garamanのマジック研究室

手品師の帽子

ストーン・ブレイン博士によって作り出された物語。放浪の吟遊詩人・クライツは、森でリュートを片手に、詩を一曲歌い上げた。森の動物たちは息を呑んで聞き入り、とくに感じ入った猿は、興奮気味にとっておきの鳥の羽をプレゼントした。クライツはもらった羽を帽子につけ、少し誇らしくなった。でも空きっ腹は満たされない。貧しいながらも心のままに詩を歌うクライツは、ホッホ亭という居酒屋にふらっと立ち寄った。食べるためのお金もないクライツは、食べるためにここでも一曲歌い上げた。すると、意味ありげな視線を送ってくる謎の紳士が、チャリンとコインを投げ入れてくれた。言葉も通じなくて困っていると、謎の紳士は自分の帽子から2冊の本を取り出した。1冊は自分のため、もう1冊はクライツのために。どうやらこれで翻訳ができるらしい。なんとか会話を続けていくと、謎の紳士は手品師で、彼もまたストーン・ブレイン博士によって生み出されたのだと言う。彼は、頭にかぶったシルクハットから、あらゆるものを取り出すことができる手品師だ。でも一度だけ「詩を出してくれ」と言われて、どうしても出せなかったことがあった。彼は、ストーン・ブレインにこの悩みを解決してくれるように願った。すると「西に向かって歩け。居酒屋でクライツという男に会うだろう」と言われたのだとか。そんな出会いから、クライツの運命は大きく変わっていく。

絵本作家として有名な安野光雅氏が、1976年に出版した傑作ファンタジー。数ページに一度、穏やかで印象的な雰囲気のある挿絵が挟まっているのも魅力的です。数学・文学・科学・美術など、様々な分野に造詣が深い安野氏。この作品中でも専門的なフレーズが、ユーモアを交えて使われています。色々な分野に好奇心を持ち、かつ子供の心を忘れない、そんな大人が楽しめる一冊です。

1985年に新潮社からも出版されています。

さらにその後、1992年に筑摩書房から出版されました。

安野 光雅
筑摩書房

レビュー

なし