garamanのマジック研究室

オーソン・ウェルズのフェイク
F for FAKE

20世紀最大の贋作画家、エルミア・デ・ホーリー。彼は、ルノワールやモディリアーニ、ドラン、マティスといった有名画家たちの贋作を1000点近くも描き続け、世界中のコレクターたち(どころか、いくつかの美術館にまで)に売った名贋作家だ。エルミアの生涯は、アメリカの小説家、クリストファー・アーヴィングによって一冊の伝記としてまとめられた。しかし、アーヴィングはその後、ハワード・ヒューズの自伝を勝手に出版した罪で投獄されている。彼が書いたエルミアの伝記は、果たして本物なのだろうか。そんな二人の嘘つきを映画にしたのが、この「FAKE」だ。その監督はオーソン・ウェルズ。かつて、ラジオ放送で火星人の襲来を本当の事件のように流し、全米をパニックに陥れた張本人である。そう、彼もまた、世紀の大嘘つきなのである。彼はこの映画の中で2人の嘘つきの持論を紹介しつつ、ピカソが描いた22枚の絵についての謎を提供した。果たして、その物語は真実なのか?

この映画には、エルミアもアーヴィングも出演して持論を展開しています。さらに監督のオーソン・ウェルズ自身も登場し、自身のラジオ放送の事件についても触れています。そもそも絵画という芸術は、本物の世界を描いた嘘の世界とも言えます。もし、それを本物と言うのなら、その絵を描いた本人の心の動きにまで思いを馳せ、本人になりきって描いた絵はなぜ偽物なのでしょう。専門家がその違いを見抜くからでしょうか?いいえ、多くの専門家が実際にエルミアに騙されているのですから、専門家でさえ見抜けないのです。「本物」と「偽物」。この違いは何なのでしょう?この映画にも真実と虚構が入り混じっています。映画の最後に、オーソン・ウェルズがどこまでが真実かを明かしてくれますが、映画の冒頭では子供を相手にクロースアップマジックを見せ、最後には人体浮遊マジックを披露している彼の言葉を、そのまま信じて良いものか。。。

エルミアもアーヴィングも、もちろんオーソン・ウェルズも、みんな実在の人物で本人が出演しています。彼らの嘘混じりの人生が、そのまま取り込まれているような映画です。意外とこれこそがドキュメンタリーなのかもしれません。実際にあった色々な事件を知っていれば、とても面白い作品です。

Orson Welles
Oja Kodar
Elmyr de Hory
Clifford Irving
Janus Film

レビュー

なし