garamanのマジック研究室

月世界旅行 & メリエスの素晴らしき映画魔術

リュミエール兄弟が生み出した映画装置「シネマトグラフ」。現在の映画技術の基礎となるものですが、当時はその活用方法としては今のホームビデオのようなものでした。工場の出口から従業員が出てくるシーンや、庭で赤ん坊が食事をしているシーンを見せる、そんな程度のものでした。もちろん当時の時代背景を考えれば画期的なことです。その後、映画の立ち位置を、記録映画というポジションから、エンターテイメントに飛躍させたのはジョルジュ・メリエスといって差し支えないと思います。トリック撮影の元を作ったと言っても良いでしょう。そんなジョルジュ・メリエスが世に放ったのが「月世界旅行」です。

天文学会のメンバーである6人の学者が、巨大な砲弾に乗って月に着陸する。誰も見たことのない月世界に降り立った6人は探検中に異星人の襲撃を受ける。生け捕りにされて月の王に差し出されてしまった彼ら。はたして無事に地球に帰還できるのか。。。

当時においては、とんでもないスケールの作品です。マジシャンでもあるジョルジュ・メリエスのアイディアなしには撮影は出来なかったことでしょう。カラー撮影技術もない時代に、ひとコマずつ丁寧に手作業で色付けを行った(フィルムに直接色を塗る)という力の入れようで、世界的に大ヒットしたそうです。しかし、その後新しい時代の流れに押しつぶされることになり、失意の本人が全てのフィルムを焼き払ってしまったため、幻のフィルムとなってしまいました。そんな幻のフィルムが劣化が酷いながらもスペインで発見され、さらに10年ほど経って修復技術も確立されたために、デジタル映像として見ることができるようになりました。誕生から110年が経って、またひとつマジックが生まれた瞬間です。

このDVDには、復元された「月世界旅行」がまるまる一本収録されています。そして、メリエス自身の人生を追ったドキュメンタリーと、復元作業の工程も見ることができます。さらに、トム・ハンクス、ミシェル・ゴンドリー、ジャン=ピエール・ジュネらへのインタビューを通して、今なお多くの映画人を魅了するメリエスの世界に迫ります。

セルシュ・フロムバーグ
エリック・ランジュ

レビュー

なし