garamanのマジック研究室

Wild Card

「ワイルド・カード」というより、日本人としては「オールマイティー・カード」と言ったほうが判りやすいかもしれません。数枚のカードをテーブルに置きワイルドカードでタッチしていくと、次々とワイルド・カードに変化していくというビジュアルなマジックです。ピーター・ケーンが Hugard の Magic Monthly (1962/04) に「Watch the Aces」というタイトルで発表したのが原案です。翌年、フランク・ガルシアがワイルド・カードというタイトルで売り出してから爆発的な人気が出たそうです。

ちなみに、トランプゲームで「ワイルド・カード」といえばジョーカーを連想するかもしれませんが、ポーカーの世界ではジョーカー以外にもワイルド・カードになり得ます。「ワン・アイ・ジャック」というルールでは、片目だけのジャック(スペードとクラブのJの事です。この2枚は横向きに描かれているので片目しかありません。)がワイルド・カードとして扱われますし、「デュース・ワイルド」というルールでは、4枚の2(2の事をデュースと呼びます。)を全てワイルド・カードとして扱います。更に「スピッド・イン・ジ・オーシャン」に至っては、10・J・Q・Kの全てがワイルドカードになってしまいます。

ワイルド・タイム

高木重朗の不思議の世界
p.21

高木重朗氏の手順が解説されています。難しいテクニックを使用せず、流れるような自然な動作の中でマジックが進行していきます。現象としては6枚のジョーカーを1枚のハートの2で触っていくたびに次々とハートに2に変わっていき、最後には7枚のカード全てがハートの2になってしまいます。

6ページにわたる解説で細かく丁寧に解説されていますが、丁寧すぎて日本語の文章としては解りにくいような印象も受けます。とは言え19枚のイラストを伴った詳しい解説ですから、確実にマスターできるように書かれているといって良いでしょう。専門的な本では、ある程度の知識を前提として書かれた文章になりがちですが、この本は初心者の方でも充分に理解できるように配慮されています。(2006.09.02)

Wild Time

夢のクロースアップ・マジック劇場
p.141

上記と同じ高木重朗氏の手順を松田道弘氏が解説しています。リチャード・カウフマンが書いた [Amazing Miracle of Sigeo Takagi] に解説されている高木氏の手順を松田道弘氏が翻訳したものです。ちなみに、上記の「高木重朗の不思議の世界」は、[Amazing Miracle of Sigeo Takagi] を二川滋夫氏が翻訳した本ですので、翻訳者が違うだけで内容(手順)は同じです。

解説文は10ページ・イラストは22枚におよび、解りやすくまとまっています。手順解説の最後に「リセット」という章を設けて、手順終了後から手順を始める前の状態に戻す方法を解説してある辺りが、松田氏の研究熱心さを覗わせます。(2006.09.02)

The Tamed Card

ビジョンズ・オブ・ワンダー 第1巻 日本語字幕版
演技 : Title1/Chapter4
解説 : Title1/Chapter13

全てのカードが同じフェイスに変化していく中で、一枚一枚の裏表を改めさせるような巧妙な手順構成で、トミー・ワンダーの改案です。DVDで彼の演技を見れば「Wild Card」現象の本当のインパクトを体感できること請け合いです。単に手順を追うだけではなく、観客とのコミュニケーションの中で絶妙なタイミングでカードを改めさせています。観客がテーブルに出されたカード数枚を気にした瞬間、「どうぞ手にとって確認してください」と、堂々とカードを渡してしまいます。カードが変化していく途中にカードに手を触れて確認し、その後、残りのカードも全て変化していくわけですから、その説得力は凄まじいものがあります。究極の「Wild Card」手順と言えると思います。(2006.12.16)

ワイルド・カードの原点にかえる

魅惑のトリックカード・マジック
p.90

タイトルの通り、原点であるピーター・ケーンの作品をもとにした、松田道弘氏による改案です。改案に改案を重ねた最近の作品では、1枚ずつ順番に変化していく事に重きが置かれている場合が多いですが、この作品では、一度に複数枚のカードが変化するという原案の印象を踏襲しています。「魅惑のトリックカード・マジック」という本のタイトルにもあるように、当然トリック・カードを用いるわけですが、現在市販されているものとは違う、ケーンのオリジナルで使用されるトリック・カードを使います。自作するには手間がかかります。手順解説を読むと複雑な印象を受けますが、演技を見る人には、スピーディーで明瞭な印象を与えるでしょう。いや、そういう印象を与えるように演技しなければならないのですが。。。

