garamanのマジック研究室

Collectors

マジシャンは4枚のAを取り出しテーブルに置きます。観客は残りのデックから3枚のカードを自由に選びます。3枚のカードを覚えたらデックの中にバラバラに戻してしまいます。この状態から3枚とも当てるのですが、その方法が特徴的です。デックの上に表向きに4枚のAを置いた次の瞬間、4枚のAを広げると1枚ずつ交互に、選んだ3枚のカードが挟まっているのです。

ロイ・ウォルトンの原案といって間違いなさそうですが、彼は当初3枚のキングの間に別の2枚が挟まるという現象で演じていました。その後エド・マーローによって4枚の間に3枚が挟まる現象に変化し、「コレクター」と呼ばれるようになっていきます。


ザ・タックスマン

アロン・フィッシャー カードマジック
p.145

アーロン・フィッシャーの改案です。「うるさ型たちは、この手順を毛嫌いするかもしれませんが、、、」と前置されています。確かに突っ込みどころはあります。ただし、それらの点はマジシャン目線で気になる部分が殆どで、観客にとってはどうでも良い事です。彼自身が言うように「非常に直線的で不思議に見える」手順です。ちょっと勇気がいるような箇所が散見されます。高度に難しい技は使いませんが、多少場慣れしていないと難しいかもしれません。

4ページで6枚の写真を添えての解説です。理解はさほど難しくありませんが、文章だけではちょっと無理があるように感じる部分もあります。ぜひ本人の演技を見てみたいと感じました。

私(garaman)は演じてみたいとは思いませんでしたが、うるさ型なのかもしれません。。。(2012.09.16)

テクニカラー・コレクター

現代カードマジックのアイディア
p.73

松田道弘氏の改案です。「原案者の単純化の意図を大きく損なうことになったかもしれませんが」という前置きで始まりますが、観客からの視点でもマジシャンからの視点でも、さほど複雑化している印象は受けませんでした。観客の選んだ3枚のカードが4枚のカードに挟まれる現象は変わりませんが、その4枚のカードをジョーカーにしたことで、演じる上での煩わしさを軽減しています。

4枚のジョーカーだけ赤裏で、他は青裏です。また4枚のジョーカーを、デックとは別に扱う事で特別感が演出されています。こういったことを観客の心理に植えつける事が、最後のサンドイッチ現象を引き立たせる伏線になっています。

6ページほどの解説で難しいところはありません。途中に出てくる2つの技法は、どちらもこの本の中で解説されています。(2012.09.23)

オーバーラップ・コレクター

カードマジック THE WAY OF THINKING
p.216

松田道弘氏の改案です。「覚えなくていい奇術の1つである事は間違いないでしょう」という言葉を添えての解説です。さらに「悪作のたのしみとでもサブタイトルをつけましょうか」とまで書き添えるほど自己否定的に紹介しています。しかし、作品解説が始まる直前には「良い手順になったと思っています」と締めくくっているとおり、考え抜かれた作品として仕上がっています。否定的な理由は、そもそもコレクターという作品は、マジシャンをひっかけるために余計な事をし過ぎる傾向があるためですが、この改案では比較的見た目がスッキリしているような印象を受けました。比較的ですが。。。

ある程度道具に頼っていながら、高度な技法まで要求される作品です。技法の練習のための習作と捉えたほうが良いかもしれません。スムーズに演じられれば、マジシャンをも引っ掛ける事ができるでしょう。マジシャンを引っ掛けるというコンセプト自体が、多くの人に受け入れられなかったわけですが、それでもそのコンセプトに拘り続けたマルローへのオマージュ的作品です。(実際にマーローが見たら怒るかもしれませんが)

コレクターやマーローに関するお話が2ページほど続いた後、5ページにわたって6枚の図と共に解説されています。(2013.03.09)

