garamanのマジック研究室

奇術入門シリーズ テーブルマジック

「テーブル・マジック」という言葉も徐々に影を薄め、代わりに「クロースアップ・マジック」という言葉がすっかり定着しました。タイトルだけでもおおよその年代が分かりそうですが、発行は1993年です。マジックというと「オリーブの首飾り」が流れる中、数十人の前で演じるような中規模なマジックを想像される事が多かった当時において、クロースアップ・マジックを取り上げた本ですから、ちょっと時代を先取りした本だったと言えるかもしれません。しかし一般的にはそういう印象は伝わらなかったようです。ステージやサロンマジックといった中・大規模のマジックがプロの領域で、身近なもので演じるクロースアップ・マジックは素人による宴会芸、というような位置づけで捉えられてしまったような気がします。いまいち、その魅力が伝わらなかったのが残念です。その後、2000年頃から徐々に始まり、2003年から2004年にかけてピークを迎えたクロースアップ・マジック・ブームがありましたが、なぜか殆どがカードマジックに終始していたような気がします。特に経験の浅いマジシャンは、カードマジックか売り物の道具に頼ったものが目立ちました。カードやコインには時間をかけてテクニックを身に着けるものの、他の分野では急に道具に頼るようになるという偏った印象を受けたものです。あれだけのブームがあったにも関わらず、真のクロースアップ・マジシャンは相変わらず少ないのです。この本に載っている作品の殆どは難しいテクニックを必要としませんが、それでも宴会芸に成り下がらないようにしっかりと練習したいものです。

扱っている品物は、安全ピン・マッチ・たばこ・ハンカチ・サイコロ・割り箸・糸・コップなど、身の回りの物ばかりです。全44作品の最後には「お椀と玉」が載っています。カップ・アンド・ボールを見慣れている人にも新鮮に映る日本の伝統芸です。

二川 滋夫
東京堂出版

レビュー

なし