garamanのマジック研究室

Ladies' Looking Glass

4人の観客にそれぞれ2枚ずつのカードを選んで、覚えてももらいます。マジシャンの手に残ったデックの中央付近に、1人ずつ戻していきます。1人が戻すたびにデックはカットされ、誰のカードがどこにあるのかは分からなくなります。

デックのトップとボトムのカードを観客に見せますが、そこにあるのは誰のカードでもありません。しかしデックを軽く振ってやるだけで、トップとボトムに1人目の観客が選んだカードが現れます。2人目、3人目も同様に次々に選ばれたカードが現れます。

最後にはデック全てを空中にばら撒き、その中から4人目の観客が選らんがカードを掴み取って見せます。


レディズ・ルッキング・グラス

あそびの冒険 全5巻
「1トランプ・マジック・スペシャル」 p.160

随分と古くから古典的な作品として認知されていたものですが、実演を見る機会は少ないものの1つです。4人の観客を相手にすることや、立ったままで演じられることから、クロースアップよりも少し規模の大きなパーラーマジックといった趣です。

5ページの解説でイラストもなく、読み飛ばしてしまいそうな作品ですが、ある技法との相性が抜群の作品です。その技法は難易度が高く、代替技法を採用されがちですが、代替の効かない作品もいくつかあります。そんな作品のひとつとしてこの作品が紹介されています。作品の解説も然ることながら、技法の効果について深く考察されています。(2013.09.01)

LADIES' LOOKING GLASS

THE ROYAL ROAD TO CARD MAGIC
p.255

冒頭の解説によると、この作品の原案者は、Comte という19世紀に活躍したフランスのマジシャンだそうです。「Ladies' Looking Glass」というタイトルは「女性の姿見」ととでも訳すのでしょうか?なぜこんな優雅な名前をつけたのかはわかりません。作品の雰囲気や台詞回しからも、タイトルに結びつくような印象は受けませんでした。

あそびの冒険」では、ある技法を使わずには達成できない現象としてこの作品を紹介していましたが、「THE ROYAL ROAD TO CARD MAGIC」ではその技法は使わず、ちょっと変わったやり方が採用されています。優れた解決方法かと聞かれると答えに迷いますが、興味深い手段ではあります。また、手順のはじめに準備を必要としている事も大きな違いです。この準備をすることで途中のあらために説得力がでるように工夫されていますが、今の感覚ではやりすぎな印象を受けます。軽いあらためで済ませて、その分準備をなくした方がスッキリします。(2013.09.08)

貴婦人の手鏡

カードマジック大事典
p.624

原案について、より詳しく載っていました。Louis Comte(1788 - 1859)というマジシャンで、この作品は 19 世紀の初め頃に考案したもののようです。また、タイトルの由来についてはこう書かれています。

2枚のカードが同じ色と数字なので、まるで鏡に映っているように見えることからこのタイトルがついた

カードマジック大事典

当時はそう見えるように演じていたのかもしれません。解説を文章で書くときに単に手続きを羅列するような書き方をすれば、そういう見せ方のニュアンスが上手く伝わりません。そのままフランス語から英語に翻訳されて世界中に広まるまでの間に、優雅さが削ぎ落とされてしまったのかもしれません。

この本の解説では、演技時間の長い原案の手順そのままではなく、著者の宮中桂煥氏の手順が解説されています。氏の手順では展開がスピーディーになるだけではなく、最後のクライマックスを派手に演出することで、現代風に改案されています。(2017.07.30)