garamanのマジック研究室

Classic Four Aces

4枚のAをテーブルに1枚ずつ裏向きに並べます。それぞれのAの上に3枚ずつ別のカードを乗せます。4つのパイルには1枚ずつのAが含まれている状況です。この4つのパイルから観客にひとつのパケットを選んでもらうと、そのパイルは4枚ともAになっており、他の3つのパイルにからはAが消えています。

4枚のエースを使ったアセンブリ現象は古くから存在するため、今となっては原案を特定することは難しいようです。書籍としては、1853年にフランスの J.N.Ponsin が出版した本が初出のようです。1900年頃に注目されたチャールズ・バートラムのフォーエースが、初期の頃のひとつの完成品として認識されているようです。


クラシック・フォア・エーセス

カードマジック大事典
p.405

一般的なパームを使った手順を基にして、それにミスディレクションを加味した、著者の宮中桂煥氏の手順が解説されています。

2ページにも満たないボリュームでシンプルな解説ですが、特に難しい技法を使わず、それでいて効果の高い現象が起こせます。なにより、余計な操作がないため見ている方の負荷が低いのが特徴です。(2020.12.06)

上流グループ

プロがあかすカードマジック・テクニック
p.180

Classic Four Aces のルーツ的存在。初期の頃に発表された完成度の高い作品です。使う技法はパームとシフト(パス)ですが、シフトの部分は通常のカットで充分置き換えられますので、実質1回のパームのみで実現できる手順です。

全てのカード奇術において、しゃべりが多いほど強く関心を引き、演者の話し方とせりふは、手さばきの技術に勝るとも劣らず大切です。

P.183

そんなコメントで締め括られるほど、ストーリーの方を重視した手順です。(2020.12.13)

シンプレックス・フォア・エーセス

カードマジック大事典
p.406

エドワード・マーローによる代表的な手順です。シークレット・アディションを用いることによって、パームさえ使わずにシンプルに同じ現象を実現できる名手順です。

手順解説も8つの箇条書き、1ページにも満たないボリュームですが、充分すぎるほどの解説です。それだけ簡単にまとめられた作品です。数多くの改案の中でも一番簡単な作品ではないでしょうか。(2020.12.19)

ファイナル・エーセス

ブラザー・ジョン・ハーマン カードマジック
p.359

ブラザー・ジョン・ハーマンの改案です。トリック・カードを自作する手間が必要ですが、それと引き換えに圧倒的な説得力が手に入ります。手順は、4枚のAをファンに広げてテーブルに置くところから始まります。4枚のAを裏向きにして、スペードのエースを観客の前に、残りの3枚をマジシャン側に並べます。テーブル上には T フォーメーションに並んだ4枚のエースが裏向きに置かれているのは明白です。その後、それぞれのAの上に3枚ずつのカードを重ねます。つまり4枚ずつのパケットの、それぞれ一番下にAがある状態です。マジシャン側の3つのパケットをまとめて表向きにすると、Aが1枚も無くなっており、観客側のパケットを表向きにすると、全てAになっています。全く怪しい動作のないクリーンな現象です。あまりのことに「もう一回」と言う声が間違いなく出ると思います。そしてこの手順では、その期待に応えるように、この現象を3回繰り返します。

ブラザー・ジョン・ハーマンは、25歳のときにポリオにかかり、何ヶ月も病院のベッドに寝ていたそうですが、この手順はその期間に頭の中だけで創作されたそうです。(2021.01.03)

オキラシック・フォー・エーセス

ゆうきとものクロースアップ・マジック
p.56

ゆうきとも氏の改案です。トリック・カードは使いません。ノーマルなデックで演じられるうえ、特に難しいテクニックも必要ないため、いつでも気楽に演じられる作品です。それでいて、原案の良さは全く損なわれていません。それどころか、原案の唯一の弱みといっても良い箇所が改善されています。原案では比較的早い段階でカードの移動が行われています。つまり1枚ずつのAが各パケットにあると思わせていて、実はすでにひとつのパケットに集まっているという瞬間があるわけです。その都合上どうしてもこのタイミングでは裏向きにしておかざるを得ません。ところがオキラシック・フォー・エーセスでは、他の12枚のカードを表向きに見せることで、残りの裏向きのカードが全てAであるという錯覚を強める工夫が施されているのです。

