garamanのマジック研究室

Visitor

マジシャンは、4枚のクイーンを取りだして赤2枚・黒2枚のペアに分けて、テーブルに置きます。あなたは残りのデックから1枚、好きなカードを選んで覚えます。マジシャンはあなたが選んだカードを2枚の黒いクイーンの間に挟みます。あなたが選んだカードはたしかに黒いクイーンの間に挟んだのに、いつの間にか赤いクイーンの間から現れます。間違い無く赤いクイーンの間に移動してしまったことを目の当たりにした、次の瞬間!黒いクイーンの間を確認してみると、あなたが選んだカードが戻ってきているのです!!

ヴィジター (Visitor)

カードマジック入門事典
p.190

考案者であるラリー・ジェニングスの原案です。後に、ラリー・ジェニングス自身の手によって改案が発表されますが、この本で紹介されているのは「エキスパート・カード・ミステリーズ」に発表された当時の原案の手順です。クイーンを使う事にも重要な意味があるのですが、手順の中で巧妙にさりげなく利用していることに感動します。綿密に練られたアイディアを巧妙なストーリーと共に実現化した素晴らしいトリックです。(2004.06.05)

まぼろしの訪問者 (Larry Jennings)

新版ラリー・ジェニングスのカードマジック入門
p.158

原案者であるラリー・ジェニングスの手順を解説したものですが、カードマジック入門事典 で解説されている手順とは若干異なっているようです。ラリー・ジェニングス自身が改案したものなのか、解説者の加藤氏の記憶と原案の手順に若干の差があったのかは定かではありませんが、こちらの解説ではクイーンを使う必然性はありません。基本的な原理をマスターするには無駄の無い手順と言えるかもしれませんが、個人的にはクイーンを使う事のメリットを活かした手順の方が好きです。(2005.05.21)

最後の訪問者

ゆうきとものクロースアップ・マジック
p.43

ゆうきとも氏による visitor の改案です。「黒いカードに挟んだセレクト・カードが、赤いカードの間から現れ、また元の黒いカードの間に戻っていく」という基本コンセプトはそのままに、より自然なハンドリングで演じられるように改良されています。初めて読んだときには、変更が加えられた箇所の中に「ん?これで大丈夫か?」と思ってしまうような所を感じたのですが、演技の流れを時系列的に捉え、観客の意識がその時どこに集中しているのかを考えながら手順を追っていくと、(言葉は悪いのですが)上手く手を抜いている事が判ってきました。何度か読み直してみると「なるほど」と納得できる作品でした。実際に人前で演じてみると、初めて読んだときの違和感が綺麗に払拭されました。演じやすい作品です。

詳しい手順は17枚のイラストを添えて7ページに渡って詳しく解説されています。また、改案のコンセプトについてもしっかりと補足されています。(2007.12.22)

アイソレイテッド・ビジター

世界のクロースアップマジック
p.27

デレック・ディングルの改案です。4枚のKを使いますが、原案のQを使う手順と同様に巧妙な使い方をしています。原案とくらべて何が良くなったとは言えませんが、1つの解決策としてはスマートだと思います。途中で使われる2つの技法も適材適所といった印象です。全体的な印象も原案とあまり変わらないと思いますが、あえて違いを探すなら、手順の中のゆとりでしょうか。原案は誰がやっても似たような印象になりそうですが、こちらの作品は、演じるスピードや話のリズムなどによって印象の幅が広がるような気がします。

私見ではありますが、原案の方が「不可能な移動」に焦点を当てていて、この作品の方は「瞬間移動」に焦点を当てているような印象を受けました。もちろん演じ方次第でどのようにも見せられますが、作品を考えているときの両者の頭の中ではこのような違いがあったのではないかと感じました。(2014.08.03)

私案ビジター

松田道弘のクロースアップ・カードマジック
p.57

松田道弘氏の改案です。「ラリーの原案の手順では、赤のクイーンと黒のクイーンの位置関係が曖昧である」と指摘し、それを改善するための策が施されています。また赤のクイーンに挟んだ観客のカードが、黒のクイーンの間に突然出現するという、この作品の一番不思議な箇所を最大限に演出するために、ビジュアルな見せ方を工夫しています。また、原案で使われている、絵札ならではの強力なサトルティを2度有効に使っているのも特筆すべきところです。一部「発表するには問題がある」とご自分で書いている箇所がありますが、そこを改善するのも楽しみ方のひとつでしょう。

「瞬間的に移動して、次の瞬間には元に戻っている」というスピーディーな印象ではなく、「離れた場所にスッと現れ、いつのまにか静かに戻っている」そんな印象を受ける作品です。(2017.04.23)