The Arcadio Collectors

世界のカードマジック
p.141

ダーウィン・オーティスとリチャード・カウフマンの共同作品です。カウフマンが「ラディカル・チェンジ」というテクニックをオーティスに見せた後、2人で作り上げたという経緯からも推察できるように、ラディカル・チェンジを使ってコレクター現象を起こす為の作品といった印象です。技法のための作品という印象はありますが、それでも4枚のAを1枚ずつ見せていき、最後の1枚を見せた直後に観客の選んだ3枚のカードが挟まっているというインパクトの強さは、この技法の特徴を活かしています。

技法については138ページからの3ページほどを使って丁寧に解説されていますので、理解は容易でしょう。作品についても4ページにわたって8枚のイラストを添えて解説されており、こちらも理解に苦しむ事はありません。事前の準備が必要ですがそれも極簡単なもので、あらかじめポケットに忍ばせておいて、演技前にトップにロードする程度で済みます。(2013.09.22)

Predicted Collectors

世界のカードマジック
p.164

エドワード・マルローのアイディアをベースにした、リチャード・カウフマンの作品です。お馴染みの技法が生み出す意外な効果。数多くの作品・技法に触れてきたリチャード・カウフマンならではとも言える、面白い作品です。

4枚の同じ数字のカードを観客に抜き出させるところから手順が始まります。その抜き出してもらった4枚(仮にAとします)を、表向きにして扇状に開きます。その間にマジシャンが予言した3枚のカードを裏向きに1枚おきに差し込みます。通常は、3枚のカードを選んでもらってバラバラにデックに戻した後、いつの間にか4枚のAの間に挟まれているという現象なのですが、この作品では、観客に3枚のカードを選んでもらう前に、予言としてマジシャンが選んだカードを堂々と挟んでおきます。さて、4枚のAとその間に挟まれた3枚の予言カードをデックのトップに置いたら、いよいよ3人の観客に1枚ずつカードを選んでもらいます。このとき、マジシャンはデックのフェースが観客に見えるように立てて持ち、右手の指先でデックのインデックスがある角をはじいていきます。観客は好きなタイミングでストップをかけ、そのときに見えているカードを覚えます。これを3人の観客分繰り返します。デックを持った左手を下ろすと、そこにはあらかじめ置いてあった4枚のAとその間に挟まった3枚の予言のカードがあります。ここで3枚の予言のカードを確認すると、3人の観客が覚えたカードと一致している、という現象です。

予言をテーブルではなくデックの上に置いておくのはとても不自然に感じますす。また、一組の通常のデックを使用しているわけですから、観客が見たカードと全く同じ3枚を抜き出しておくという「予言」現象は筋が通りません。せめて、色違いの別デックから抜き出した3枚を使った方が予言っぽくなります。

難しい割りに完成度は余り高くない印象を受けてしまいますが、途中に出てくる技法で意外な効果を引き出した功績は大きいです。一般の人に披露すると言うよりは、マジシャン同士で見せ合うと、色々なアイディアを生み出しそうな刺激的な作品です。(2013.09.29)

Hofzinser Predicts Collectors

世界のカードマジック
p.167

前述のプレディクテッド・コレクターズとストレンジ・ハーモニーという作品を組み合わせた作品です。ストレンジ・ハーモニーも、同書に収録されています。

現象の途中までは、プレディクテッド・コレクターズと一緒です。4枚のAの間に挟んでおいたカードが、いつの間にか3人の観客が見て覚えたカードと一致しています。この作品ではさらにもう1つ現象が加えられています。解説の例では観客が見て覚えたカードは2と3と4となっており、確かに4枚のAに挟まっていたカードは一致しています。その合計が9である事を確認したら、マジシャンはおもむろに4枚のAを持っていた右手を返します。するといつの間にか4枚の9になっているというオチです。

蛇足と言えば蛇足です。一般の方に見せるには、ストーリーに脈絡がなく、分かりにくい現象と言えるかもしれません。しかし、前述のプレディクテッド・コレクターズと同様、マジシャンをターゲットにするなら意外な展開という意味で面白さは秀逸です。(2013.10.05)

コレクター
〜 Snap Collectors 〜

パケット・トリック
p.35

"Scattershot" に発表された、マックス・メイビンの作品です。[パケット・トリック]に収録されている「Twisted Location」や「Snap Differential」といった作品の開発をしている流れで出来上がった作品だそうです。