8ページの解説文は非常にわかりやすく親切です。さらに「創作について 〜フォアエースについての考察〜」という6ページにも渡るコラムには、氏の創作についての考え方が綴られています。(2021.01.24)

4枚のエース

<復刻版> トランプの不思議
p.66

グライドの解説として紹介されているので、この改案ではグライドのみを使って実現できる手順になっています。高木氏の作品ではないと思われますが出典は不明です。グライドしか使わず、同じ手順を4回繰り返すという性質上、誰かが自分の名前を関して発表するようなものではなかったのでしょう。この復刻版には巻末に松田道弘氏による注釈があり、出典などが補足されている作品も多いのですが、この作品については補足がありませんでした。

グライドを4回繰り返すと書いてしまうとほぼネタバレしてますが、シンプルな原理で Classic Four Aces の現象を実現しています。グライドは特徴的な手つきになりますので、グライドを知っている人なら1回目のグライドで全体のトリックがわかってしまうことでしょう。実演するなら相手を選ばないとおかしな空気になりそうです。(2021.01.30)

4枚のエース

<復刻版> トランプの不思議
p.107

前述の作品はグライドのための習作といった趣で、【基礎編】の中で技法解説の延長上で解説されていました。同書には【かあど まじっく あらかると】という章があり、現代マジックの傑作選として10作品紹介されているのですが、そこにも同名のタイトルの作品が解説されています。エドワード・マーローの手順です。

難しい技法は一切出てきません。それでいてインパクトの大きい秀作です。5ページほどの解説はとてもわかりやすく、手順解説としても秀逸です。さらにこの作品のポイントである「マジシャンズ・チョイス」についても3ページほどを割いてくわしく解説してありますので、初心者の方にこそ相応しい解説だと思います。ただ、マジシャンズ・チョイスを効果的に進めるために4つのパイルの並べ方に一工夫していますが、この方法は多少不自然さを孕んでいますので別な方法を考えた方が良さそうです。(2021.02.14)

クラシック・フォア・エース

あそびの冒険 全5巻
「4 ミラクル・トランプ・マジック」
p.194

シークレット・アディションを効果的に使った手順が解説されています。解説文中では明示されていませんが、エドワード・マーローの手順だろうと思います。

冒頭では「妖術の開示」の4エースやコヌーの作品などについて触れながら、Classic Four Aces へと繋がる歴史を2ページほどのボリュームで解説しています。続く4ページほどでは、肝になるシークレット・アディションについて5枚のイラストを添えて詳しく解説しています。ここまでの準備で説明の大半は終わったようなもので、実際作品全体の手順は2ページほどでサラッとまとめてあります。なお、マジシャンズ・チョイスについては、ページ数の都合なのかちょっと良くない方法が解説されていますので、注意が必要です。(2021.02.21)

Iconoclastic Aces

ジョン・バノン カードマジック
p.13

ジョン・バノンの改案です。最後に1箇所から4枚のエースが現れるという現象は同じですが、そのタイミングにこだわりを見せます。他の3つのパケットからAが消えたあと、残ったひとつのパケットを確認するのが従来の流れですが、この改案では、4つのパケットを配っている最中に予期せず4枚のAが1箇所に集まってしまいます。観客が心構えをする直前に現象が起こるという、意表を突くタイミングへのこだわりから生まれた作品です。

解説文を読んでいると「その厚みはカバーできないのでは?」と思う箇所が出てきますが、すかさずそれをカバーするムーブが解説されます。また「裏表の状況が矛盾しているのがバレないか?」と不安になる前にタイム・ミスディレクションの素晴らしさを説いています。さらには「最後に出てくるボトムディールはちょっと避けたいな」と思う人に向けて、別の方法まで解説してくれます。単に楽な方法が見つかるというだけではなく、ひとつのテーマに対する色々なアプローチを学べる良い教材だと思います。(2021.02.28)

