garamanのマジック研究室

Cups and Balls

伏せたカップの中に入れたボールがいつの間にか消えたり、別のカップから現れたり、重ねたカップの上から下に移動したり。時にはカップから思いもよらないものが出現したり、カップとボールを使ってあらゆる現象が起こります。

世界最古のマジックと言われる、カップとボールを使ったマジックです。紀元前2世紀にすでにこのマジックが存在していたそうです。。。


The Cups and Balls

THE BLACKSTONE BOOK -OF- MAGIC & ILLUSION (Paper Back)
p.157

基本的な原理を一通り網羅した手順です。ボールの消し方から始まって、一連の手順を詳しく丁寧に解説してあります。最新の方法でもなく特別目新しい事も含まれていませんが、基本的な手順をマスターするには充分で、実用的な手順と言えるでしょう。そもそも、この手順で不思議な世界を演出できないようではこれ以上の複雑な手順は演じない方が良いでしょう。

11ページに渡り29枚の挿絵付きで丁寧に解説されています。(2005.01.30)

DAI VERNON'S
"INPROMPTU CUPS AND BALLS"

STARS OF MAGIC (日本語版)
p.81

ダイ・バーノンによる即席カップ・アンド・ボールの名手順です。カップ・アンド・ボール用のカップとボールではなく、透明なグラスに紙ナプキンを巻きつけて中が見えないようにしたカップと、同じく紙ナプキンを丸めて作ったボールで行う、即席カップ・アンド・ボールです。と言っても、古典的なカップ・アンド・ボールより劣っているわけではなく、むしろ見たことの無い怪しげなカップを取り出して演技をするより、普段から見慣れている道具を使用することでより一層の驚きを提供することが可能な手順です。

解説は全てマジシャン側から見た視点で書かれていますので、観客の目にどのように映るのかをイメージしながら練習することが大切です。挿絵は少ないですが、第1段から第4段まで詳しく解説されていますので、順を追って解説を読んでいけば確実に身に付けることができるでしょう。(2005.01.30)

カップと玉

クラシック・マジック事典
p.149

クラシック・マジックの一つとして歴史と松田道弘氏自身の手順を紹介しています。カップ・アンド・ボールに関する歴史についての解説が2ページ半。カップ・アンド・ボールに使用する道具についての説明が1ページ。ボールの消し方に関する記述が5ページと続いた後に、松田道弘氏自身の改案が8ページに亘って16枚の挿絵付きで解説されているという充実の内容です。ややこしくなりそうな部分では手順の解説を一旦止めて、状態のチェックをしてくれるという何とも読者思いの優しい解説です。ここまで行き届いた解説であれば、理解できない人はいないでしょう。きちんと真面目にこの解説を読んで練習すれば、一つの魔法を手にする事ができます。

圧巻は最後の参考文献2ページです。沢山の本やビデオの中から良質のカップ・アンド・ボールが学べるものを抽出してまとめて下さっています。(2005.01.30)

Neo Cups and Balls Routine

夢のクロース・アップマジック劇場
p.192

古典中の古典、カップ・アンド・ボールのバリエーションです。根尾昌志氏自身が解説する大作です。大胆な発想と面白いストーリーで構成された名手順です。数あるカップ・アンド・ボールのバリエーションは、どれも手順が長く同じ現象の繰り返しになりがちですが、根尾氏の手順ではしっかりとしたストーリーと共に現象が進んでいきますから、淀みなく演じれば手順の長さは問題にならないと思います。また、手順の最後には驚きのクライマックスが用意されています。

14ページに亘る詳細な解説で、27枚の挿絵を駆使して分かりやすくまとまっています。手順自体は長いですが、ストーリーがしっかりしているので一度覚えてしまえば、手順に迷う事もないと思います。

準備に時間がかかる事や、座らないとできない事を、編者を務めた松田道弘氏が指摘されていますが、もうひとつ、演技終了後の後片付けにも気をつける必要があります。このような事を文章にすると、欠点が多いように受け止められるかもしれませんが、それらの欠点を補って余りあるルーティンである事は保証いたします。

場数を踏んだ方にはお勧めですが、初めて演じるマジックとしてはお勧めしません。手順を追って演じるだけでは、このマジックの魅力は伝わらないでしょうから。ゆとりを持って観客との掛け合いを楽しみながら演じられるくらいの方の演技であれば、安心して見ていられますが、手順を追うのに必死な不慣れな人が演じてしまうと、手順がとても長く感じられてしまうでしょう。

ところで、タイトルの「Neo」は、新しいという意味と根尾氏の苗字を掛けたものでしょうか?(2005.07.09)

