garamanのマジック研究室

Torn And Restored Card

あなたが自由に選んだ一枚のカード。マジシャンはそのカードを4つにちぎってしまいます。ちぎったカードの1片をあなたが手に握っておきます。残りの3片はマジシャンが持ったデックの中に挟んでおきます。マジシャンがデック全体を勢い良くリフルすると、一枚のカードが飛び出してきます。。。でも良く見ると、、、コーナーが1片欠けています。

あなたが持っている1片を合わせてみると、ぴったり一致します。カードの表を確認すると、紛れもなくあなたが始めに選んだカードです。

破ったカードを使って何かを起こす現象を総称して「Torn Card Trick」と呼びます。元に戻す「Torn and Restore」はその1種に過ぎません。古くから演じられてきた現象ですので、多くのマジシャンがそのバリエーションを発表しています。


即席の破ったカードの復活
- Imprmptu Torn and Restored Card -

ルポールのカードマジック
p.125

ポール・ルポールによる実演写真つき手順。演技時間1・2分、まさに即席です。大胆なアイディアによって実現する、強烈なインパクトのあるマジックです。道具に頼らず、技に頼らず(多用せず)、最小限のエネルギーで最大限の効果を出すことのできる好手順だと思います。

このページの始めに書いたのが、このマジックによる現象です。「即席」という言葉でこのマジックを侮ってはいけません。わずか2ページの解説だからといって見過ごさないで下さい。最近のいくつかのバリエーションしか知らないアマチュアマジシャンの方が、逆に驚くかもしれません。むしろ、最近のバリエーションの方が即席には演じられなかったりしますから。。。(2005.10.08)

BARRINGTON'S TORN CARD TRICK

THE ART OF MAGIC (Paper Back)
p.96

アマチュアマジシャンによる手の込んだ手順。ポール・ルポールのプロとしての実践的な手順に対して、こちらはバリントンというアマチュアマジシャンによる手の込んだ手順です。マジシャンを引っ掛けてやろうという思惑があるのではないかと思う程、準備・現象・手順に趣向が凝らされています。現象の不可能性をここまで追求した手順は珍しいです。カードを破るのも、破片を選ぶのも観客に任せて、残りの3片が復元された状態のカードを、密封した封筒の中から取り出して見せるという、強烈な現象です。

準備は必要ながら、その効果はとても興味深いものです。追求すればここまでの現象が起こせるのかと唸ってしまいます。なかなか実演する気にはなれませんが、良く出来たミステリを読んだ後のような感銘を受けました。読み物としていかがでしょう。実演の解説と準備の解説が同じくらいの量ですから。。。(2005.10.08)

破って元通りになるカード

あそびの冒険 全5巻
「1 トランプ・マジック・スペシャル」 p.89

バリントンの手順を松田道弘氏が紹介しています。THE ART OF MAGIC (Paper Back) のバリントンの手順を和訳しただけでなく、イラスト付きでより詳しく解説されています。ある技法を使わないと出来ないマジックとして、バリントンの手順を紹介しているというスタンスです。手順の解説も親切ですが、それ以上にプロならどうするかという視点での解説や、アマチュアとプロの感覚の違いに着目した解説は参考になります。(2005.10.08)

Hypnotique

カードマジック事典
p.331

ロジャー・クロススウェイトの手順です。「観客が選んだカードを4つに破いてテーブル上に置く。破いた破片をかき集めて両手に挟むが、手を開くと元通りの1枚のカードに復活している」というシンプルな現象です。これも準備不要の即席マジックです。わずか1ページの解説ですが効果は充分です。技術的な難易度もさほど高くはありませんが、実践慣れしていないと難しいでしょう。ある技法を伴う為、精神的な負担が多少強いマジックと感じます。(2005.10.08)

