Cannibal Card
4枚のキングをカニバル(人食人種)に、3枚の黒いカードを宣教師に見立てます。4人のカニバルの間に1人の宣教師を挟むと食べられて消えてしまいます。カニバル達は次々と宣教師を飲みこんでいきます。
3人の宣教師が食べられてしまった後は、カニバル同士が共食いを始めてしまいます。1人また1人と、カニバルが消えていき最後には4人のカニバルが全て消えてしまいます。
ちなみに、カードのマーク(スペード・クラブ・ハート・ダイヤ)のことをスーツと言う事から、黒いスーツのカードを黒服の宣教師に見立てているわけです。
なつかしの名作カニバル・カード
〜Cannibal Card〜
松田道弘のマニアック・カードマジック
p.64
名人フレッド・カップスの手順です。原案はリン・シールスのようですが、フレッド・カップスによって個性的なマジックに仕上がりました。この本では「チューング・ムーブ」という演出が図解入りで詳しく書かれています。4枚のキングを重ねて上下2枚ずつのカードがそれぞれ外側に湾曲するようにして、カニバルの口のようにパクパクと動かしながら宣教師のカードを食べさせていくことで、本当に食べられているかのような表現が可能になっています。
簡単なマジックではありませんが、この本では27のステップに分けて細かく手順を解説してあるのでじっくりと習得できます。また、手順の所々で[チェック]という欄を設けてその瞬間のカードの配置や状況などを説明してあるところが、とても親切です。(2004.09.09)
カニバル・カードの研究
現代カードマジックのアイディア
p.94
松田道弘氏による研究の一端が垣間見れます。カニバル・カードは1970年代以降ポピュラーなカードマジックとして普及し、多くのマジシャンがその改案を発表しています。この本では松田氏によって、色々な改案をタイプ別に分類してその代表手順の概略が解説されています。カニバル・カードが難しく感じている人にとっては、自分にあった手順が見つかるか、オリジナルな手順を考案する手助けになるか、とにかく突破口が見つかるかもしれません。本の中で紹介されている手順は次のようなものです。
- 「ロイ・ウォルトンの Return of Cannibal」
- クライマックスに4枚のキングが4枚のクイーンに変化するというインパクト与えた(おそらく)最初の解決法。
- 「アラン・アッカーマンの Cannibal King」
- 1994年に発行された "Wednesday Night" というレクチャーノートに発表された手順。
- クライマックスに4枚のキングが4枚の8に変化します。(eight と eat をかけた駄洒落のようです。。。)
- 現象はロイ・ウォルトンと同じようですが、カードのすり替えの過程は違っています。
- 「ラリー・ジェニングスの Cannibal King's」
- 4枚のキングの間に他のカードが一枚おきに挟まれている、というエンディングを迎える手順。
- 松田道弘のマニアック・カードマジック で紹介されている手順と近いようです。
- 「松田道弘の 私案カニバル・カード」
- 上記3つの主だった手順をふまえて考案された松田氏の手順。
- 4枚のキングに挟まれた(これから食べられてしまう)カードを表向きにしたまま、公明正大に見せる手順。
実に4種類もの手順を解説してある内容の濃い解説なのですが、初心者の方には殆ど理解できないのではないかと思われます。(少なくとも簡単に実演することは無理でしょう)それは、最後の松田氏自身の手順以外は、イラストも無く文字だけで箇条書きにしただけの手順解説だからです。松田氏の著書の多くはとても親切な解説がなされているのが特徴ですが、この本では省けるところは省いて簡潔な解説になっているところが比較的多いようです。(2005.04.30)
大喰らいのカニバル
魅惑のトリックカード・マジック
p.122
