Derby
4枚のAを馬に見立てて、競馬レースを模したゲームをする、というスタイルで始まります。まず、3人の観客に好きなAを選んでもらい、残ったAをマジシャンのカードとします(マジシャンに選択権はありません)。4枚のAをテーブルに横一列に並べ、残りのデックは充分にシャッフルした状態でテーブルに裏向きに置いておきます。ここから4人のレースが始まります。(何か賭けると、グッと盛り上がります)
ルールはこうです。裏向きに置いておいたデックを、トップから順番に一枚ずつめくっていきます。そのカードのマークがスペードなら、スペードのAを一馬身(カード一枚分)進めます。これを繰り返し、六馬身分先にあるゴールに早くたどり着いた人が勝ちです。
とは言っても、マジックですから選択権が無いはずのマジシャンの馬が必ず一着でゴールしてしまいます。
競馬ゲーム(The Horse Race)
セルフワーキング・マジック事典
p.131
トニー・コイニーニ原案の「Derby」を、ニック・トロストが改案したものです。
完全に自由選択で3枚のAを選んでもらい、残ったAがマジシャンのマークになりますから、マジシャンには選択の自由は無いはずですが、なぜか必ずマジシャンの馬が一着でゴールします。その後もう一度やろうと誘い、今度は4枚のAからマジシャンのカードを観客が選びます。残ったAではなく、4枚のAのどれをマジシャンの馬にするかを相談して決めて良いということです。この条件でゲームを始めても、やっぱりマジシャンの馬が一着でゴールします。
この必勝原理はトニー・コイニーニのアイディアですが、2段構成にしたのが恐らくニック・トロストの改案のポイントだと思います。
※ 原案の手順を正確には把握していないので詳細は不明ですが。
事前の準備は判りやすく、難しいテクニックも不要です。ただし、途中2人の観客にデックをシャッフルしてもらうためにデックを半分に分ける部分が一瞬ぎこちなくなりそうな気もします。簡単なテクニックでカバーするのが賢明かもしれません。(2006.12.03)
カードのダービー
あそびの冒険 全5巻
「3 ギャンブルのトリック」p.166
トニー・コイニーニ原案の「Derby」を、ニック・トロストが改案したものです。
トニー・コイニーニの原案の手順、ニック・トロストの改案、ジョン・フィッシャーの改案、の3つを熟知した松田道弘氏の新たな改案です。ポイントは事前準備の煩わしさを極力省いた事だそうです。4頭の馬を表す4種類のカードをAにこだわらない事で、随分簡単にできるようになっています。また、ニック・トロストのような2段構成にはせず、1段で終了してしまう潔い切り口の作品です。テクニックは一切要りません。
松田氏の解説によると、原案では「絵札が出た場合は、二馬身進める」というルールがあったそうです。実現方法はともかく、マジシャンが常に勝ってしまうことへの不可能性が更に高まるので、面白いルールです。(2006.12.03)
ゼン・ダービー
card magic design
p.64
佐藤総氏の改案です。佐藤氏は、他のメジャーなカードトリックと比べて、このテーマにはあまり人気がないとして、その理由を分析しています。そもそも演者が勝つ確率は何もしなくても1/4あるわけで、一回の演技で演者が勝っても、効果は薄いというのです。その通りだと思います。演者はいろいろなところで何度も演じるので「勝ち続ける」という現象のように思いがちですが、観客は通常一回しか見ませんので、観客の目には「1/4の確率に当たった」という現象になってしまいます。佐藤氏は、この現象の弱さを補うべく、4人の順位を予言するという現象に仕上げています。また、原理の都合上、必ずデッドヒートになるのも特徴のひとつです。競馬の雰囲気をできるだけ盛り上げながら実演したい、面白い作品になっています。
原理の中では「玉砕スタッキング」という佐藤氏独自のアイディアを有効活用しています。名前の通りスタックしているわけですが、観客に何度もシャッフルさせた結果がスタック済みの状態であるという優れたアイディアです。(2015.04.05)