garamanのマジック研究室

神に選ばれし無敵の男
INVINCIBLE

舞台は1932年のドイツ・ベルリン。ヒトラーが総統になったのが1934年ですから、そのわずか2年前の事です。この時代のドイツをテーマにするならヒトラーを取り上げるのが一般的ですが、この映画の主人公はヤン・エリック・ハヌッセン。ヒトラーとほぼ同じ時期に生まれたもう一人の怪人物です。ヤン・エリック・ハヌッセンは、本名をへルマン・シュタインシュナイダーといい、実在したユダヤ人です。ヒトラーとユダヤ人の関係はここで言及するまでもないでしょう。ヒトラーといえば、あの大げさとも言える身振り手振りを交えた力強い演説が目に浮かびますが、その演説法を指南したのがこのハヌッセンだったというから驚きです。それはそうと、この映画はヒトラーの台頭より少し前までの物語で、ヒトラーやナチスといったところには焦点を当てていません。「第3帝国の予言者」と言わしめたハヌッセンと、「現代のサムソン」と言われた伝説の怪力男ジシェが見せる、ヒューマンドラマがテーマです。もちろん、ジシェも実在の人物です。混沌とした時代に飲み込まれたもう1つの人間ドラマを、リアリティーたっぷりに見せてくれる映画です。

ハヌッセン役のティム・ロス氏以外は本職が俳優ではない人ばかりです。怪力男ジシェはフィンランド人で、本当に世界一の力持ちの称号を持っている人物です。またジシェの相手役マルタはベートーヴェンのピアノソナタ第3番を表情豊かに披露してくれますが、それもそのはず、マルタを演じているのはアンナ・ゴラーリという国際的なピアニストなのです。ハヌッセンだけがプロの俳優で異彩を放っていますが、現実のハヌッセンも浮世離れした怪人物だった事を考えると、やはりリアリティーを追求した配役と言えるでしょう。謎に包まれた部分も多く様々な解釈がされていますので真実のストーリーは分かりませんが、史実をつなぎ合わせてストーリーを作り出しているのは確かです。あえて違いをあげるなら、本物のハヌッセンはもっとギョロ目でギラギラしていたという事くらいでしょうか。

Tim Roth
Jouko Ahola
Anna Gourari
東北新社

レビュー

なし