カップ・アンド・ボール

クロースアップ・マジック
p.177

4ページにわたるカップ・アンド・ボールの歴史、20枚のイラストと共に8ページに亘る基本技法の解説と、それだけでも充分な分量ですが、さらに17ページに亘って、松田道弘氏のオリジナル手順が解説されています。著者自身が演じている手順というわけではなく、この本の読者に向けて新たに考え出したもののようです。ポイントは3つあります。1つ目は手順を短くする事。これはカップ・アンド・ボールが長い歴史の中で必要以上に難しくなりすぎた事や、短く簡単な手順で構成しても充分効果のあるマジックである事を証明するものです。2つ目は間単に手に入る道具を使用する事。これは、せっかく初心者向けの手順を構成しても本格的な道具が無ければ演じられないようでは本末転倒だからです。小さなボール4つと大きなボールが3つ、それにコーヒーカップ3つで実演できるようになっています。最後に3つめのポイントは手順を覚えやすくした事。これも初心者への配慮です。マジック自体の効果を損なわず、初心者でも演じられるように綺麗にまとまった作品です。

解説文は、全体で5段階に分けてあり判りやすくなっています。しかもページの構成が非常に見やすいです。具体的に書くと、見開きの状態で左のページには解説文が箇条書きになっています。そして、右のページは更に左右二つのスペースに分けて、左側のスペースには演者から見た状態の立体的なイラストが、右側のスペースには同じ瞬間のボールとカップの状態が断面図のように描かれています。今まで読んできたカップ・アンド・ボールの手順解説の中では、最も判りやすい名解説だと思います。(2007.02.10)

プアマンズ・カップ・アンド・ボール

ゆうきとものクロースアップ・マジック
p.230

真鍮のカップとニットボールによる、本格的な(高級な)印象を与えるカップ・アンド・ボールも魅力的ですが、アマチュア・マジシャンとしてはもう少し手軽に、即席で演じられる手順が欲しいところです。ゆうきとも氏によるプアマンズ・カップ・アンド・ボールは、まさにそんな願いに応えてくれる理想的な作品です。使用する道具は紙コップ3個とペーパー・ナプキンだけです。紙コップは不透明で重ねる事さえできれば他の素材でも可能ですし、ペーパー・ナプキンもくしゃくしゃに丸めてボール状にできれば良いので、神経質になる事はありません。これぞ即席マジックです。

3個の紙コップと3個の紙ボール、そして基本的なテクニックだけを使って手順が構成されています。多少紙ボールの大きさにバラつきがあっても、紙コップが使い慣れていなくても、演技にはさほど支障は無いと思います(もちろん、練習は必要ですが)。3個ずつのカップとボールで始めた演技は、途中で2個ずつに数を減らします。たった2つしかないカップの間で起こる移動現象はインパクトが大きいです。後半では更にカップの数を減らし1個のカップで演じます。

解説文は27ページにわたり詳細に書かれています。はじめの7ページは、この作品に使用するテクニックを6つ、22枚のイラストつきでじっくり解説。その後に全6段にわたる手順が54枚のイラストを添えて詳細に解説されています。手順解説中のイラストは、全て客席側からの視点で書かれているのが特徴です。(2008.08.10)

ザ・ソリッド・グラス
〜 The Solid Glass 〜

ジェイミー・イアン・スイスのクロースアップ・マジック
p.254

ジェイミー・イアン・スイスによる、カップ1つのルーティーンです。手順の初めにある、新聞紙でグラスを包む方法と、最後のクライマックスの部分だけがこの作品の肝です。クライマックスがどうなるのかは、タイトルから推測してください。文中では、グラスの準備が終わってから最後のクライマックスまでの手順について「あなた好みの手順を組んでいただいても何ら問題ありません」と言い放っています。一例として本人が好んで演じている手順が解説されていますので、解説は一連のルーティーンとして完成していますが、演技の大半の部分を読者に任せるあたりの発想は、さすがジェイミー・イアン・スイスといったところでしょうか。(苦笑)

始めの2ページでは「カップ・アンド・ボール」の歴史について触れ、次の1ページでこの作品の改良点をまとめています。歴史について触れている箇所では実に多くのマジシャンの名前が出てきます。ダイ・ヴァーノン、マックス・マリーニ、ローレンス・シュテインハウアー、ジェフ・バスビー、トミー・ワンダー、ポール・ハリス、ルーイ・シモノフ、マイケル・アマー、スティーブ・スピルマン、ドン・ロウトン、高木重朗、スコッティー・ヨーク。これだけ多くの人々がどのように関わってきたかを知り尽くした人の改案です。興味が沸かないはずがありません。

