garamanのマジック研究室

Reset

4枚のAと4枚のJを使います。4枚のJをテーブルに伏せて置き、4枚のAはマジシャンが手に持ちます。4枚のAはマジシャンの手の中て、1枚、また1枚と、次々にJに変わっていきます。4枚ともJに変えた後に、4枚とも裏返し、カードの裏模様の一部(ここをリセットボタンと称しています)をポチッと押します。直ぐにフェイスを確認すると、全て4枚のAに戻っています。演技の始めにテーブルに伏せておいた4枚のJを確認すると、何事も無かったかのようにJのままです。

ポール・ハリスの代表作の1つです。


私のリセット

松田道弘のカードマジック
p.162

1977年、ポール・ハリスによって発表された名作「リセット」の、松田道弘氏による改案です。11ページにわたって23のイラストを駆使して説明するという力の入れようです。また、本文の解説は松田氏の改案の手順に集中していて、ポール・ハリスの原案との違いについては、注釈として別にまとめてありますので、混乱する事もなく読み進めることができると思います。

個人的な印象としては「大胆」です。「マジシャンは完璧に証明したがるが、一般的な観客にはここまで見せれば充分」といった思惑が随所に見られます。(2007.11.11)

リセット・オードブル
〜 an hors d'oeuovre 〜

テクニカルなカードマジック講座2
p.157

ネット上で見つけた動画を元に、荒木氏が手順をアレンジした作品です。原案者は山岸塁氏。4枚のキングと4枚のエースが一瞬で入れ替わる現象です。入れ替わった2つのパケットが戻るわけではないので、厳密にはリセット現象とは言いがたいですが、リセット手順の一部として使えそうな解決法です。リセットとしてではなく、単発で演じてフラリッシュのように見せるだけでも、充分なインパクトがあります。16枚のイラストを添え、6ページにわたって解説されています。

この作品は付属のDVDに収録されています。(2009.10.12)

リセットの考察/リセット・セパレーション
〜 Reset Separation 〜

テクニカルなカードマジック講座2
p.163

ポール・ハリスの原案の印象をそのまま引継ぎいで、荒木氏流のエッセンスを加えた作品です。現象は原案のまま忠実に再現しつつ、手順と使用する技法が変わっています。変化現象が起こるスピードは速いのですが、改めの部分に逐一時間がかかってしまう印象を受けました。付属のDVDにも収録されているため、映像で確認してみましたが、やはり改め部分の時間のかかり方が気になります。「改め部分を改案してスピードアップさせるには」と考えると、ポール・ハリスの原案に行き着くような気がします。著者自身の以下の記述を踏まえて、読むと面白みが出てきます。

原案とはまた違った趣になっていて、良い出来栄えだとは思うが、どんなバリエーションよりもシンプルな原案にこそ、この作品のすべてがあると言えるだろう。

テクニカルなカードマジック講座2

原案とは別なアプローチで同じ現象を起こすという試みとしては非常に面白いです。独特な技法も含まれていて、アマチュア・マジシャンとしてつい試してみたくなる魅力はあります。12ページにわたって31枚のイラストを添えて解説されているあたりに、この作品への力の入れ具合を感じます。(2009.10.17)

Reset

Stars of Magic 1
演技 : Title1/Chapter28
解説 : Title1/Chapter29

ポール・ハリス本人による実演と解説です。1977年の発表当初とほぼ同じですが、手順始めの4枚のAの改めが省略されています。原案の改め方の不自然さを払拭するためと思われます。4枚のJの方は改めているわけですからスマートな解決方法だと思います。また、リセットボタンを押すジェスチャーも省略されています。

2分間の演技と5分間の解説です。(2009.10.24)

セット・リセット・プラス

ロベルト・ジョビーのカード・カレッジ 第3巻
p.134

バーナード・ビリス、リシャール・ヴォルメル、ロベルト・ジョビーの3人のやりかたを融合した作品だそうです。作品解説の冒頭で「私の知る限り、もっとも自然で、無駄がない」と評していますが、原案より自然になったとか、原案よりも無駄が少なくなったというような印象は、あまり受けません。見せ方の一つのバリエーションとしては、より現代風になっているかと思います。

解説では4枚のKと4枚の7を使っています。4枚のKはテーブルに伏せておき、4枚の7が1枚ずつKに変わっていくという現象です。7がKに変わる瞬間の見せ方に様々なバリエーションを持たせてあり、このあたりは原案よりも観客受けするかもしれません。見る人を飽きさせない工夫を感じます。

イラストは2枚だけで、ちょっと分かりにくい表現もありますが、じっくりと読めば習得も難しくありません。必要な技法はきちんと他の章で解説してあります。(2012.08.12)

Mutation

STORY
p.19

アマチュア・マジシャン、Koudaiさんによる改案です。原案では、4枚のAと4枚のJのように異なる数値の4枚が入れ替わる現象ですが、Koudaiさんの改案では4枚の3と4枚のブランクフェイスが入れ替わります。これだけでも観客にとって負荷の低い作品になります。まず、4枚のブランクフェイスを伏せてテーブルに置いて、誰も触れないようにカードケースを乗せてしまいます。その状況で手元の4枚の3が一枚ずつブランクフェイスに変わっていきます。ところが、4枚ともブランクフェイスに変わったのを見た直後に、また4枚の3に戻ってしまいます。カードケースの下を確認すると、何事もなかったようにブランクフェイスが4枚あります。もう一度見せると言って、今度は4枚の3の方をテーブルに置き、手には4枚のブランクフェイスを持ちます。手元のブランクフェイスを一枚ずつ確認した次の瞬間、4枚の3に変化してしまいます。テーブルに置いた4枚のカードを確認すると、こちらが全てブランクフェイスになっています。

現象が原案よりも長くなっています。現象がわかりにくいままだと、最後の入れ替わりは蛇足になりかねないところですが、4枚のブランクフェイスを使用したことによって、ひとつひとつの現象がスッキリと理解しやすくなっているため、最後の入れ替わりも効果的な駄目押しとして、驚きを増す結果になっています。

なお、冒頭の「スペードの3をブランクフェイスに変える」部分は、左利きならではの見せ方になっています。右利きの人が左右を入れてこの通りに演じると不自然ですが、その場合は、観客側のコーナーを見せるのではなく、マジシャン側のコーナーを見せるように変えるだけで自然に見せられます。(2017.02.05)