ヴァーノン・フォア・エース
〜 Vernon Four Acces 〜

カードマジック入門事典
p.276

ダイ・バーノンの改案です。フォーエースに関するバーノンの作品といえば「Slow Motion Four Aces」の方が有名かもしれませんが、Classic Four Aces においても改案を発表しています。4箇所にあるAを1箇所に集める現象ですから、言い換えれば3枚のAの移動現象です。バーノンは3枚のカードを一度に移動させるというアプローチは取りませんでした。早い段階で2枚を移動させ、最後の1枚は最後にギリギリのタイミングで移動させています。

最後の1枚の移動だけはちょっとしたテクニックを使います。慣れないと勇気の要るテクニックではありますが、それほど難易度の高いものでもありませんので、観客の視線(意識)をコントロールする練習がてら実演してみても良いのではないでしょうか。(2021.03.07)

4枚のA① Four Aces

カードマジック事典
p.267

シークレット・アディションを用いたシンプルな手順が解説されています。本文中では言及されていませんが、エドワード・マーローの手順ということで良いと思います。最もシンプルなフォーエースとして扱われているようで、解説分も簡潔です。たったの4段階、12行の解説文ではありますが、無駄のないお手本のような解説文です。マジシャンズ・チョイスやシークレット・アディションなど、必要な知識は【技法編】にまとめられています。

マジシャンズ・チョイスを効果的に行うために、マスター・パケットを特定の位置に持ってきたいという思惑があり、作品によっては多少無理して技法を盛り込む場合がありますが、この手順では余計な工夫をせずに単に入れ替えるだけなのが実用的で良いと思います。(2021.03.14)

クラシック・フォア・エース (その1)

松田道弘のカードマジック 改訂新版
p.35

この本は、半分がフォー・エース・トリックで占められています。松田氏の改案を解説するにあたって、まずはチャールズ・バートラムの古典的な演出が解説されています。1903年に発行された「モダン・カンジャラー」に解説されたバートラムの演技は、今となっては珍しい、ステージで立ったまま行う演出になっています。ステージに上げた観客に指示を出し、ほとんどの手順を観客に任せたにも関わらず、最後には観客が選んだパケットに4枚のAが集まります。現代ではもっとスピーディーな展開のものが多いですが、古典的な演技も魅力的です。

松田氏は、原案や古典的な手順に見られる「一度見せた4枚のエースを一旦デックのトップに置く」という不自然さに着目して改案を発表しました。ジョン・ハーマンのアンダー・カウントにヒントを得て、リバース・アンダー・カウントという技法を発明したうえで、Classic Four Aces に適用しました。これにより、4枚のAを確認した直後にテーブルに1枚ずつ配るように見せることができます。ただし、ひとつの問題を解決することで別な問題も出てしまっています。3枚のカードを1枚のように置くという無理をしており、即座に解消する工夫は見られるものの、好みの分かれるところでしょう。(2021.03.21)

クラシック・フォア・エース (その2)

松田道弘のカードマジック 改訂新版
p.43

同書で発表したリバース・アンダー・カウントを使った作品では、「3枚のカードを1枚のようにテーブルに置く」というかなり無理のある方法が取られていましたが、その点を改良した作品も掲載されています。

使う技法はリバース・アンダー・カウントのみで、4枚のAが1箇所に集まる直前までの手順が解説されています。実際には3枚しか集まっておらず、4枚目のAの見せ方は読者に任せた内容です。一案としてサイドスティールを使った解決方法が提案されていますが、中級者ならいくつか解決方法が思いつくかと思います。前作よりも不自然さが減った作品ですが、最後にサイドスティールを使うなら若干難易度が上がります。改案の難しいところです。(2021.03.28)

私案 トッピング・ジ・エーセス

松田道弘のカードマジック 改訂新版
p.46

リバース・アンダー・カウントを有効活用したシンプルな作品です。

マジシャンが4枚のAを持ち、デックの残りは観客に4分割してテーブルに並べてもらいます。3枚ずつのパケットではなく、12枚前後のランダムな枚数の4パケットになるのが他作品とは異なる特徴です。こうして単に4分割してもらっただけのそれぞれのパケットの上に、マジシャンが持っているAを1枚ずつ乗せていきます。右端のパケットを取り隣のパケットに重ね、さらにその全体を持ち上げて隣のパケットに重ね、その全体を持ち上げて左端のパケットに重ねます。にも関わらず、デックのトップから4枚のAが現れます。