手順解説は10ページにわたって詳しく書かれています。クライマックスを盛り上げるために考えに考え抜かれた手順です。もちろん本人の言うように自分の好きな手順を演じても良いのですが、まずはジェイミー・イアン・スイス本人が積み上げた実績のある手順を味わってみるのも悪くないと思います。(2008.11.16)

Two Cup Routine

ビジョンズ・オブ・ワンダー 第1巻 日本語字幕版
演技 : Title1/Chapter6
解説 : Title1/Chapter15

トミー・ワンダーのカップ2つを使った個性的なルーティーンです。これこそミスディレクションのお手本と言える名手順。道具に頼る事もなく、小難しいテクニックに走る事もなく、ミスディレクションを最大限に活かせばこれほどの現象が起こせるのかという、感動を覚える作品です。何度見ても素晴らしい。

20人程の観客の前で行なわれた4分ほどの演技が収録されています。難しい技法がないため簡単にできると誤解されそうですが、超がつくほど難しい作品です。全観客の心を完全にコントロールできないと成立しない作品です。練習ではできたつもりになって、いざ実演すると大やけどを負いかねない作品とも言えます。トミー・ワンダーの演技がずば抜けている事は、演技後の観客の反応を見れば一目瞭然です。

これほどの作品がなんと手順解説されています。しかもトミー・ワンダー本人の解説で20分以上のボリュームです。ミスディレクションの極意がいくつも丁寧に解説されています。一度でもカップ・アンド・ボールの手順を演じた事のある人なら、目から鱗が何枚も剥がれ落ちる事でしょう。

なおカップ・アンド・ボールの解説が終わったあと、さらに2分ほどチョップ・カップの解説までしてくれるというサービスぶりです。(2011.03.06)

ザ・ソリッド・カップ

高木重朗の不思議の世界
p.29

高木重朗氏によるカップ1つのルーティーンです。たった1つのカップですから現象はシンプルです。3つのカップを使う作品では、ついマジシャンのスピードで演じてしまい、はじめてみる観客がついていけなくなるケースがありますが、この高木氏のルーティンでは、最後まで1つのカップですし、ボールも1つしか使いませんので、見る側の負担が非常に少ない作品になっています前述のジェイミー・イアン・スミスの手順にも影響を与えた作品です。

テーブルにはカップが1つ伏せて置いてあります。マジシャンは手に何も持っていないことを示すと、ウォンドを取り出し、その先から小さなボールを出現させます。ボールを左手に握り、ウォンドを一振りすると、ボールが消えます。消えたボールはカップの中から現れます。今度はカップの中にボールを入れます。カップを少し持ち上げウオンドの先端を少し差し込みます。ウォンドの先端でボールをすくうようなしぐさをしますが、先端にボールは見えません。この見えないボールを掴み取り、上着のポケットに投げ入れるしぐさをします。すると本当に上着のポケットからボールが出てきます。続いて、ボールを握った左手をカップの上に持っていくと、カップをすり抜け、ボールはカップの中から現れます。

と、ここまではシンプルに事が運ぶのですが、この後に3つのサプライズが起こります。カップから出てくるはずの小さなボールが出てこず、カップを叩いてやると大きくなって出てきたり、カップがいつの間にか「カップ型の木の塊」になったりした挙句、最後には大きなボールが木の塊の中に入り込んでしまうという衝撃の現象です。

7ページにわたって23枚のイラストを添えて解説されています。解説文は超がつくほど丁寧です。(2011.09.17)

Cups & Balls

Stars of Magic Vol.3
演技 : Title1/Chapter14
解説 : Title1/Chapter15

Frank Garcia によるカップ3つとボール3つのルーティーンです。マジック・ウォンドは使いません。数人のマジシャンによる様々なアイディアを取り込んで手順を組んでいます。ウォンドを使っておまじないをかけるような演出は一切ありません。ボールの思わぬ動きにマジシャンが驚くような演出でもありません。味気ないような気もしますが、純粋にマジシャンのテクニックで見せているという形になりますので、より現代にマッチしているのかもしれません。

3つのカップを伏せて重ね、ボールがカップを1つずつ貫通していく現象は、とても分かりやすくてインパクトのあるものです。観客の混乱を招いていることにも気づかず、複雑な現象を次々と起こしてしまいがちな Cups and Balls ですが、この手順では、分かりやすい現象ばかりが選ばれていますし、手順の一つ一つを区切って一息つく間を設けているので、見ていても疲れない作品です。(2011.11.13)

