garamanのマジック研究室

Open Prediction

マジシャンはあなたが選ぶであろうカードを予め予言として紙に書いておきます。しかもその予言は封筒に入れるでもなく、裏返すでもなく、公明正大に公開します。予言が書かれ、公開された後に、あなたは1枚のカードを選びます。そのカードは、紛れもなく予言どおりのカードです。

この究極の予言トリックとも言える現象は、ポール・カリーが1940年代の後半に提示したものです。つまり「観客が自由に選んだカードを予言する演出で、予言を予め公開しておく事は可能だろうか?」と世界中のマジシャンに問いかけたのです。それ以来、数多くのマジシャンがプロ・アマ問わずこのテーマに挑戦しました。世界中のマジシャン達は、この不可能とも思える問いに対して、無数の答えを提示し続けています。


オーラムズ・オープン・プレディクション
〜 Olram's Open Prediction 〜

カードマジック入門事典
p.147

エド・マーローの手順として高木重朗氏によって解説されています。マジシャンは1枚のカードを宣言します。紙に書いても口頭で宣言しても構いませんがとにかく予言のカードを宣言してしまいます。その後、よくシャッフルしたデックを観客に渡します。観客には1枚ずつ表向きに返しながらテーブルに重ねてもらい、途中、好きな1枚だけは裏向きのまま重ねるように指示します。半分ほど配ったところで残りのデックは返してもらい、全て表向きにしてテーブルに配られたカードと重ねます。これで観客が途中で裏向きのまま置いたカード以外は全て表向きになっています。少しずつスプレッドして確認していきますが、表向きのカードの中には予言しておいたカードがなかなか出てきません。途中1枚だけある裏向きのカードを素通りして最期まで確認しますが、やはり予言のカードは出てきません。最期に裏向きのカードを確認すると、間違いなく予言されたカードです。

特殊なカードは一切使わず、通常のデックだけで解決した手順です。途中、100%確実とは言えない状況がありますが、ある程度の経験があればカバーできる範囲かもしれません。相手の心理状態や観客全体の雰囲気をコントロールできるマジシャンなら問題にはならないでしょう。ただし、経験の少ないアマチュア・マジシャンには、大きな問題になります。確実に成功させるために一工夫するのも難しくはありませんので、自分流のアレンジを楽しんでみても良いかも知れません。(2009.06.28)

オープン・プレディクション

ロベルト・ジョビーのカード・カレッジ3
p.259

バーナード・ビリスの方法がロベルト・ジョビー氏によって解説されています。マジシャンが予言を書いて公開した後、デックを受け取った観客は自由にシャッフルします。シャッフルが終わったらデックを裏向きに持ち、1枚ずつテーブルに表向きに出していきます。途中1枚だけ裏向きのままテーブルに出しますが、それ以外のカードは全て表向きです。最後の1枚までテーブルに出しますが、マジシャンが予言していたカードだけが見当たりません。唯一裏向きに出したカードを確認すると、その1枚が予めマジシャンが予言していたカードです。

この手順もギミックや特別な準備は不要です。途中、ある種の勇気が必要な場面がありますが、ある程度の経験があれば気にならない程度のものです。見た目は非常にクリーンですし、手順もシンプルで解決方法はダイレクトです。(2009.07.05)

オープン・プレディクション

トリック・カード事典
p.149

ロバート・パリッシュの解決方法が松田道弘氏によって解説されています。マジシャンが予言を書いて公開した後、デックを受け取った観客は1枚ずつテーブルに表向きに重ねていきます。好きなタイミングで配るのを止め、次の1枚は裏向きのまま重ねます。残りのパケットはマジシャンンの手によって1枚ずつ表向きに重ねていきます。観客自身が置いた前半の中にも、マジシャンが置いた後半の中にも、予言されたカードは見当たりません。デック全体を持ったマジシャンは両手でファンに広げて持ちます。中央あたりに1枚裏向きのカードが見え、その1枚だけがまだ未確認です。マジシャンがゆっくりと手を起こしていくと、ファンの裏側に見えるカードは、紛れもなく予言されたカードです。

トリック・カードを扱った本に取り上げられた作品ですので、トリックカードを1枚必要とします。たった1枚のトリック・カードを使った無駄のない作品です。技術的な難しさもありませんので、雰囲気つくりに集中できます。(2009.08.15)

Open Prediction Direct

バウンドレス 日本語字幕版
演技 : Title1/Chapter7
解説 : Title1/Chapter16

ダニ・ダオルティスの改案です。オープン・プレディクションですから、まずは予言をハッキリと宣言します。ダニは「この作品のタイトルはダイヤの10だ」と言って演技を始めます。デックを丸ごと観客に渡してシャッフルしてもらったら、デックをテーブルに置きます。観客にトップから一枚ずつカードを表向きにしてもらいますが、「次がダイヤの10かも」と思ったところで手を止めてもらいます。ここまでの間に表向きにされたカードにダイヤの10が含まれていないのは一目瞭然です。観客は、手を止めた次のカードだけ裏向きのままダニの手の上に載せたら、残りのカードも全て表向きにしていきます。そこにもダイヤの10は出てきません。そう、ダニの手に載せたカードがダイヤの10なのです。

タイトル通りダイレクトな現象です。ノーマルデックで起こす奇跡。唯一使う技法が自然な動作に紛れており、目の肥えたマジシャンでも気持ちよく欺かれるでしょう。(2020.02.15)

One More Open Prediction

バウンドレス 日本語字幕版
演技 : Title1/Chapter1
解説 : Title1/Chapter10

ダニ・ダオルティスの改案です。「One More」とは、観客の一声を表しています。マジシャンがカードを1枚ずつディールし、観客がストップを声を掛ける。フォースがうまくいって得意気に「ここで良いですか?」と聞くと、「One More!」と声が帰ってきてしまう。そんな困ったシチュエーションを再現して見せ、観客の1人には意地悪にも「One More!」と声をかける役を引き受けてもらいます。観客参加型のコミカルな流れを楽しみながらも、結局はもう一枚余計にディールしたとこから、予言のカードが出てきます。

マジシャンをも煙に巻く狡猾な作品でありながら、ほぼセルフワーキングという、ダニらしい逸品です。(2020.02.23)