garamanのマジック研究室

Degrees Of Freedom

まずデックの中から全てのハイ・カード、つまり全てのマークの10・J・Q・K・Aを抜き出します。合計20枚のカードを良く混ぜ、さらに裏表もごちゃごちゃにしてしまいます。この裏表をごちゃ混ぜにする操作は観客の指示によるという徹底ぶりです。良く混ざったカードは、テーブルに5枚X4列に配ります。配り終わった状態は、もちろん表裏バラバラです。

ココから先はマジシャンは一切手を触れません。5X4に並んだカードを1枚の大きな紙に見立てて、観客に折りたたんでもらいます。カードとカードの境いを折り目にすれば、どこから折っても構いません。20枚のカードが1つの山になるまで、折りたたんでもらいます。畳まれたカードをスプレッドすると、あらかじめ観客に聞いておいた好きなマークのロイヤルフラッシュだけが表向きで、残りの15枚は裏向きになっています。

Degrees Of Freedom

ジョン・バノン カードマジック
p.118

原案者も良く分からないほど古くからある原理です。セルフワーキングと言っても差し支えないものですが、数理的なトリックに頼っている印象がうまく隠蔽されています。また、この手の作品は自分でやってみれば不思議に感じられるものの、その長い手順を延々見せられるだけの観客にはつまらないものになりがちですが、観客に決定権を持たせる場面を多くする事で、その問題もうまく回避しています。

9ページに及ぶ詳細な解説は、セルフワーキングとしては長すぎるほどですが、「観客の目にどう映るのか」「観客の記憶には何が残るのか」といった所にまで踏み込んだ素晴らしい解説です。9ページの解説後には、さらにプレゼンテーションについてのアイディアが2ページ。作品開発の背景やクレジットに関する記述が3ページ。100%セルフワーキングで行うバージョンの解説が1ページ。数理的な原理を壊さずに、どんなアクションができるのかについての考察が1ページ。サイモン・アロンソンのちょっとしたアイディアが半ページ。と、お腹いっぱいのボリュームです。

解説にはありませんが「もう一度」とお願いされたときに、違うマークのロイヤルフラッシュを出したり、フォー・エースを出すこともできるため、繰り返しても効果を損なわない珍しいセルフワーキングでもあります。(2013.12.01)

Origami Poker

ジョン・バノン カードマジック
p.134

"Degrees Of Freedom" を、より少ない枚数でスピーディーな現象に仕上げた作品です。見た目の現象を簡潔に書くと、シャッフルしたデックから16枚のカードを取り出し、さらに乱雑に混ぜ、テーブルに4X4の配列に並べます。観客の指定したところで折り畳んでいき1つのパケットにまとめます。最後にリボンスプレッドするとロイヤルフラッシュが表向きに現れます。

途中のフォールス・シャッフルが実に狡猾です。この技法は他の作品でも使われていますが、この作品で使う事に特別な意味があります。良く混ざったように見せかける多くのフォールス・シャッフルは、相手への錯覚を生み出しはするものの、マジシャン自身は錯覚に陥る事はありません。しかし、この作品で使われたときのこの技法は、マジシャン自身が錯覚に陥りかねない程の効果があります。

ジョン・バノンは、余計な操作はせずにすぐに折りたたみフェイズに移行する、と書いていますが、それでもこのシャッフルだけは外すには惜しい、と言葉を添えて解説しています。(2014.06.22)

Origami Poker Rivisited

ジョン・バノン カードトリック
p.46

2009年に、レクチャーノート "Six. Impossible. Things." で発表された手順の解説です。Origami Poker から、手順はさらに簡単になり、見た目にもシンプルで強力な現象になりました。よく混ざった12枚のカードを見せて、さらによくシャッフルし、裏表もバラバラにしてさらにシャッフルし、観客に渡してさらにシャッフルしてもらいます。あとは、タテヨコ3x4になるようにテーブルに並べるだけです。観客に指定されたところから折りたたむだけで、最終的にはロイヤルストレートフラッシュの5枚だけが表向きになります。この改案を知ってしまうと、Origami Poker の手順でさえ複雑に見えてしまいます。

また、ノーマルデックから取り出した数枚のカードで演じられる即席性は変わっていませんので、よくシャッフルされたデックから必要なカードを取り出して演じるという、Origami Poker と同じような始め方もできるのですが、あえて初めからパケットトリックとして扱うように変わりました。ただし、解説を2ページに簡潔にまとめたためか、パケットトリックとしてまとめた意図までは語られず、その解説は以降のレクチャーノートを待つことになります。(2019.06.09)

Origami Poker Rivisited

ジョン・バノン カードトリック
p.267

2012年に、レクチャーノート "All In" で発表された手順の解説です。"Six. Impossible. Things." で発表された手順と全く同じですが、見せ方はさらに洗練されました。ここではよりパケット・トリックの色を強める演出を取り入れ、他の作品とは一線を画する印象を与えることに成功しています。それこそが、この作品をパケット・トリックに仕立てた理由のひとつであることも、しっかりと語られます。理由は4つ挙げられてますが、どれもノン・マジシャンな観客にとっては意味のあるものです。言い換えるとマジシャンが忘れがちなポイントを押さえているとも言えます。

10ページに渡って、7枚の写真を添えて詳しく解説されています。手順だけでなく、観客とのやりとり・セリフも交えて解説されているのが特徴です。普段自分の作品を過度に宣伝することのないジョン・バノンが、この作品については「あらゆる面から見て、これはおそらく地球上でもっとも優れたセルフワーキング・トリックだ」と評している程の自信作です。(2019.06.09)