McDonald's Aces
4枚のAをテーブルに1枚ずつ表向きに並べます。それぞれのAの上に3枚ずつ別のカードを乗せます。4つのパイルには1枚ずつのAが含まれている状況です。ひとつ目のパケットからAは消え去り、ふたつ目、みっつ目のパケットからもAが消えてしまいます。最後のパケットを確認すると4枚ともAになっています。
アメリカのマジシャン(であり同時にコンマンでもある)John W. "Mac" McDonald という右手の手首から先のない人物が得意としていた作品です。彼はこの作品をとても大事にしており、どうしても教えて欲しいという人からは$100の伝授料を取ったという伝説があります。多くのマジシャンがこの作品に影響を受けて改案を発表しています。DF(ダブル・フェイス)カードを使うのがその大きな特徴です。
ダイ・バーノンが [McDonald's $100 Routine] として発表したことをきっかけに、その話題性も相まってマクドナルドが原案者と思われがちですが、実際にはヨハン・ネポムク・ホフジンサーが1857年には演じていたという記録があるようです。従来からある作品に対して、片手しか使えないマクドナルドがより不可能性の高い改案を生み出した、というところでしょうか。
THE FOUR ACE TRICK (Fourth Method)
THE ART OF MAGIC
p.217
THE ART OF MAGIC に紹介された4つ目の方法です。
表向きに4枚のAをテーブルに並べます。それぞれの上に3枚ずつの無関係なカードを重ねて、4枚ずつのパイルを4つ作ります。もちろん、それぞれのパイルの一番下にはAがあります。改めてパイルをひとつずつ拾い上げて、4枚のカードの内、一番下のカードがAであることを見せます。4つのパイルをすべて確認したあと、観客にどれかひとつのパイルを選んでもらいます。選ばれなかった3つのパイルは残りのデックと一緒にして観客に預けます。観客が持っているデックの中にはAが3枚残っているはずですが、それとテーブル上に残ったパイルの3枚の無関係なカードを入れ替えるジェスチャーをします。確認すると実際にテーブル上のパイルは4枚のAになっており、観客が持っているデックからはAが消えています。
現象がダイレクトである反面、ギャフカードを使い、準備も必要で、同じ技法を何度も繰り返して使用するという、気になる点がいくつかある作品です。(2021.05.22)
マクドナルドの100ドルの手順
トリック・カード事典
p.158
McDonadld's Aces について、発表された経緯やそのバリエーションを発表したマジシャンたちの名前を紹介するとともに、そのアウトラインが簡潔に解説されています。
3枚ずつのパケットをよっつ作ってそれらを裏表交互に重ねて持つという、一見意味のない動作がありますが、これが効果的に作用して、はっきりと見えているAが1枚ずつ移動するというインパクトのある作品になっています。マジシャン目線では、前半の動作に狡猾な意味があるため、クレバーなアイディア+インパクトのある現象、というように映ることでしょう。ただし、一般の方から見れば、なぜそんな手順を踏むのかはわからないものの、最後にはインパクトのある現象が起こるというように映るのではないでしょうか。観客目線の不自然さを解決することが改案のひとつのポイントになるかと思います。
マクドナルドが左手一本で演じるというところもこの作品の大きな特徴です。最後に各パケットからAが消えていくのを見せる時も、左手一本で演じる「スロー・ディール」という技法が解説されています。 実質2ページほどの簡潔な文章ですが分かりやすい解説です。(2021.06.27)
マクドナルドの100ドル・ルーティン
カードマジック大事典
p.419
1960年の [More Inner Secrets of Card magic] に発表された手順が解説されています。
Aの上に3枚の他のカードを重ねて4枚のパケットを作り、それがテーブルの上に4パケット並んでいるところを見せるまでは、マクドナルドの実際の手順と同じです。最後に各パケットからAが消えていく様子を見せる部分にはバーノンの工夫が見られます。一瞬説明文が間違えているのではないかと感じるほどですが、実際に手を動かしてみると、自分で演じていても不思議に感じるほどAが消えます。
興味深いのはマクドナルドの手順と謳っておきながら、最後のAが消えていく部分を両手で演じているところです。マクドナルドの手順をリスペクトしながらも、バーノンの改良が加えられた結果でしょう。むしろこの改案こそが、多くのマジシャンたちに受け入れられたポイントなのかもしれません。(2021.07.04)
ダブル・フェイス・エースの錬金術
松田道弘のカードマジック 改訂新版
p.75
解説方法自体が独特です。マクドナルドの作品を「Aの上に3枚の無関係なカードが載ったパケットを4組作って並べる部分」と、「それぞれのパケットからAが消失する部分」の2つに分けて解説されています。
前半部分については、「マクドナルドの100ドルの手順」での方法を解説した後、「私案DFカードの導入」と題して松田氏自身の改案が解説されています。こちらは、オリジナル手順に見られる、特に理由もなくパケットを裏表交互に重ねるという部分を省略しようとした試みです。
後半部分については、「マクドナルドの方法」「バーノンの改良法」「石田天海氏の方法」「森下宗彦氏の方法」「エルムズリー・カウントを使った消去法」という5パターンが解説されています。(2021.07.11)
森下宗彦氏のフォア・エース・ルーティン
松田道弘のカードマジック 改訂新版
p.88