Pickin' Up The Pieces

世界のカードマジック
p.148

リチャード・カウフマンの手順です。小道具にシールを使った、分かりやすくて印象の強い作品です。効果が面白いので順を追って現象を書いておきます。まず、観客が選んだカードの4分の1を破りとって、観客に持ってもらいます。残りの4分の3は細かく破りデックの中に挟みます。デックをリフルすると細かく破ったはずのカードが復元されて飛び出します。復元された4分の3を先ほどの観客に渡し、手元の4分の1と確かに一致する事を確認してもらいます。ここで観客の手元のカードを返してもらい、破った箇所をキッチリと揃えて、デックの上に乗せます。1枚のシールを取り出しカードの中央に貼ります。このシールで破り取った箇所を張り合わせるのです。また、このシールにカードの状態を描いておきます。四角いカードを描き、一部破れている箇所に線を引いておくのです。このデックに手をかざした瞬間、シールに描いた絵から破り取った箇所の線が消えます。同時に、シールを貼り付けたカードの、実際に破れていた箇所も復活しています。もちろん復元したカードは観客に渡して確認してもらう事ができます。(2008.10.25)

破いたカードのミステリー

テクニカルなカードマジック講座
p.129

荒木一郎氏の手順です。とは言っても、ご本人も明記しているとおり、殆どチャールズ・ジョーダンの手順です。チャールズ・ジョーダンの「The Incomprehensible Destroyed Card」の手順に、わずかな工夫が加えられています。

観客が選んだ1枚のカードを受け取ったマジシャンは、表向きのままインデックスのあるコーナーを破り取ります。破りとった破片は観客に戻し、持っていてもらいます。残った部分を3つに破ります。3つの紙片をデックの中ほどに差込み、デックをはじくと、3つの紙片が破れる前の状態まで復活して、飛び出してきます。観客に持っていてもらった1片と合わせると、破れ目がピタリと一致します。

ギミックは一切使わず、大胆な原理を採用しています。また、場慣れしたマジシャンであれば、準備もせずに即席に実現できる作品です。初心者であれば、事前の準備にも、途中で使うクラシックな技法にも不安があるかもしれませんが、そもそも初心者の方ならカードを破るようなマジックには手を出しにくいでしょう。そう考えると、ある程度の経験者向けの作品となりますので、充分に即席マジックとして位置づけられるのでないでしょうか。(2011.12.24)

Torn and Restored Card

ワンダライズド 日本語字幕版
演技 : Chapter5
解説 : Chapter 6

トミー・ワンダーによる「Torn and Restored Card」の実演と解説が見られます。演じているのはポール・ハリスの作品で、1枚のカードだけで行うものです。作品自体は非常にシンプルなものですが、このレクチャーの目的は作品の解説ではありません。演技をする上での有益なアドバイスが得られます。例えば「破りとったカードの破片をポケットにしまうときにはポケットの奥まで手を入れない」とか「カウント技法は数えるためではなく示すために使われるべき」などといった事が解説されています。観客の心理に与える影響を知り尽くした彼ならではの解説で、どれも聞けば納得のものばかりです。そのため、実演は1分15秒なのに対して、解説が11分30秒というバランスになっています。(2012.08.05)

THE REFORMATION

リフォーメーション 日本語字幕版
演技 : Title2/Chapter2
解説 : Title2/Chapter3

ガイ・ホリングワースの代名詞的手順。DVDのタイトルがこの作品名になっていることからも分かる通り、「THE REFORMATION」を解説するためにDVDです。EPILOGUE:3分、PERFORMANCE:4分、INTRODUCTION:1分、PREPARATION:4分、THE SWITCH:6分、THE TEAR:7分、THE DISPLAY:4分、RESTORATION#1:8分、RESTORATION#2:7分、RESTORATION#3:6分、OVERVIEW:3分、と合計53分にもわたって、一つの作品を扱っています。3段階の復活現象だけでも21分もの解説です。それだけ緻密に計算された手順で、こだわればどこまでも練習が必要です。

