Point Of Departure
あなたが選んだカードを、2枚のジョーカーの間に挟んでテーブルに置きます。それ以外のカードは使いません。2枚のジョーカーの間に確かにあなたのカードが挟まっている事を確認した次の瞬間、あなたのカードだけが消えてなくなります。
消えたカードはマジシャンのポケットの中から現れます。
Point of departure の混線
松田道弘のカードマジック
p.189
原案はアレックス・エルムズレイ。観客の選んだカードが特定の2枚に挟まっているというサンドイッチ現象のまったく逆の現象です。2枚のジョーカーに挟まっているカードが一瞬で消えます。この基本的な原理はそのままに、松田氏の改案では準備が簡単になっています。また、ハンドリングにもたつくような要素もありませんので、テクニックに自信がない方でも実演可能です。原案では消えたカード(観客が選んだカード)をマジシャンのポケットから出していますが、松田氏の改案では、残りのデックを裏向きにリボンスプレッドすると、真ん中あたりに表向きに現れるという演出になっています。
5ページほどの間に15枚ものイラストを添えていますので、解説自体の難易度としても初心者向きです。松田氏の作品解説の後には、さらに1ページ、アレックス・エルムズレイの原案の手順についても簡単に解説されています。(2012.05.05)
スマグ デパーチャー
〜 Smag Departure 〜
カードマジック入門事典
p.196
エドワード・マルローの改案です。原案の現象を損なわずに、より簡単な手順になっています。この本の解説ではハートとダイヤのクイーンを使用しています。2枚のクイーン間に観客が選んだカードを挟むまでの手順が、やや不自然に感じます。テーブル上のカードを取り上げるとき、そのカードの下にあるパケットも一緒に取り上げてきて、そのカード以外はテーブルに戻す、という動作を3回も続けるという動きを、一般の方はどう感じるのでしょうか?聞いてみたいところです。もし違和感を感じないようであれば、絶妙なハンドリングです。逆にここに違和感を感じられてしまうと、トリックアウトに繋がる可能性がグッと高まります。
この作品では「ブロークンナップ・ビドル」という技法が使われていますが、これは汎用性の高いテクニックだと思います。4枚のイラストを添えた、4ページの解説です。技法自体が簡単ですので、解説も非常に分かりやすいです。(2012.05.13)
消失点
〜 Point of Departure 〜
カードマジック大事典
p.434
原案者のアレックス・エルムズレイ自身による改案です。原案にあたる Point of Departure は当初ギャフカードを使ったものでした。その後 1959年にエルムズレイ本人がレギュラーカードで演じられるように改案し、Economy Class Departure として発表しました。今ではこちらの改案の方が Point of Departure という名前で呼ばれています。
ジョーカー2枚をテーブルに置きます。デックを表向きに見せながら観客に1枚のカードを選んでもらいます。観客が選んだカードを裏向きにして、表向きの2枚のジョーカーの間に挟みます。この3枚の状態をよく見せた後、まとめて両手で挟みます。両手でカードを揉むようにしてからパッと手を開くと、落ちてくるのはなぜか2枚のジョーカーだけ。直前に確かに挟まっていた相手のカードが消えています。テーブルに残されたデックをスプレッドすると、そこから消えたカードが現れます。
さほど難しい技法を使わずに、ノーマルデックでこの現象を起こせるのはさすがです。(2024.06.08)
Economy Class Departure
The Magic Of Alex Elmsley 1
演技:Title1 / Chapter24
解説:Title1 / Chapter25
アレックス・エルムズレイ本人が改案した作品で、今日ではこちらの作品が Point of Departure として認識されています。そして、その作品を本人が実演・解説しています。2枚のジョーカーをテーブルに置くまでの自然な挙動、観客に1枚のカードを選んでもらうときのクリーンな印象、消えたカードが観客の手の中のデックから現れるという構成。全体を通して洗練された作品でありながら、これを難しい技法なしで実現できます。観客の目から見てわかりやすい現象でもあり、傑作という言葉がふさわしい作品です。
ちょっとした細かなムーブを挟む事で、観客の認知を自然にミスリードする傑作です。難しい技法が不要な分、目線の配り方や会話の間の開け方に意識を向けると、本人の演技から多くのことを学べます。(2024.06.16)