Cards In A Sealed Envelope
4枚のエースに観客がサインをするところから始まります。サインされたカードはデックの中に裏向きに戻されます。マジシャンはデック全体を表向きにしてテーブル上にリボンスプレッドします。先ほどの4枚のAは裏向きに見えている状態です。
デックをテーブルに広げたまま、マジシャンは上着のポケットから封筒の束を取り出します。封の開いた手紙がいくつかある中に、しっかりと封がされたままの封筒がひとつ紛れています。封がされている箇所は糊も乾いていて、随分前から糊付けされていた事が確認できます。
そんな封筒を破くと中から4枚のAが出てきます。もちろん観客のサインつきです。テーブル上に広げてあったデックには裏向きに4枚のカードが見えますが、それらはいつの間にかまったく別のカードになっています。
Card in a Sealed Envelope
カード・マジック事典
p.297
ポール・ルポールの手順を簡潔過ぎるほど簡潔にまとめてあります。297ページの後半から298ページの前半までしか解説がありませんので、実質1ページ分です。必要最小限の解説ですが、ポール・ルポールの原案の手順をきちんと網羅しています。説明の短さはイラストの親切さで、うまく賄われています。キーポイントになるテクニック「ダイアゴナル・レフト・ハンド・パーム」も同書の「技法編」に解説があります。
現在では上着の内ポケットから手紙の束を取り出すこと自体に違和感を感じてしまいますが、この不可能設定はとても魅力的です。演出次第で現在でも一級の驚きを生み出せることは間違いありません。カード・イン・レモンも同様の効果がありますが、こちらの方が終わりが上品ですし、手が汚れないため直ぐに次の作品に続けることができます。(2008.12.21)
カードと封筒
ルポールのカードマジック
p.173
ルポール氏自身による解説です。この解説を簡潔にまとめたのがカード・マジック事典での解説だと思われます。4ページに渡って9枚のイラストを添えてしっかりと解説されています。写真ではわかりやすさを追求して大げさな破り方をしているため、返って勘違いを起こしそうな気もしますが、全体的に親切な解説です。
ルポール氏が20年以上も得意芸としてきた作品だけに、本の一番最後に、自信を持って解説しています。途中で使用する「ダイアゴナル・レフト・ハンド・パーム」についても、この本の中でしっかりと解説されています。(2008.12.28)
On the LePaul Envelope Set
ロベルト・ジョビーのカード・カレッジ5
p.318
現在では、手紙の束を上着から取り出す不自然さを払拭するためか、それとも単に便利な道具を持っているからなのか、財布の中の小さな封筒からカードが出てくるという演出が多いようです。しかし、財布から封筒から出てくる不自然さについては、あまり考慮されていないようです。その辺りを意識して、また原点に戻って、ロベルト・ジョビーが対策を考えたのが、この封筒のセットです。封筒の束のみで巧みにギミックを仕込んであり、心理的誘導で観客が勝手にギミックの存在を否定してしまうような、実用的な対策です。経験豊富なマジシャンによる、しっかりと考え抜かれたセットです。
この本では手順の詳細には触れていませんが、全体的な構成とギミックの作り方については念入りに解説されています。また、心理的な誘導を狙ったセリフ回しや細かなハンドリングにも言及されており、本質的な部分に注力されています。(2019.01.14)