話題になった当時、限定販売してみたところすぐに売り切れてしまい、再販を望む声が多かったものの、限定を銘打っておきながらすぐに再販するわけにもいかず、20年が経ってしまいました。当時の手順ではなく、こまかな点でさらに発展した20年後の手順を解説するという事で折り合いをつけ、あらためてDVD化されました。まさに世界中のマジシャンにとって待望の解説と言えます。現象は極めてクリーンに見えます。サインしてもらったカードを目の前で4枚に破り、その破片が一枚ずつ復活していきます。復活している最中にもサインは見えている状態です。また、完全に復活した後のカードはサインをしてもらった観客に渡して、記念に持って帰ってもらえるという作品です。実演するには大変ですが、これだけの現象を起こせるのなら、時間をかけて練習する価値は大いにあります。(2015.12.28)

THE REFORMATION

ルーティンズ 日本語字幕版
演技 : Title2/Chapter22

ガイ・ホリングワースの名前を一躍有名にした手順。1999年当時の映像です。若い。1994年時点で解説はされていますが、限定販売と銘打っていたため、5年後のVHS「ROUTINES」にもパフォーマンスしか収録されませんでした。このDVDは当時のVHS映像を丸々収録してありますが、当然当時の映像に解説はありません。またDVD化にあたって1時間20分ものコメンタリが追加されていますが、その映像の中でも THE REFORMATION の解説はありません。別途「リフォーメーション 日本語字幕版」というそのものずばりのDVDが新たに作られています。それだけ、この作品には思い入れも強くしっかりと解説したいところなのでしょう。実際、簡単に解説されて真似できるものでもありません。

このDVDに収録されている1999年当時の映像と、2014年に「リフォーメーション 日本語字幕版」で演じられている新しい手順を見比べると、基本コンセプトは変わらないものの、細かな部分でかなり改善されていることがわかります。ひとつの作品をより良いものへと育て上げていく情熱を感じます。(2016.01.03)

トーン・アンド・レストアード・トランスポジション

デビッド・ウィリアムソン ウィリアムソンズ・ワンダー
p.110

マジシャンが最も見たがるマジシャン、デビッド・ウィリアムソンの作品。彼独特のコミカルな演出で解説されていますが、プロットの面白さから多くのマジシャンに影響を与え、決してコミカルではないタイプのマジシャン達も、レパートリーに加えています。まず観客に一枚のカードを選んでもらい、覚えたらデックの適当なところに戻してもらいます。揃えたデックを左手に持ち、左手一本でデックの中ほどから一枚のカードを飛ばし、右手でキャッチします。そのカードが観客が選んだカード!ではなく、これは失敗。間違えたカードは4つに破いてテーブルの上に置き、観客に押さえておいてもらいます。あらためて選んだカードを観客に聞いてデックから取り出したら、そのカードを、間違えたカードを押さえている観客の手の下に滑り込ませます。今、観客の手の下では、間違えたカードが破れた状態であり、正しいカードは破れていない状態で押さえられています。しかしすぐに手をどけて確認してみると、観客が選んだカードが破れた状態で、関係ないカードが破れていない状態になっています。不思議はまだまだ続きます。破れた状態に変わった観客のカードを、観客自身に握ってもらい、マジックウォンドでちょっとおまじないをかけると、観客の手の中にある4つの破片は、くっついて四つ折りの状態になっています。折りたたまれたカードを開くと間違いなく観客が選んだカードです。さらに続きます。その折り目がついたカードをテーブルに置き、手でプレスすると、折り目が全て消え、新品同様のカードに変わっています。

何人かの日本のマジシャンも、これを基にした手順を演じていますので、テレビで見かけることがあります。マジシャンによって演じ方はそれぞれですが、原案のプロットの魅力が強いので、誰の演技でも観客の反応はとても良いようです。(2016.01.17)