4枚のAを取り出しテーブルに置きます。残りのデックから3人の観客に1枚ずつ選んでもらい、覚えたらそれぞれデックの中に戻します。そのデックはテーブルに置き、代わりに先ほどの4枚のAを手に取ります。今、マジシャンの手には4枚のA、テーブルには観客のカードが混ざっている残りのデックが置かれています。コレクターズという作品ですから、この4枚のAで観客の3枚のカードをサンドイッチしたいところですが、その前に、まず4枚のAが4枚のKに変わってしまいます。マジシャンがデックを広げると、そこには観客のカードを1枚ずつ挟んだ状態で、4枚のAが表向きに現れます。

コレクターズ系の作品を初めて見る人にとっては、一度4枚のKに変わってしまう事が、現象を曇らせてしまうかもしれませんが、既に他のコレクターズ作品を見た事のある人は、さらに驚きを得られる作品です。不可能性を強く感じさせる作品に仕上がっています。(2013.11.10)

カードを集めないで
〜 Collect Me Not 〜

ジェイ・サンキー センセーショナルなクロースアップ・マジック
p.124

ジェイ・サンキーの改案です。3人の観客にサインしてもらった3枚のカードをテーブルに並べておきます。左手には4枚のジャックを持っています。残りのデックはテーブルにリボンスプレッドされているところを想像してください。観客の3枚のカードを1枚ずつ、リボンスプレッドしたデックの中にバラバラに差し込んでいきます。右手だけでデックを揃え、差し込んだ観客のカードも確実にデックの中に入れて揃えてしまいます。ところが、左手に持っている4枚のジャックを確認してみると、1枚おきに観客のカードが挟まっているのです。非常にクリーンな移動現象です。しかも次の瞬間、左手の7枚のカードから4枚のジャックが消え失せ、観客の3枚のカードだけになってしまいます。

一般の観客のみならず、マジシャンをも煙に巻く展開です。しかも、スピーディーにリズム良く現象が起きます。技法は難しめですが、不自然さがなくなるまで練習すれば、強力な武器になり得ます。(2014.06.15)

コレクターズ:ロイヤル版とその他の方法

デレック・ディングル カードマジック
p.209

デレック・ディングルが発表した2つの作品についてリチャード・カウフマンがまとめたものです。2つの作品といっても基本的な現象は同じです。違いは、観客が選んだ3枚のカードで演じるか、演者が抜き出したダイヤのJ・Q・Kで演じるかです。一応両方の手順が載ってはいますが、観客からの印象を考えれば前者を選んだ方が良いと思います。ここでは、前者の現象を紹介しておきます。

演者がまず4枚のAを抜き出しテーブルの上に置いておきます。残りのデックを広げて、3人の観客に1枚ずつ触れてもらいます。触れるたびにそのカードをアウトジョグして、他のカードと区別できるようにしておきます。3人とも触れたらデックを閉じ、アウトジョグされている3枚をまとめて抜き出します。抜き出された3枚を1枚ずつ観客に見せ、覚えてもらったらその3枚もテーブルに置いておきます。これで準備完了です。

観客の3枚を取り上げ、1枚ずつデックのバラバラな位置に差し込んでいきますが、この時、完全に押し込んでしまわずに、少しはみ出た状態にしておきます。デックから少しだけはみ出た3枚のカードを押し込むべく、左手の人差し指を当てておきます。ここからクライマックスです。テーブル上の4枚のAを表向きにして、デックに重ねた直後に左手で3枚のカードを押し込んでしまいます。次の瞬間4枚のAをファンに開くと、1枚ずつ裏向きのカードが挟まっています。4枚のAの間に1枚ずつ交互に挟まれた裏向きの3枚のカードは、間違いなく観客が選んだ3枚のカードです。