Classic Four Aces に分類するには多少異色な感じもしますが、リバース・アンダー・カウントという技法の特徴を活かした、無理のない作品に仕上がっています。(2021.04.04)

リバース・クラシック・エース・アセンブリ

松田道弘のカードマジック 改訂新版
p.48

厚川昌男氏のユニークなコンセプトの作品に影響を受けた、松田道弘氏の改案です。こちらでもリバース・アンダー・カウントを活用しています。

1番の特徴は、1枚ずつのAの上に3枚ずつの他のカードを重ねていくというパターンを逆にしたこと。先に3枚ずつのパケットを4つ作り、そこに1枚ずつのAを乗せていきます。これだけでも印象は大きく変わるものです。どちらかというと後者の方が、Aの位置についての印象が観客の意識に残りやすく、その分一箇所に集まった時のインパクトは大きくなるような気がします。

多少の準備は必要ですが、手順の中で使用する技法はリバース・アンダー・カウント程度です。非常にシンプルな手順でわかりやすい現象を起こすことができるという面では優秀な改案といえるでしょう。(2021.04.11)

DFカードを使ったスタンダード・フォア・エース・トリック

トリック・カード事典
p.156

「DFカードを使ったフォア・エース・トリックの標準的と思われるやり方を紹介します。」という書き出しで解説されています。特に誰かのアイディアということでもないようです。実際、多くの人が思いつきそうな作品ではあります。

現象は非常にシンプル。まず4枚のAを、表向きにテーブルに並べます。それぞれのAの上に、裏向きのカードを3枚ずつ重ねます。各パケットの一番下に表向きのAがあるわけです。そんな状況から観客にひとつのパケットを選んでもらい、手で押さえておいてもらいます。残った3つのパケットは重ねてひとつにまとめます。3枚のAを観客の手の下に移すと宣言して、まとめたパケットを表向きにひっくり返します。テーブルに1枚ずつ配っていくとAは確かに消えています。観客の手の下の4枚を確認すると全てAになっています。

DF(Double Face)カードを使用することを最大限に利用して、その分技法的な難易度はかなり低くなっています。多少の準備は必要ですが一度覚えてしまえば簡単ですし、難易度が低いことを考えれば、観客とのやりとりに集中できるというメリットもあります。

この本の話の流れ上、Classic Four Aces に分類しましたが、McDonald's Aces に分類する方が分かりやすいかもしれません。(2021.04.18)

Syncopated Aces

ジョン・バノン カードマジック
p.23

ジョン・バノンの改案です。タイトルはおそらく音楽用語でしょう。[シンコペーションを効かせた Four Aces]といったところで、本来のリズムとは違うタイミングで現象が起きることを表現していると思われます。実際、T フォーメーションに並べ終わったその瞬間にマスターパケットにAが集まりますので、他の Classic Four Aces を知っている人の方が驚く現象です。

あまり知られていない Fifth Peel という技法を使いますが、それ以外には特に技法らしいものは使いません。全体的に技術的な難易度は高くはありません。リズムよく演じて最後の現象にシンコペーションを効かせることでがとても重要で、だからこそ強いインパクトが演出できます。(2021.04.25)

Interrobang Aces

ジョン・バノン カードマジック
p.28

ジョン・バノンの改案です。デトロイトのマジシャン、ボブ・ステンセルの Stencel's Aces に影響を受けた改案です。3枚のカードを表向きにファンに広げて、その中に裏向きにしたAを挟んでテーブルに置きます。見慣れない光景ではありますが、1枚だけAが挟まっている状況が分かり易いディスプレーです。裏向きとはいえ、Aを挟む直前には表をチラッと見せて確かにAであることを確認してから挟むので、説得力も充分です。これを3回繰り返し、テーブルには表向きの3枚と裏向きのAでできたファンが3つ並んでいます。そして最後の4つ目のファンを作って、いよいよAを1箇所に集めるマジックが始まるかと思いきや、その4つめのファンが全てAになっているという意表をついた作品です。