手順解説は4ページほどでほぼ文字ばかりですが、2枚のイラストがありますのでそれを頼りに、、、と、言いたいところですが、私が保持している初版本では肝心のイラストに間違いがありますので注意が必要です。図2の上部に「DFカード X 面が上」と書かれていますが、このコメントの位置が間違っています。実際はその左にある4枚のカードの事を指しています。(2010.04.25)

ウォッチ・ジ・エース

カードマジック大事典
p.333

ワイルド・カードの原点となるピーター・ケーンの作品です。1962年に Hugard's Magic Monthly に掲載されたものです。8枚のバラバラなカードと1枚のAという構成で始まり、最終的には9枚全てがAになります。2回に分けて4枚ずつ変化させるという特徴がありますが、これは、トリックの原理上は理にかなった方法です。ただし、観客からの目線では、2回に分けること自体が不自然に映る気がします。その理由がないからです。この手順のまま演じるのであれば、何らかのセリフや動作を工夫して、理由づけをしてください。それがクリアできれば、非常にわかりやすくてインパクトの強い作品だと思います。使う技法はハーマン・カウントくらいですので、決して難しいものではありません。

たったの1ページでイラストも写真もない解説ですので、うっかり素通りしそうになりますが、その後の多くの改案を深く理解する上でも、一度は実際に演じてみてその効果を確認しておきたい作品です。(2015.10.11)

ワイルド・カード

カードマジック大事典
p.334

フランク・ガルシアによって普及したワイルド・カードの原案と言えばこの手順を指します。売り出した際、ピーター・ケーンの名前をクレジットしなかった事が物議を醸しましたが、ピーター・ケーンのウォッチ・ジ・エースが元になっていることは間違いありません。ワイルド・カードというパケットトリックとして販売したことで世界的に大ヒットしたことから、フランク・ガルシアが商品として完成させたというのが的確でしょうか。ウォッチ・ジ・エースと同様全部で9枚のカードを使用します。ウォッチ・ジ・エースでは8枚のバラバラなカードと1枚のAという構成ではじまり、最後には全てがAになりますが、ワイルド・カードでは8枚のスペードの2と1枚のハートの3という構成ではじまり、最後には全てがハートの3になります。2種類のカードしか出てこないので見た目が非常にシンプルです。また、ウォッチ・ジ・エースでは4枚の変化を2度繰り返しましたが、ワイルド・カードでは1枚ずつ変化させていくような演出です。

この解説にも1枚のイラストもありません。ほぼ1ページに収められた、あっさりとした解説です。(2015.10.18)

It's Really Wild

Stars of Magic 5
演技 : Chapter2
解説 : Chapter3

バーナード・ビリスによる改案です。まずはデックを観客の手で4つのパケットに分けてもらいます。この4つのパケットのトップカードを全て同じカードに変えるというコンセプトです。手始めに、ひとつのパケットのトップカード(スペードのJとします)を取り上げ、胸ポケットから取り出した一枚のワイルドカード(ダイヤの6とします)と重ね合わせます。すると、トップカードもダイヤの6に変わってしまいます。今、マジシャンの手には2枚のダイヤの6。テーブルには相変わらず4つのパケットがあります。ひとつのパケットのトップカードを取り上げ、2枚のダイヤの6に挟むと、一瞬でダイヤの6に変わってしまいます。これを全てのパケットのトップカードで行い、結果として、テーブル上には6枚のダイヤの6が並ぶことになります。

"Really" と名付けたのは決して大げさではありません。観客がデックを4つのパケットに分け、そのトップカードが全てダイヤの6に変わってしまうのですから、そのインパクトは絶大です。ただ、ちょっと怪しげなムーブが気になるところです。そのまま練習を重ねて洗練させるより別な技法に置き換えたくなりますが、コンセプトはとても良いと思います。(2016.06.26)