Card On The Ceiling
観客が選んだカードが一組のデックの中に戻され、マジシャンはそこから選ばれたカードを取出す。この系統のマジックは数限りなく発表されていますが、面白い現象に見えるように手順が複雑化したり、不可能性を強調するために説明的な要素が強くなってしまったりしがちで、意外と観客へ強くアピールできる作品は少なかったりします。しかし Card on The Seiling は、シンプルな現象でありながら世界中の観客を驚かせてきました。古典中の古典で、なかなかお目にかかることも少ないですが、たまに演じられると、その反応はいつでも素晴らしいものです。
観客のカードをデックに戻した後、デックを輪ゴムで十文字に固定します。この状態ではテクニックを駆使する事もできず、マジシャンにできる事は大幅に限られてしまいます。この状態から1枚のカードを取出すマジシャンの発想はずば抜けています。おもむろに天井に投げ上げるのです。天井にぶつかったデックの塊は、当然そのまま落ちてくるだけですが、なぜかたった1枚、観客のカードだけは天井に張り付いているのです。落ちてきたデックにはもちろん輪ゴムがしっかりとかかっています。
マジシャンの中には、この作品を演じる事によって名を馳せた人が多くいます。作品のインパクトも然ることながら、天井に残ったカードはいつまでもそこにあり、マジシャンがその場を去った後もその伝説が語られていくからです。天井の1枚のカードが、その劇場の呼び物のひとつになる事さえありました。原案もハッキリしないほど古くからある作品で、歴代のマジシャン達の広告役を務めてきた作品です。
カード・オン・ザ・シーリング
〜 Card on The Seiling 〜
カードマジック入門事典
p.66
この本で紹介されている作品は、昔ながらの方法と言えそうです。一箇所すり替えが発生しますが、その解決方法が今の時代にはそぐわないと感じる人も多いでしょう。すり替え自体をしなくて済む方法がいくらでもありますので、現在ならその中から自分にあった解決策を取る人が多いと思います。スマートとは言えない解決方法ですが、マジシャンとしてのこだわりよりも観客の目に映る現象の方に意識が向いているからこその大胆な発想です。(2013.04.21)
新しい「天井に貼り付くカード」
〜 The Self-Contained Card on Ceiling 〜
ジェイミー・イアン・スイスのクロースアップ・マジック
p.123
ジェイミー・イアン・スイスがバーマジシャンをしていた頃、同じバーで働いていたJ.C.ワーグナーやスコッティー・ヨークらと共によく演じていた作品が、この Card on The Ceiling です。観客のカードだけが天井に貼り付くというシンプルな現象ではありますが、本当に1枚のカードが貼り付くだけにするべきか、画鋲と一緒に投げ上げて1枚のカードが画鋲で天井に留められるようにするべきか、そんな違いについてもじっくりと考察されています。また彼らは、カードだけではなく観客からもらったチップも一緒に貼り付けることで、バーの天井に一種異様な光景を作りだしてもいたようです。そんなジェイミー・イアン・スイスと Card on The Ceiling にまつわる話が、5ページほど語られた後、種の準備に関する工夫が3ページほど、演じる手順についての解説が1ページ程のボリュームで解説されています。
さらに、この作品を演じやすくするために、1本のペンを使ったアイディアが5ページほど解説されています。そのペンの仕組みについての解説だけでなく、使い方についてのジェイミー・イアン・スイス、ジェフリー・ラター、ピーター・サミュエルソンによる3種類のハンドリングが解説されています。(2013.04.28)
CARD ON THE CEILING
〜 天井にはりつくカード 〜
ターベルコース・イン・マジック 第3巻
p.229
わずか7行の演技解説。準備の説明やアドバイスを含めても1ページにも満たない解説ですが、この作品の最小限の原理を端的に表現しています。デック一組だけで、輪ゴムも使わないシンプルな手順です。(2013.05.04)
IMPROVED CARD ON THE CEILING
〜 天井にはりつくカード・改良版 〜
ターベルコース・イン・マジック 第3巻
p.230
ジェイムス・ハービックとジャック・シンブルニーによって考案された作品。観客が選んだカードをデックの下半分のどこかに戻してもらい、そのまま下半分を観客に渡してしまいます。さらに輪ゴムを一本渡して観客の手で輪ゴムをかけてもらいます。輪ゴムのかかったデックを返してもらったら、それを天井に投げ上げます。
観客が輪ゴムをかける事で、不可能性の強い作品になっています。(2013.05.04)