garamanのマジック研究室

Homing Card

あなたがサインした1枚のカードを1組のデックの中に戻します。右手には何も持っていないことを良く見せたマジシャンは、事前に何も入っていない事を確認してあるズボンのポケットから、一枚のカードを取り出します。取り出したカードの表を見ると、紛れもなくあなたがサインしてデックに戻したはずのカードです。マジシャンのポケットが自分の家であるかのように、カードは必ず帰ってくるのです。もう一度デックの中にカードを戻し、今度はあなたの手の上にデックを乗せます。それでもまたマジシャンのポケットから一枚のカードが出てきます。それはやはり、あなたがサインしたカードです。

フランシス・カーライルの代表作です。


FRANCIS CARLYLE'S "HOMING CARD"

STARS OF MAGIC (日本語版)
p.69

フランシス・カーライルによる手順です。サインされたカードが、マジシャンのズボンのポケットから出てくるという現象の繰り返しです。ポケットの使い方や、デックに戻す時のカードの確認の仕方など、細かなところまで工夫が行き届いています。

ただし、この本の全体を通して言えることですが、基本的な技法はマスターしている事が前提です。手順自体に難しさはありませんが、ミスディレクションの扱いに長けていないと、簡単に失敗します(苦笑)。逆に人前で緊張しないタイプの人や舞台慣れしている人にとっては、手の届く範囲で魅力的なマジックと言っても良いかもしれません。(2006.07.01)

ホーミング・カード・プラス

ロベルト・ジョビーのカード・カレッジ2
p.40

ジョビーの解説によると、フランシス・カーライルとジミーグリッポの古典的な傑作である「ホーミング・カード」の改良版との事です。ジミー・グリッポがこの作品にどう関わっているのかは、残念ながら判りません。。。またジョビーは、初心者向けのトリックの中で最も効果的な作品のひとつである、と言います。高度なカード技術を用いないという意味では確かに初心者向けです。ただ、本当に初心者がこの作品から覚え始めるというのは無謀な気がします。技術以外の難しさが付いて回ります。

手順の流れは、カーライルの手順と同じように2度繰り返してカードの移動を演じた後に、もう一つの現象が付け加えてあります。1枚のカードをポケットに移すはずが、間違って残りの51枚が全て移動してしまうという強烈な現象です。ただ、この最後の付け足しの影響で、やはり初心者向けでは無くなっていると言えます。初心者向けかどうかは別として、解説は極めて親切です。時間を掛けてマスターする気があれば、この本でじっくりと勉強する事をお勧めします。(2006.07.01)

ポケットへ通うカード1
Homing Card

カードマジック事典
p.289

高木重朗氏による、カーライルの手順解説です。たったの2ページ、イラスト2枚ではありますが、簡潔にして明瞭な解説です。必要最低限の解説のみに留めてありますので、記録としては秀逸です。言い換えれば、この解説だけでマスターするのは大変だという事です。他の本やDVD等を併せて活用する事をお勧めします。(2006.07.01)

フランシス・カーライルのホーミング・カードを考える

カードマジック THE WAY OF THINKING
p.109

松田氏の造語に SICK というのがあります。Simplicity, Improvement, Clear, Knockout のそれぞれの頭文字を取ったもので、傑作と言われる作品には、これらの要素が必ずいくつか入っているものだと分析しています。その松田氏の目から見て、ホーミング・カードは SICK の全ての要素を備えている非常にレアなケースだとして解説されています。

9ページにも及ぶ記述で、SICK の要件をいかに満たしているか、カーライルとはどんな人物だったのか、作品の歴史的な背景、松田氏自身のホーミング・カードとの出会い、などについて細かく書かれています。また、「トランプの不思議」や「カードマジック事典」に記載されている高木重朗氏の解説が日本に広まっていますが、そもそも「Stars of Magic」に解説されているカーライルの手順とは、若干相違があるとして、細かな指摘をしています。

なお、作品番号が付与されていますが、松田氏が何らかの改案を発表しているわけではありませんし、原案の手順が全て解説されているわけでもありません。(2011.07.01)

裸が最高の変装だ

カードマジック THE WAY OF THINKING
p.118

原作者であるフランシス・カーライル自身の改案について、松田道弘氏が手順を解説しています。これにも作品番号が振られていますが、松田氏の作品ではなく、フランシス・カーライル自身の改案作品です。1975年の "Magic of Fransys Carlyle" に、[The New, Revised version of The "Homing Card"] というタイトルで発表された作品です。松田氏は、この改案手順よりも原案の方が優れていると考えていらっしゃるようですが、私(garaman)としては相手に合わせて使い分ければ良いだけの話で、どちらかに優劣をつける必要もないと感じます。原案と比較してどちらかが優れているかはともかく、松田氏も仰るように、作者の好みがどのように作品に反映されているかを知る事は面白いですし、原案者本人が改案したという、その狙いを推し量るのは勉強になります。

4ページ強のボリュームで改案手順の解説は3ページほど。イラストは一切ありませんが、難しい記述はありませんので理解に支障はないでしょう。原案を知らなくても理解できるように書かれています。傾向としては、改めを増やして説得力を向上させる事を意識したような作品です。(松田氏はこれが余計だと指摘しています)(2011.07.09)

ホーミング カード

<復刻版> トランプの不思議
p.116

高木重朗氏による、カーライルの手順解説です。「カードマジック事典」でも高木氏が解説されていますが、若干違いが見られます。途中で観客の推理を誤った方向に誘導するべく、わざと怪しげなムーブを取り入れています。それ以外は一緒と言って良いと思います。こういったわざとらしい演出を入れると印象が悪くなることもありますので、個人的にはあまりお勧めしませんが、パズル的な見方をする観客が相手の時には、効果的かもしれません。

7ページほどの解説で12枚のイラストが添えられていますので、「カードマジック事典」よりもずっと習得しやすい解説になっています。(2012.01.08)

ホーミング・カード

カードマジック大事典
p.239

1ページ程度のボリュームで写真も1枚だけですが、フランシス・カーライルの手順を過不足なく解説されています。非常にわかりやすい解説ですが、これは著者の解説力もさることながら、カーライルの作品自体が解説しやすいとも言えます。難しい技法も必要なく、現象もわかりやすく、解説しやすい作品であることが、多くのマジシャンに演じられている理由なのかもしれません。

フランシス・カーライルの手順を覚えたければベストの解説だと思います。(2023.04.16)