garamanのマジック研究室

Hanging Coins

4枚のコインを1枚ずつ透明状態にして空中に吊るしていきます。言葉ではわかりにくい現象ですが、確かに4枚あったコインが、1枚を空中に吊るすと消えて見えなくなり、手の中には3枚のコインしかありません。同じように2枚目・3枚目も空中に吊るして消していきます。最後に手元には1枚のコインしかない状況になりますが、空中に吊るした見えない3枚のコインをまとめて掴み取ると、再び見える状態になり4枚のコインが揃います。

同じようなプロットは以前からあったようですが、この名前で有名にしたのはデビッド・ロスであり、その手法の斬新さからこの現象の生みの親として認識されています。


The Hanging Coins

Stars of Magic 8
演技 : Chapter4
解説 : Chapter7

4枚のノーマル・コインだけを使った、テクニックのみで演じる作品です。自身の代名詞的テクニックであるエッジ・グリップを効果的に活用した手順で、この技法のための作品と言っても過言ではありません。まだ若い頃の実演が見られる貴重な映像ですが、この作品は演じ続けられましたので、晩年の様子は Youtube 等でも見られます。

空中にひっかけて消すのは3枚までで、4枚目は消しません。技法を使う上では自然な選択ですが、観客から見るとちょっと違和感のあるところかもしれません。(2023.12.16)

Silk/Coin Vanish

CREATING MAGIC
演技 : Chapter4
解説 : Chapter8

タイトルからは Hanging Coins を想像できませんが、演技映像を見ると Hanging Coins を演じた後に、4枚のコインをまとめてシルクを使って消し去る手順になっています。タイトルも後半のコインを消し去ることにフォーカスしていますし、解説映像も後半部分しか収録されていません。このように Hanging Coins 部分には注目されていない構成なのですが、この部分にこそ原案にはない魅力があります。

もっとも大きいポイントは、コインが4枚とも消えるということでしょうか。観客としても拍手をするタイミングが分かりやすいです。この「終わった」という感じが明確に伝わることは非常に重要で、このオフの瞬間があるからこそ、その後に続く「4枚のコインをまとめて取り出す」という部分の不思議さが増します。(2023.12.24)

元祖・ハンギング・コインズ
〜 Original Hanging Coins 〜

コインマジック大事典
p.116

David Roth の [Expert Coin Magic] を翻訳した コインマジック大事典 ですから、当然といえば当然ですがデビッド・ロスの手順が解説されています。"Original" と称している通り、このプロットの原案に位置づけられる手順です。見えなくなったコインを空中の見えないフックに引っ掛けていくという演出がきちんと解説されています。細かいようですが、このコインは消えたのではなく見えなくなっただけで「そこにある」というのが大事なポイントだと思います。見えなくなった瞬間からフックに引っ掛けるまでは、見えないコインを「持っている」という印象を与えられないと、一般の観客には分かりにくい現象に見えてしまいます。

手順自体は15枚のイラストで理解できますが、「持っている」雰囲気はイラストには表現されていませんので、文章から読み解くことになります。逆にこれが書籍で学ぶメリットでしょう。(2023.12.31)