森下宗彦氏の作品に影響を受けて、松田道弘氏が工夫を加えた作品のようです。
まず、4枚のAを表向きにTフォーメーションに並べるところから始まります。それぞれのAの上に3枚ずつの無関係なカードを乗せたら、各パケットに含まれるAを一枚ずつ消していきます。マスターパケットを確認すると4枚のAになっているという現象です。通常ならここで終了ですが、この作品ではもう一度繰り返されるのが特徴です。実は1度目の手順の中でAを一枚ずつ消していく手順に工夫が凝らされており、2度目の手順への準備がシステマチックに組み上げられていきます。この工夫により2度目の方が公明正大に行えます。
良質な推理小説を読むような爽快感があります。やってみたくなる作品ではありますが、一般の方にとっては1度目も2度目も同じ現象ですので、演じる際には注意が必要かと思います。(2021.07.25)
チーク・トゥ・チーク・マクドナルド
魅惑のトリックカード・マジック
p.176
松田道弘氏の作品です。U.F.グラントが発表した「チーク・トゥ・チーク」というトライアンフ作品を参考にしつつ、この現象をマクドナルド手順に組み込むことに挑戦しました。
チーク・トゥ・チークという作品にみられる圧倒的なスピードを、McDonald's Aces のスピードアップのために活用しようと試みたもので、現象はシンプルです。4枚のAを表向きにテーブルに並べ、それぞれの上に3枚ずつ別のカードを重ねます。スペードのパケットを除いて、残りの3つのパケットを裏表バラバラに混ぜ合わせますが、すぐにスプレッドすると12枚全てが無関係なカードになっています。スペードのパケットを確認すると4枚のAになっています。
全てのカードの裏表を確認したような錯覚を与えることに拘ったことで、残念ながらスピードアップした分は相殺されてしまいましたが、その分、演技終了時点でもう一度初めから繰り返せるように準備が完成しているというパズル的な工夫が施されている点は特筆に値します。(2021.08.01)
マクドナルドの最終オーダー
魅惑のトリックカード・マジック
p.187
松田道弘氏の作品です。そもそもダブルフェイス・カードを使うのがマクドナルド手順の大きな特徴ですが、さらにフェイク・ディバイデッド・エースを使い、よりスピード感を増した作品です。
これだけのギャフカードを使うと、一体どれだけの工夫を凝らせるのでしょう。ありえないほどのクリーンさ、手順全体のスピードアップは比較的簡単に実現できるでしょう。この作品ではさらに、違う見せ方で繰り返して演じることを可能にし、演技終了後には手順の最初の状態に自然に戻っているというおまけ付きです。
著者自身が「かなりの出来栄えだと自負しています」と前置きしているだけあって、ギャフカードを使うことに抵抗がない方には効果抜群な作品だと思います。(2021.08.09)
マクドナルドのニューメニュー
現代カードマジックのテクニック
p.120
松田道弘氏の作品です。「マクドナルド・エーセスは観客から見ると消失現象だが、マジシャンの視点ではリバース問題である」と看破し、悟られずにリバースすることを目的にして作り上げた作品です。最後のバニッシュ・フェイズでは3回とも違う見せ方でエースを消しています。
2003年のこの本で発表された時点では、著者は「全てのカードの表裏を見せたい」という強い熱意を持っており、その意向が反映されています。また、演技終了時点で初めの状態に戻す(つまり続けて作品を演じられる状態にする)ための工夫を凝らしているのも、この作品の特徴です。(2021.08.15)
マクドナルドのリピーター
松田道弘のシックなカードマジック
p.100
松田道弘氏の作品です。2段構成の作品です。第1段ではダブルフェイス・カードを活用せずにフォー・エース現象を実現し、第2段では潜ませていたダブルフェイス・カードを活用してマクドナルド現象を実現します。
第1段で現象が完成しているのでそこで止めても良さそうなものですが、そこはマニアックな著者のこと、あえて潜ませていたカードを使ってマクドナルド現象を起こすという意図を持って作られた手順です。自分で手順を考えるタイプの人なら、こういったアプローチには刺激をうけることでしょう。また、この作品ではスピードを重視するために、エースを1枚ずつ含んだ3つのパケットを重ねて、表向きにしてリボンスプレッドすることで、エースの消失を一瞬で見せています。しかし、3つのパケットから1枚ずつ消していくという方法にも魅力があり、それぞれを別々の方法で消すというマニアックな趣向にも興味を示す著者は、おまけとして3種類の独自な消し方を紹介しています。(2021.08.22)
リピータブル・マクドナルドのたくらみ
カードマジック THE WAY OF THINKING
p.147
松田道弘氏の作品です。2段構成のルーティーンになっています。第1段ではパケットから1枚のカードを選んでもらい(仮にスペードのエースとします)、観客に覚えてもらったら、その1枚だけ裏向きにしてパケットに戻します。表向きのパケットの中に観客が覚えたカードだけが裏向きになっています。しかし、全体をひっくり返しリボンスプレッドすると、4枚のエースが表向きになっています。第2段は通常のマクドナルド現象で、第3段ではもう一度同じマクドナルド現象を(違う原理で)見せます。
3段構成ですが非常にスピーディーに展開できますので、観客の負担も少ないと思います。さらにセットアップもとてもシンプルで覚えやすい上に、演技の最後にはパケットが元の状態にリセットされているので、テーブルを移動してもう一度同じ手順を披露するようなシチュエーションでは重宝します。(2021.08.28)