ちなみに、タイトルの Interrobang というのは、感嘆符 (!) と疑問符 (?) を重ねたマークだそうです。日本ではあまり見かけませんが (‽) こういうマークです。よく見かける感嘆符疑問符 (⁉) と同じような意味になります。作品の最後に唐突にAが揃う様子を見せられた感情をうまく表現していると思います。(2021.05.02)

THE FOUR ACE TRICK (First Method)

THE ART OF MAGIC
p.213

THE ART OF MAGIC には、ひとつの章を割いて Four Ace trick が7つ紹介されています。世界で最も古いと言われるドイツのマジック雑誌 "Die Zauberwelt" に多くを依ったうえで、2つのオリジナルアイディアが追加されています。Classic Four Aces に分類するかどうか迷うものも含まれています。

ひとつ目の方法としてデュプリケート・エースを何枚か使用する作品が解説されています。事前に特定の位置に各Aを準備しておく必要がありますので、即席にはできません。ただし、その分テクニックは一切必要なく、手順さえ間違えなければクリーンに現象を起こせます。また、フォールス・シャッフルを多少織り交ぜる程度で不可能性を高めることもできますので、使い勝手の良い作品です。一方でデュプリート・カードを演技後に処分する方法については色々と苦慮しているようです。ここで "Die Zauberwelt" に載っている方法を紹介したり、より良い方法を解説していますが、そのために難易度の高い技法を用いたり、パームを何度も繰り返すくらいなら、正直処分する必要はないと思います。

ただし、処分する方法として面白いアイディアが紹介されていました。テーブルマットに細工をして、パケットをテーブルに置く瞬間に、ボトムのカードをその細工の下に潜り込ませて処分してしまいます。(2021.05.08)

THE FOUR ACE TRICK (Second Method)

THE ART OF MAGIC
p.215

THE ART OF MAGIC に紹介された2つ目の方法です。

ノーマルデックで、かつ準備不要でできる作品です。4枚のAをデックから抜き出す作業は観客に行ってもらいます。抜き出した4枚のAをデックのトップに乗せて返してもらいます。こんなクリーンな状況から手順は始まります。返してもらったデックのトップから1枚ずつテーブルに4枚配ります。それぞれの上に、3枚ずつのカードを乗せて4つのパイルを作ります。これだけのシンプルな操作中に2度のパスを行うだけで、4枚のAをひとつのパケットに集めることができます。パスを基本的な技法としていた時代によく見られる力強い解決方法です。ちなみに、手順解説はここまでしかなく、4枚のAが集まったパイルをフォースする方法や、その後の当て方などの演出は全て省略されています。

「わかるでしょ」というスタイルで書くと、たったの13行で1作品を解説できるという見本のような文章ですが、実際に基本的な知識があれば充分な内容です。(2021.05.15)

THE FOUR ACE TRICK (Third Method)

THE ART OF MAGIC
p.216

THE ART OF MAGIC に紹介された3つ目の方法です。

カードの裏面がテーブルの布と同じ、という斬新なギャフカードを使う方法が解説されています。このギャフカードは、テーブルの上に初めから置いてあっても見えない、という大胆な発想です。またこのギャフカードの作り方も解説されています。さらにボトム・ディールもパスも必要とする手順で、観客の視線も十分にコントロールできるスキルが求められるでしょう。この作品もまた、クラシカルな力強さがありますが、ギャフカードの特徴を充分に活かせば、もっとテクニックを軽減させるアイディアは出てくるような気がします。(2021.05.15)

THE FOUR ACE TRICK (Fifth Method)

THE ART OF MAGIC
p.218

THE ART OF MAGIC に紹介された5つ目の方法です。

テーブルに並べた4枚のA。1枚目のAを観客に渡してサインしてもらいます。返してもらったら2枚目のAを別の観客に渡してサインしてもらいます。同じように繰り返し、4人の観客にそれぞれサインをしてもらい、全て返してもらいます。マジシャンの手に戻された4枚のカードをあらためてテーブルに並べます。退けてあった残りのデックを拾い、テーブル上に並んだ4枚のカードのそれぞれの上に3枚ずつ重ねていきます。この状態から、観客が選んだ1つのパイルが全てサイン付きのAになります。