ボールまみれのカップと玉
〜 Cups Runneth Over 〜

ジェイ・サンキー センセーショナルなクロースアップ・マジック
p.158

ジェイ・サンキーの奇抜な発想は、クラシック作品にも独特な味わいを与えてくれます。どんなマジックでも、観客の固定観念や思い込みから少し外れたところを突く事で、面白い現象を生み出しています。しかし、この少し外れたところが、皮肉にもマジシャン自身の常識の限界だったりします。ジェイ・サンキーの発想は、マジシャンの常識の範囲からも少し外れていると言えるでしょう。そういう発想の違いは、クラシック作品を通してこそ実感できるものです。ジェイ・サンキーの Cups and Balls の手順は、マジシャンが先の展開を想像しながら見ていても、裏切られるポイントが多く、驚きの連続といった表現がピッタリの作品です。

180ページほどの比較的薄い本ですが、その中の15ページを占める解説は圧倒的なボリュームです。4つのカップと15個ものボールを使う手順だけあって、状況が複雑になりがちです。その分、解説も長いですが、30枚ものイラストを添えた丁寧な解説なので理解に苦しむようなところはありませんでした。(2012.06.24)

カップと玉

図解 マジックテクニック入門
p.163

カップ1つとボールが3つのシンプルな手順です。ボールを握った手にスプーンでおまじないをかけると中のボールが消え、テーブルに伏せておいたカップの下から現れます。2つ目、3つ目のボールも同様にカップの中から現れます。1つのボールをポケットにしまっても、なぜかカップの中から現れます。3個のボールをまとめてポケットにしまってもカップの中から3つのボールが、、、いや1つのレモンが現れます。だめ押しで、カップの中からもう1つのレモンを取り出して終了です。

必要なテクニックは、フェイク・トランスファーとボールのロードですが、どちらも詳しい図解付きで親切に解説されています。これらの技法とミスディレクションの習得のための作品としてカップと玉が取り上げられています。技法をあわせると20ページにも及ぶ解説で、50枚以上のイラストが添えられています。(2014.01.04)

Elevator Cup & Ball Routine

Stars of Magic Vol.3
演技 : Title1/Chapter8
解説 : Title1/Chapter9

カップ1つとボールが3つのシンプルな貫通現象です。ルーティンという程のものではなく、貫通現象を起こすひとつのアイディアといったところでしょうか。

1つのカップを伏せ、その上に1つのボールを乗せます。さらに2つ重ねたカップを被せますが、指を鳴らしてから2つのカップを持ち上げると、そこにあったはずのボールがなくなっています。消えたボールは一番下のカップの中に移動しています。2つめ、3つめのボールでも同じように繰り返しますが、何度やってもボールは一番下のカップから出てきます。

見た目もシンプルで、技法としても難しくはありません。ただ、スピードに依存したアイディアなので、繰り返すには無理がある方法だと思います。長い手順の中で、一度だけこの方法を取り入れ、しかもこのスピードが全体の流れに乗って入れば、とても有効なアイディアです。場面に合わせて使いこなせると強力な武器になるでしょう。(2018.06.10)

即席カップ・アンド・ボール

即席マジック入門事典
p.254

通常のカップ・アンド・ボールの手順では、カップにもボールにも特別な仕掛けはなく、巧妙なミスディレクションやテクニックを駆使して現象を起こします。道具に仕掛けが必要ないなら、その場にあるもので即席にカップとボールを用意しよう。そんなコンセプトの作品が解説されています。この作品は著者のオリジナルではなく、ダイ・バーノンの作品です。「Stars of Magic」に掲載された「DAI VERNON'S "INPROMPTU CUPS AND BALLS"」の手順と同じものを、ほぼ同じイラストで補足しつつ、解説はより詳しくなっています。

Stars of Magic」の解説は、かなりマニアな人を相手にした文章になっていますので、ある程度の基礎知識がないと理解できないものです。それに対してこの本での解説は、初心者を想定した文章になっていて、比較的理解しやすいものになっています。詳細な解説は18ページにわたります。(2018.08.13)

カップ & ボール

ダイ・ヴァーノン・セミナー
紹介とパフォーマンス : Title1/Chapter3
考察 : Title1/Chapter4
ジョン・スカーニの手順 : Title1/Chapter5
パラパテティック・ウォルナッツ : Title1/Chapter6
ボール・コーン & ハンカチーフ : Title1/Chapter7

