garamanのマジック研究室

ザッツ・マジックアワー 〜ダメ男ハワードのステキな人生〜
THE GREAT BUCK HOWARD

父の希望に沿って法律学校に通うトロイ(コリン・ハンクス)は、順風満帆な人生を歩む父・ゲイブル(トム・ハンクス)の背中を追うことに疑問を感じ、突然意を決して学校を中退する。親の敷いたレールから飛び降りた後、彼が歩み出した道はエンターテインメントビジネスの世界。とはいえ、自分に何か表現できるものがあるわけでもなく、まずはエンターテイナーの付き人募集に応募した。結局、かつて一世を風靡したメンタリスト、バック・ハワード(ジョン・マルコビッチ)の付き人になったのは単なる偶然に過ぎなかった。自分の人生のために選択しただけの付き人生活だったが、続けているうちにハワードの人生に惹かれていき、いつしかハワード一色の生活に変わっていった。かつて一世を風靡したとはいえ、今はもう昔の人となってしまったハワードは、数年かけて温めてきたネタで再起をかけた勝負に出ることになった。

トロイにとって、幸せな人生とは何なのか。ハワードにとって、理想的な人生とは何なのか。2つのストーリーを一本の映画で表現したような深い映画だと思います。どんな映画もそうかもしれませんが、見る人がどんな人生を送ってきたかによって、印象は大きく変わると思います。また、同じ人でも、人生のどんな場面でこの映画を見るかによって、ただ笑えるだけの映画にもなるし、ハワードの生き様に涙するかもしれないし、トロイの行動に怒りが湧くかもしれません。コメディータッチでありながら、それぞれの人物の背景をうまく描画した作品でした。

2008年にアメリカで公開された映画ですが、日本では公開されませんでした。というのも、おそらくこの映画を本当に楽しめるターゲットは、アメリカのテレビ番組を堪能している人たちだからです。再起を果たしたハワードは、かつて出演したテレビ番組や、今話題のテレビ番組に出演することになるのですが、その番組や司会者などが本物なのです。"Regis and Kelly" という番組では、再ブレーク中のハワードを招き、ハワードの旧友(という設定)で、映画スタートレックでヒカル・スールー役を演じたジョージ・タケイを、サプライズゲストとして呼ぶシーンがありますが、この番組のセットも、司会の2人も、ジョージ・タケイも、みんな本物です。他の番組のシーンでジェイ・レノをこきおろすシーンなどは、背景を知っている人なら、もっと楽しめる内容なのだと思います。そういった事情を知らなくても、デビッド・ブレインがチラッと登場したり、マネージャーのギル役がリッキー・ジェイだったり、マジシャンのバック・ハワードが、実在のメンタリスト、アメージング・クレスキンだったりするので、マジック・ファンには楽しめる作品です。こう考えると、日本で公開されなかった理由もわからなくはないですが、勿体無い話です。

John Malkovich
Colin Hanks
Emily Blunt
Steve Zahn
Tom Hanks
(Bristol Bay Productions)

レビュー

なし