観客がサインしたAを4枚集めるというインパクトの強い現象であるにもかかわらず、トリックカードも使わずにたった一度のトップチェンジで実現するというクラシックな力強い作品です。ネイト・ライプチッヒの作品だそうです。またこの本には6つ目の作品としてライプチッヒのもう一つの作品が解説されています。Classic Four Aces には分類しにくいのですが、触れずにいるのはもったいない作品です。すこしだけ解説すると、デックの中にバラバラに入れた4枚のAが、デックを叩くたびにそこに現れるという面白い現象で、こちらはパスを多用しています。(2021.05.29)

最短距離のフォア・エース

カードマジック THE WAY OF THINKING
p.142

Classic Four Aces の手順はどれも長く、観客は退屈になることがあるものです。そこで「スピード」にこだわって松田道弘氏が作ったのがこの作品です。

見た目の現象を書きます。4枚のAを1枚ずつ観客に見せます。それを裏向きにしてテーブルにTフォーメーションに並べます。残りのデックから3枚の無関係なカードを右手に取り、テーブルのAのうちの1枚に裏向きに重ねます。他のAの上にも同じように無関係な3枚のカードを重ねます。重ねる無関係なカードはその都度表面を観客に見せてからエースの上に重ねるのがポイントです。これだけです。マスターパケット以外の3つのパケットを重ねて表向きにしてスプレッドすると、そこにAは一枚も入っていません。マスターパケットを表向きにするとそれは全てがAになっています。

途中で使用される技法は、ちょっと実現可能とは思えませんでした。正確に言うと、手順としてはできるもののどうしても不自然さが拭えない、といったところです。自然にできる方の演技を見てみたいところです。この不自然さを拭えるのなら、スピード問題を解決した理想的な解法のひとつだと思います。(2021.06.05)

ニュー・クラシック・フォア・エース・アセンブリ

松田道弘のシックなカードマジック
p.96

スプレッド・カルをカードの消失に使えるという発想を、松田氏は「スプレッド・カル・バニッシュ」と呼んでいます。そんな技法を使ったいくつかの作品が過去に発表されていますが、Classic Four Acces に適用したのがこの作品です。

観客から見た現象はシンプルで説得力があります。まず、4枚のAが表向きにTフォーメーションに並べられます。それぞれのAの上に裏向きのカードが3枚ずつ重ねられます。マジシャンがマスターパケット以外の3つのパケットを重ねてファンに広げると、4枚おきにAが表向きに挟まっている様子が確認できます。しかし次の瞬間、テーブルにスプレッドされたパケットにはAは一枚も含まれていません。マスターパケットを確認すると4枚ともAになっています。

スプレッド・カルやギャンブラーズ・パームなど、多少難易度の高い技法が取り入れられていますが、それらを使いこなせるなら、観客にとってはシンプルな現象として表現できる良い作品です。(2021.06.20)

四枚のエース

ステップアップ・カードマジック
p.96

エドワード・マーローの手順を基にして、著者の氣賀康夫氏がいくつかの工夫を施した作品です。

マーローの手順では4枚のエースをテーブルに並べる時に、不自然な順番で並べることになります。その不自然さ取り払う工夫を施していますが、決して難しい技法は使わずに解決しています。もうひとつ、シークレット・アディションをするために7枚をブレイクする工夫も施されていますが、こちらは原案ともさほど難易度は変わりませんので、好みの問題かと思います。

いずれにしても、全体的に難易度が決して高くないにもかかわらず、強いインパクトを与えられる手順です。(2021.09.19)

SIMPLE FOUR-ACE ROUTINE
〜 シンプルなフォアエースの手順 〜

ターベルコース・イン・マジック 第5巻
p.118

誰の名前も冠さずに紹介されている初期の頃の作品です。1度のパームとマジシャンズ・チョイスで実現させる巧妙な現象で、この手順が多くの改案を生んだのではないでしょうか。

