garamanのマジック研究室

Card In Lemon

タイトル通り、レモンを切ると中にカードが入っているという現象の総称です。そのインパクトをどのように演出するかはマジシャンのセンス次第ですが、観客のカードが何らかの方法で消えた後、レモンの中からそのカードが現れる、というのが最もオーソドックスな演出でしょうか?


前田知洋のカード・イン・レモン

クラシック・マジック事典2
p.248

2人の観客を相手にした作品です。まず2人の観客にそれぞれ一枚ずつのカードを選んで覚えてもらいます。デックに戻された2枚のカードを、マジシャンは手探りだけで探し出すと宣言します。デックを見ないようにするため、観客に借りたハンカチでデックを覆います。この状況から、手探りで取り出した一枚のカードは、紛れもなく観客の1人が覚えたカードです。続けて、もう1人の観客のカードも同じように取り出そうと、右手をハンカチに近づけた時、マジシャンはおもむろにハンカチを取り除きます。左手にあるはずのデックは姿を消し、代わりに一つのレモンが握られています。レモンをテーブルナイフで半分に切ると、そこには丸められた一枚のカードが刺さっています。ゆっくりと広げたそのカードは、もう1人の観客が覚えていたカードなのです。

6ページの間に12枚のイラストを交えてシンプルに解説されています。解説がシンプルに感じたのは、おそらく台詞が一切無いからでしょう。台詞部分は個人のセンスに任せているため、解説文には台詞を書いていないという事です。念を押すまでもないとは思いますが、この作品では台詞がとても重要です。前田氏の言葉を借りると「経験共有型」の作品です。視覚や触覚だけでなく嗅覚までも刺激するためか、他の作品よりもリクエストが多いそうです。(2007.09.15)

カードイン・レモン

スーパークロースアップマジック 前田知洋 プライベートレッスン
Disk1/Chapter9

このDVDでは、1人の観客を相手にした作品が見られます。観客の選んだカードが、観客自身の手でデックに戻されシャッフルされます。シャッフルが終わるまでマジシャンは一切手を触れません。シャッフルが終わったデックを受け取ったマジシャンは、茶色い紙袋の中にバラバラとデックを落とし込み、袋ごと揺する事でさらに混ぜます。この状態から覚えたカードが当てられたらそれだけでミラクルですが、紙袋から取り出されるのは、一枚のカードではなく一つのレモンです。テーブル・ナイフを使ってレモンを2つに切ると中から現れたのは、観客が覚えたカードです。

このDVDは一般向けに市販されているものですが、なんとこのトリックを全て解説してしまいます。基本的なカードのテクニックとともに、ギミックの作り方から演じ方まで細かく丁寧にレクチャーがなされています。作品自体がテレビやステージで演じるものよりも簡単な構成になっているため、そのトリックもより原始的ではありますが、一般的には充分な完成度であると言えます。素晴らしいレクチャーです。あえて一つ欠点を指摘するなら、「タネを明かすとお客様をガッカリさせることもある」という最後のメッセージくらいでしょうか。このメッセージ自体は大切な事なのですが、全てを解説した後に言われても手遅れな気が(苦笑) (2007.09.15)

Card in Lemon

スタンドアップ・カードマジック
p.213

パーラーで演じるタイプの手順が解説されています。著者自身が長年演じてきたなかで、少しずつブラッシュアップされて完成した手順です。箇条書きでの事典的な解説ではなく、実践的なポイントが散りばめられた実用的な解説です。レモンの中にカードを仕込むやり方についても、実用的なコツが丁寧に解説されています。

準備だけで3ページ強にわたって、イラストや写真を10枚使用しています。手順の解説は8ページほどにわたって、17枚の写真を添えて詳しく解説されています。立って演じる前提ですので、体の向きをどの程度変えるのかといった微妙なところや、視線をどこに持っていくのかという点などにも着目しているのが非常に実用的です。それらの解説に、著者自身を撮影した写真を添えることで非常にわかりやすく仕上がっています。また、最後に2ページの覚書きがあり、そこでは手順解説では語りきれなかった背景について、長年演じてきた著者の考えが書かれています。(2023.10.15)