garamanのマジック研究室

Collins' Ace

4枚のAをテーブルに1枚ずつ表向きに並べます。それとは別にA以外のカード3枚からなるパイルを4つ作ります。それぞれのパイルの上にAを裏向きに重ねることで、4つのパイルに1枚ずつのAが含まれている状況をつくります。それぞれのパイルからA以外の3枚を抜き出してテーブルに捨て、残ったAをテーブルの隅に置きます。残りの3つのパイルでも同様の作業を繰り返し、最終的にテーブルの隅には4枚のAが積まれている状態にします。捨てたエース以外のカードは一旦回収して残りのデックと一緒にしてよくシャッフルします。あらためて4つのパイルを配りなおして、観客にひとつのパイルを選んでもらうと、なぜかそのパイルが全てAになっており、テーブルの隅に置いてあったカードはAではなくなっています。


コインズの4A

カードマジック大事典
p.393

解説によると、1914年の "Magazine of Magic" 誌に "Omega Ace Trick" というタイトルで発表された大人数向けに組み立てられた作品もあるようですが、この本では1945年の "My Best" で発表された、"The Alpha Four Aces" というクロースアップ・スタイルの作品が解説されています。

テーブルには4つのパイルがあり、それぞれに1枚ずつのAが含まれているのはよくあるオープニングです。ひとつのパイルを裏向きに取り上げて、1枚ずつカードを表向きにして3枚のカードをテーブルに捨てます。残った裏向きのAはテーブルの隅に置いておきます。残りの3つのパイルも同様にA以外の3枚をテーブルに捨て、残りのAをテーブルの隅に重ねていきます。表向きにテーブルに捨てたカードは一旦回収して残りのデックと一緒に混ぜてしまいます。この時点で4枚のAだけがテーブルの隅に置かれている状況です。

ここで、あらためてデックから1枚ずつテーブルに配り4枚ずつのパイルを4つ作り、観客にそのうちのひとつを選んでもらいます。ここでテーブルの隅に置いてあった4枚のカードを確認すると、なぜか全てA以外のカードになっています。そして、観客が選んだパイルを見ると4枚ともAになっています。(2021.12.19)

4枚のA② Four Aces

カードマジック事典
p.268

カードマジック大事典と同じ内容の手順です。こちらは簡潔に文章だけで解説されています。

解説の冒頭に「現象」として2行ほどの説明がありますが、この説明は残念ながら間違っています。そのため、この間違いを鵜呑みにして読み進めると、手順解説が難しく感じる可能性があります。あえて「現象」部分を読まない方がすんなりと読めるかもしれません。

手順の中には、観客から見て何のためにやっているのかわからない冗長な部分があります。もちろんマジシャンの都合として避けられない部分ではありますが、セリフを工夫してそこに意味を持たせることが重要だと思います。解説通りに演じれば「単なる冗長な作業」ですが、うまく工夫すれば「現象をよりわかりやすくするための確認作業」というように捉えてもらうことも可能です。(2021.12.26)

消える4枚のエース(コリンズ効果の改案)

松田道弘のカードマジック 改訂新版
p.54

松田道弘氏の改案です。原案をより演じやすくするとか、スピードアップするとか、そういうレベルの改案ではありません。4つのパケットからAを1枚ずつ消して見せるにあたって、4回とも違う方法を採用することで飽きさせない工夫をするとともに、マジシャンまでもひっかけようという野心的な作品です。覚えることは若干多めですが、視覚的にも心理的にもAが消えたことを表現しようと意識されているところは特筆するべきでしょう。

冒頭では Collins' Ace の原案や改案の来歴に触れられており、勉強になります。松田氏自身の改案は18ページにもわたり詳細に解説されています。特別難しい技法を使うわけではありませんが、A1枚を取ると見せかけてその下の3枚のカードも一緒に取る、など、ちょっと実演するには不安がよぎる部分もあります。(2022.01.02)

フェイスアップ・コリンズの試み

現代カードマジックのアイディア
p.127

松田道弘氏の改案です。4つのパケットからAが消えていく時、Aだけが表向きであればよりビジュアルだろうという野心的な挑戦です。Aだけが表向きのパケットを取り上げて、その様子をファンに開いて見せますが、一度パケットを揃えてもう一度ファンに開くと、Aが消えています(他のカードに変わっています)。これを4つのパケットで次々と行なっていく流れになります。タイトルに「試み」とある通り、作品の完成度としてはまだ低めな印象を受けますが、原案の現象を尊重しながらも時代に合わせてスピードアップしたりビジュアルにしたりする姿勢はさすがです。

なかなか難しいハンドリングも含まれますが、10ページほどで詳しく解説されていますので理解に苦労はないでしょう。実演には多少躊躇する面もありますが、このテーマを研究したい人には勉強になる発想が含まれています。(2022.01.09)