現象自体はシンプルで、4枚のエースをテーブルに並べて、それぞれの上に3枚の余計なカードを載せ、4枚のパケットを4つ作ります。観客にひとつのパケットを選んでもらうと、その4枚がすべてエースになっています。

作品解説はシンプルですが、この解説で特筆するべきなのは備考欄でしょう。スチュワード・ジェームスによる、マジシャンズ・チョイスを使わずに特定のパケットを選ばせる方法が掲載されています。この方法が主流にならなかったのが不思議なほど、秀逸なアイディアだと思います。また、シック・スコークによる、最終的に選ばせたいパケットが初めから全てエースであることを感じさせないための工夫も、細かなところに配慮された良いアイディアだと思います。(2021.09.26)

ED MARLO'S SIMPLEX ACES
〜 エド・マルローのシンプレックス・エーセス 〜

ターベルコース・イン・マジック 第5巻
p.121

マーローの手順です。シークレット・アディションを使って簡単に現象を起こせる効率的な作品です。パームを使わないだけでも実演のためのハードルは大きく下がることでしょう。たった8枚のイラストで、解説文も2ページにも満たない内容ですが、必要十分な解説です。

ただし、観客にパケットを選ばせることもなく、マジシャンが選んだパケットにエースが集まるという現象になっています。最後に一言だけ「エースのパケットをフォースして行ってもかまいません」とフォローしていますが、その方法については書かれていません。(2021.09.26)

French's Extraoadinary Aces

ENCYCLOPEDIA OF CARD TRICKS
p.172

4枚のAを取り出してデックの上に重ねた後、輪ゴムをデックに巻きつけてしまいます。輪ゴムで束ねられてしまうと、かなりの数のテクニックが使用できなくなりますので、制約のきつい状況です。この状況のまま、Aを1枚ずつテーブルに配り、それらの上に3枚ずつのカードを配りますが、観客が選んだパケットになぜか4枚のAが集まってしまいます。

アイディアとしては面白い作品です。途中でデックを密かにひっくり返すという動きが何度もあり、実際に演じるとなると解説文以上の難しさがありますが、決して不可能ではありません。意外と、他の作品を知っている人の方が不思議に見えるかもしれません。逆に一般の方にとっては、デックを輪ゴムで束ねる意味がわかりにくいような気もします。(2021.11.07)

The Limit Four Ace Trick

ENCYCLOPEDIA OF CARD TRICKS
p.295

トリック・カードを自作する必要はありますが、Classic Four Aces の現象をよりビジュアルに見せることができる作品です。

まずデックを扇型に広げて4枚のエースを取り出します。それをカードスタンドに並べます。それぞれのエースに他の3枚のカードを重ねるのも非常にビジュアルに見せられます。4つのパケットからひとつ選んでもらったら、それをパラパラと弾いて見せ、エース1枚と他のカードが3枚であることを確認したら、そのまま観客の前のグラスに差し込んでおきます。カードスタンドに残った3つのパケットをひとつずつ取り、先ほどと同じようにエース1枚と他のカードが3枚であることを確認し、3つのパケットを全て確認したらひとつにまとめてしまいます。ところが、まとめた12枚のカードをパラパラとテーブルに落としていくと、1枚もエースがありません。観客の前のグラスにある4枚のカードを確認すると、全てエースになっています。(2021.11.13)

バーノンの4A

カードマジック大事典
p.415

カードマジック入門事典」にも取り上げられたバーノンの手順です。

他の改案とは異彩を放つアイディアで構成されているので、別途「Vernon Four Acces」というカテゴリに分類したいくらいですが、観客からみた現象は「Classic Four Aces」そのものですので、私のサイトでは現象にフォーカスして分類しています。観客が手元に注意を向けるタイミングと、マジシャンがちょっとテクニックを意識するタイミングが絶妙にずれているため、あやしさを全く感じさせない演じ方ができる手順です。もちろん、演者の力量によりますが、会話を楽しみながら臨機応変に緩急を付けられる方なら、ベストの手順と言っても差し支えないと思います。(2021.12.12)