感も感じていません。翻訳者がメンタリストDaigo氏なので、タイトルも「メンタリズムの罠」となっていますが、ダレン本人は「メンタリズム」という単語を殆ど使っていません。Daigo氏の宣伝を狙ったのか、日本の読者にはメンタリズムといったほうが分かりやすいとの判断なのかは分かりませんが、「メンタリズム」という単語の捕らえ方は人そぞれでしょうから、あまり先入観を持たずに読まれる事をお勧めします。

Derren Brown
Daigo(訳)
扶桑社

レビュー

なし