Unlimited Ripoff

Stars of Magic 1
演技 : Title1/Chapter3
解説 : Title1/Chapter4

ポール・ハリスの改案です。観客のサインが書かれたカードに4分割の折り目をつけて、サインの一部が含まれている1/4だけ切り取って、胸ポケットにしまいます。残りの3/4もすべてバラバラにして、3枚の紙片にしたら、それを重ねてテーブルに置きます。観客に指先で押さえてもらったら、先ほど胸ポケットにしまった紙片を取り出します。3つの紙片を抑えている観客の手を、胸ポケットから取り出した紙片でタップすると、3枚の紙片はすべてくっついて元どおりになってしまいます。3/4の紙片と、胸ポケットから出した紙片を合わせると、切れ目もぴったり一致しています。

ちょっとした準備だけで、即席にできる手順です。技術的な難易度もさほど高くなく、覚えきれないほど複雑な手順でもありません。お手軽な即席マジックとしては、無駄もなく完成度が高いです。(2018.05.20)

Cut & Restored Card

Stars of Magic 5
演技 : Title1/Chapter6
解説 : Title1/Chapter7

バーナード・ビリスの改案です。手で4つに破るのではなく、カッターで2つに切るところに特徴があります。裏向きのデックの上に、観客にサインしてもらったカードを表向きにして乗せます。そのカードの真ん中をカッターで真っ二つに切ります。切り取ったうちの半分を持ち上げると、当然その下には裏向きのデックが見えています。このように、2つに切断された様子がビジュアルに表現されたにも関わらず、半分を元に戻した瞬間、元の1枚に戻ってしまいます。

アイディアは面白いものの、演技はちょっと不自然な箇所が散見されます。これを元に演出を考えてみるのも、面白いでしょう。(2018.11.25)

リパレーション
〜The Reparation〜

ハンサム・ジャック:エトセトラ
p.161

ジョン・ロヴィックの改案です。ガイ・ホリングワースの「The Reformation」とデビッド・リーガルの「Piece by Piece」を参考にして、それぞれのアイディアをうまく取り込んだ作品です。観客にサインしてもらった絵札を4つに破ち、それが1片ずつくっついて再生していく様は、まさに The Reformation そのものですが、ハンドリングが少し易しくなっています。

この本の特徴として、彼のキャラクターのハンサム・ジャックが本文を書き、ジョン・ロヴィック自身は注釈の形で情報を添えているのですが、リパレーションについてはその注釈の量がかなり多めです。前述の2人の作品以外にも言及されていて、Torn And Restored Card 自体の系譜がわかる解説です。また、スペインのマジシャン・Inesがこの作品を演じる時の、興味深い工夫についても触れられています。(2019.05.12)

リパレーション再び
〜The Reparation Strikes Back〜

ハンサム・ジャック:エトセトラ
p.175

ジョン・ロヴィックのさらなる改案です。観客の錯覚を強める工夫がいくつか施され、手順としても Reformation よりも比較的易しくできるようになっています。また、パターはポール・ハリスの「Immaculate Connection」のものを流用しています。デビッド・カッパーフィールドも TV シリーズで演じた「Immaculate Connection」は、日本でも放送されましたのでご覧になった方も多いでしょう。”カードに印をつけるいくつかの方法をお見せしましょう。”と言って始まるアレです。破り始めるまでに少し時間がかかることに違和感を感じる観客がいるかもしれませんが、このパターに乗せることで解消される効果がありそうです。

11ページにも及ぶ解説は22枚のイラストを添えた力の入れようです。(2019.05.19)

トーン・カード

カードマジック大事典
p.452

チャーリー・ミラーの実用的な作品です。サインしてもらったカードを4つに破いたら、裏向きにしてテーブル上に置き、元の姿になるように破れ目を合わせて並べ直します。並べ直す過程で自然にはっきりと4分割されていることが伝わりますから、これ以上の説得力はないでしょう。この4つの紙片を取り上げて両手で合掌するように挟み、両手を軽く擦り合わせた後、おもむろにカードを落とすと、そこには破れ目のない姿に戻った観客のカードが現れます。

チャーリー・ミラーらしい、直接的なアプローチによる解決策です。(2019.06.02)