実は、上記の解説には一部嘘があり、観客が選んだ3枚のカードをテーブルに置いた後、あらかじめ抜き出しておいた4枚のAを一度取り上げて、デックの上で1枚ずつ確認して、もう一度テーブルに戻すという、現象を濁らせる要素が含まれています。この気持ち悪さを少しでも軽減したいなら、初めに抜き出しておいた4枚のAは裏向きでテーブルに置くと良いでしょう。(2015.03.15)

コレクターズ

カードマジック事典
p.146

[デレック・ディングル カードマジック]で解説されている2つの作品のうちの、観客が選んだ3枚で演じる方の手順が解説されています。ただし、多少のアレンジがされているようです。[デレック・ディングル カードマジック] の解説と違うところは主に2ヶ所。

1つは、4枚のエースを1枚ずつ確認したあとの、ちょっと奇妙な手つきで裏返す箇所です。ディングルの手順にあるこの見馴れない動きは、フラリッシュ的に取り入れられたのだと思いますが、事典ではバッサリ省略しています。もともと、一度テーブルに出した4枚のエースを取り上げて、1枚ずつ確認してからもう一度机に戻すという、一見無駄に見える手順が挟まるだけでも気になるところですが、これにフラリッシュ的な見せ方まで入れてしまうと、かなりしつこい印象になると思われますので、これは省略して正解だと思います。ただし、演者のキャラクター次第ですので、あくまでも好みの問題ですが。

もう1つの違いは、手順の最後、クライマックスの瞬間の流れです。[デレック・ディングル カードマジック] では、4枚のAを重ねた直後に3枚のカードを差し込み、間髪を入れず4枚のAを開いて見せます。3つの動作が続けて起こるわけです。それに対して事典の手順では、先に3枚のカードをデックに入れてしまいます。その後4枚のAをテーブルから取り上げてデックに乗せ、直後に4枚のAを広げます。最後の2つの動作だけが連続で起こることになります。どちらも一長一短ありますので、自分のキャラクターに合わせて考えたいところです。

イラストもなく、2ページにも満たない箇条書きのような解説ですが、平易な文章でわかりやすいと思います。(2015.03.22)

Collectors Ⅰ

パスト・ミッドナイト第1巻:カード・マジック 日本語字幕版
演技 : Title4/Chapter3
解説 : Title4/Chapter4

ベンジャミン・アールの改案です。立って演じることができるのが特徴です。3枚のカードがバラバラに入ったデックは、テーブルに置くのではなく、観客が両手でスプレッドして持ってもらいます。そして、マジシャンは4枚のAを両手で広げて持っています。この状況から、マジシャンのカードを観客のデックに近づけていった瞬間、マジシャンが持っている4枚のカードの間に裏向きの3枚のカードが挟まっています。観客が持っているデックには触れもせずに、3枚のカードが移動したという現象です。もちろん、そのカードは最初に観客が選んだ3枚のカードです。

観客目線で見ると、とても自然で余計な動きが感じられません。多少難しい技法を要しますが、観客にその違和感を感じさせないことを強く意識した名作です。(2019.07.21)

Collectors Ⅱ

パスト・ミッドナイト第1巻:カード・マジック 日本語字幕版
演技 : Title4/Chapter5
解説 : Title4/Chapter6

ベンジャミン・アールのもうひとつの改案です。スプレッドしたデックから、観客に好きなカードを指さしてもらい、そのカードを記憶してもらいます。記憶したカードは抜き取らずに、そのままスプレッドを続けて2人目・3人目の観客にも同じようにそれぞれ好きなカードを指差して記憶してもらいます。スプレッドが終わった時点で3人のカードはデックのバラバラな位置に存在することになります。デックの半分ほどをテーブルに置き、その上に無関係な4枚のカードを表向きに1枚ずつ重ねていきます。最後に残ったパケットも重ねてしまいます。今、デックはデーブルの上に置かれており、中央付近に4枚の表向きのカードがあるはずですが、スプレッドすると、その4枚のカードの間に観客のカードが挟まっています。

なかなか勇気のいる解決法ではありますが、その発想は直接的で無駄がありません。観客に対しては、テクニックを使った可能性を感じさせないまま現象が起こったような印象を与えるでしょう。(2019.08.04)