マジックのレクチャーというスタイルを初めて実現したダイ・ヴァーノン。1946年から始めた全米のレクチャーツアーでは、カップ & ボールから始めたそうです。古典中の古典である作品をヴァーノンンがどのように、マーク・ウィルソンの番組に出演した時の78歳のヴァーノンの映像が収録されています。その映像を元に、ロベルト・ジョビが実演しながら解説を添えていくというレクチャーが行われます。手順の解説だけではなく、その裏にある理論についての考察を加えていくのが特徴です。

さらに、ヴァーノンが古典の何を変えたのかを知るための考察が続きますが、その一環でジョン・スカーニの演技映像も流れます。

ヴァーノンは他人の手順もよく研究していたようで、各時代のトップマジシャンたちの演技にも精通していました。一例として、グラスとクルミを使った作品について、ジョビによる実演・解説が収録されています。

最後に 1970 年代の IBM コンベンションでヴァーノンが立って演じた「ボール・コーン & ハンカチーフ」の映像も紹介されています。(2018.08.19)

世界最古の奇術

大魔術の歴史
p.11

世界最古の奇術として「Cups and Balls」を解説しています。「エジプト時代」「ギリシア・ローマ時代」「中世・ルネッサンス・近世」「現代」と、時代を追ってその時々の特徴的なポイントがまとめられています。また、インドや中国で演じられていたお椀を使った作品や、日本で行われた茶碗を使った作品など、国による特徴もまとめられています。イラストや写真などの資料も豊富に使われた、18ページにわたる解説です。

基本的な手順の解説もありますが、それよりも作品の歴史的・文化的な分類に注力した内容です。中でも、Cups and Balls の名手として、イタリアのバルトロメオ・ボスコについての記載は、3ページにわたって詳細に述べられています。(2018.10.14)

お椀と玉

日本奇術演目事典
p.148

「放下筌」から [しな玉の図] が取り上げられています。4人の観客の前で座敷で演じている演者が、淡々としたした表情でクライマックスを迎えているシーンです。現在の「カップ・アンド・ボール」にはないオチです。座敷の遠い隅に伏せて置いてある笊籬(いかき:竹で編んだザル)まで長い竿を伸ばし、竿の先端に引っ掛けて笊籬を持ち上げると子犬が出てきます。

4人の観客のうち3人が笊籬の方に目を奪われているのに対して、1人だけ演者の様子を凝視しているという描写も、リアリティーがあって面白いところです。「放下筌」には、実演風景だけではなく手順の解説もありますが、全16段の手順のうち1段から4段までのページも掲載されています。(2018.10.21)

お椀と玉(品玉)

日本奇術文化史
p.257

日本奇術演目事典」に掲載されているのと同じ、「放下筌」の [しな玉の図] が掲載されています。こちらの本では全16段の手順のうち、1段から4段までのページと、13段から16段までのページが掲載されています。中でも最後の16段目の手順では、笊籬(いかき:竹で編んだザル)から子犬を取り出す方法が解説されています。(2018.10.21)

ザ・ゴールド・カップス

デビッド・ウィリアムソン ウィリアムソンズ・ワンダー
p.133

デビッド・ウィリアムソンの改案です。カップとウォンドとボールを使うオーソドックスなスタイルを踏襲しつつ、カップは2つしか使用しないので、観客がボールの行方を追う負担は少なくなっています。また、単に手順を淡々と見せるのではなく、観客とのコミュニケーションを織り混ぜているのがデビット・ウィリアムソンらしいところです。押し笛を使ったコミカルな演出を挟むなど、全体として現代的で軽妙なテンポが特徴と言えるでしょうか。そんな作品でも、ダイ・バーノンやチャーリー・ミラーなどのムーブが土台としてしっかりと構成を支えているのが見受けられます。(2019.12.14)

The Cups and Balls

THE CLASSIC MAGIC OF MICHAEL VINCENT
演技 : Title1/Chapter4

マイケル・ヴィンセントによる3つのボールと3つのカップを使った手順です。DVDのタイトルに「Classic Magic」と冠している通り、クラシックな手順構成です。目新しいものはありませんが、確かな構成で強力な原理を含んだものです。たまにユーモラスなところを交えて演じるのはマイケル・ヴィンセントの特徴ですが、過剰にせず適度に観客の気が緩む瞬間を作るテクニックも、クラシック・マジックのポテンシャルを引き出すには必要なスキルでしょう。

最後にはそれぞれのカップからフルーツが出てくるというオチも、見慣れた感じになってきましたが、目の前で起こる現象としては今でも強烈なインパクトがありますし、なによりタネを明かそうという発想自体を抑える効果が見込める、良い終わり方だと思います。

観客に披露している演技の様子が収録されているだけで、解説はありません。(2020.01.19)