3枚のカードが一度に4人のカニバル(4枚のキング)に食べられ、完全消失するという松田道弘氏の現象です。後に残るのは4人のカニバルだけです。現象はビジュアルなのですが、技術的にはかなり高度です。29ステップの細かい解説がなされていますので、手順は簡単に理解できますが、実演までにはかなりの時間を要するかもしれません。カニバル・カードのアイディアの一端としては、大変面白い手順です。同じテーマに対してアイディアを出し続けていくことが、より洗練されたマジックを生み出していくのだろうと実感しました。
松田氏自身がアフターソートの項目で仰っているように、見方によっては欠点と思われるところが何点かあります。しかし、欠点と思われる箇所に対しても、アイディアを紹介されています。こういったアイディアを次々と提供していただける事は、本当にありがたい事です。(2005.07.23)
ダンス・オブ・カナバルズ
ロベルト・ジョビーのカード・カレッジ 3
p.137
ジョビーによる、ちょっと変わったカニバル現象です。4人のカニバルが4人の宣教師を食べてしまい、さらにはデザートと称してブードゥーの呪術師まで食べてしまいます。最後にはカニバルたちの間に伝わる「呪術師を食べたものは呪術師になってしまう」という言い伝えの通り、カニバルたちは4人とも呪術師に変わってしまいます。
普段、物語を前面に押し出した見せ方をしないというジョビーも、この作品では例外的にストーリーを大切にしています。その理由を「マジックの持つ不思議さをストーリーが打ち壊していないから」と説明しています。確かにストーリーが現象をより引き立てている好例と言えると思います。
11枚のイラストを添えて、8ページ渡って解説されています。ストーリーももちろんですが、印象に残る動きが盛り込まれているのが一般受けする理由でしょう。1つはイーティング・ポジション(松田道弘氏の言うチューイング・ムーブ)で、宣教師のカードが次々とカニバルに食べられていく様子をコミカルに演出します。もう1つは、口に含んだ直後に「骨までバキバキと食べてしまう」という演出です。カードの端を両手の指先でつまんで上下に湾曲させる事で「パキン、パキン」という音を鳴らします。カード・マジックに音を加える演出は、作品全体のアクセントになるだけではなく、特徴的なワンシーンとして印象に残る効果があります。最後にタイトルの由来にもなっている「食後のダンス」を連想させる動きもとても印象的です。しかもこの動きにはトリックの秘密をカムフラージュする別の意味も隠されており、とにかく考え抜かれた手順になっています。(2008.06.01)
Cannibal Kings
STORY
p.39
アマチュア・マジシャン、Koudai さんによる改案です。4人のカニバルが3人の宣教師を1人ずつ食べてしまい、それでも満足しないカニバルたちは、共食いによって自分たちまで1人ずつ姿を消していきます。最後のカニバルまでが姿を消したとき、実はあの宣教師たちはマジシャンだったと明かされます。食べられてしまったはずの3人は、4人のカニバルたちの心を入れ替えさせることに成功し、デックの中から4人のカニバルたちとともに現れます。
このテーマではある程度のストーリーテリングが求められますが、難しい技法を使いながらでは意識が散漫になってしまいますので、観客をこの独特な世界に引き込むことが難しくなります。印象的な世界を作り出すためにも、高度なカード技法は避けたいところです。その点、この改案では高度なテクニックを必要としませんので、観客とのやりとりを楽しみながら演じることができます。(2017.03.26)
カニバル・カード
松田道弘のクロースアップ・カードマジック
p.75
松田道弘氏の初期の改案です。ランディ・ウェイクマンの SMORGAS BOAD CANNIBALS の第一段の手順では、4枚のキングの間で3枚のカードが消えるときに斬新なアイディアが施されているそうで、そこに惹かれてこの改案にたどり着いたとのことです。松田氏の思惑は、4枚のキングと3枚の裏向きのカードを交互に並べ、その7枚のカードを揃えた直後、ファンに開くと3枚の裏向きのカードが消えているというスピーディーな消失現象を作り上げることでした。
あの肝心のストーリーを挟む暇もない程スピーディーな展開ですので、カニバル・カードなのかというと異論もあるかもしれませんが、「一瞬で消す」ということを実現するためのアイディアはさすがです。(2017.04.15)