garamanのマジック研究室

午前零時のサンドリヨン

第19回鮎川哲也賞受賞作品。2009年の発行です。著者の相沢沙呼氏は、フリーのプログラマーをしながら作家を目指し、この作品でデビューされたようです。また、デビュー時に行なったトークイベントでマジックの実演をした程のマジック好き。アマチュア・マジシャンです。小説を書くマジシャンというと泡坂妻夫氏を連想しますが、氏とはまた違った雰囲気でマジックが小説の中に溶け込んでいます。ちなみに、名前から女性を連想しがちですが、メガネの似合う温厚そうな男性です。また、タイトルの「サンドリヨン」とは「シンデレラ」のフランス語です。

それでは作品を紹介しましょう。

舞台は学校。学校ではクールで物静かな、高校一年生の酉乃初。放課後にはレストラン・バー「サンドリヨン」でマジシャンとして活躍する彼女。その二面性を知り、あまりのギャップに主人公・須川君は心を奪われる。学校内ではいくつかの謎の事件が起こり、須川はそれを解決しようと奔走する中で、酉乃初に協力を求める。果たして、謎の事件はどのように解決に向かうのか。また、2人の心は通い合えるのか。。。

謎の事件を解決に導く探偵小説でありながら、須川と酉乃の恋愛物語でもあります。しかも、マジシャンが読んでもニヤリとしてしまうような要素を盛り込んだ娯楽小説です。

鮎川哲也賞は、他の賞と違い「選考委員の指摘により手直しがあり得る」という特徴があります。選考の公平さを欠く危険を伴いますが、それでも僅かな指摘により大きく変身できそうな作品を評価するというスタンスを取っているようです。ところが、「午前零時のサンドリヨン」は他の応募作品と比べて完成度が高く、その巧さゆえに選考から漏れそうになった経緯があります。それ程優秀な作品です。是非ご一読を。2012年に文庫版も出ました。

相沢 沙呼
東京創元社


電子書籍版もあります。

レビュー

なし