garamanのマジック研究室

Invisible Noise

グラスとハンカチと3枚のコインを使います。

テーブルのグラスにはハンカチが被せられています。そのグラスに向かって1枚のコインを投げ入れると、チャリンとグラスに入る音が聞こえます。もちろんグラスにはハンカチが被せられたままです。投げ入れた方の手にはコインが残っていませんし、グラスからは音が聞こえたのですから、コインは中に移動したとしか思えません。続いて2枚目・3枚目も同様に投げ入れます。投げ入れるたびにグラスからはチャリンと音がします。

もちろんこれだけでは満足できないでしょう。本当にグラスにコインが入っている状態をまだ見ていないわけですから。そんな気持ちに応えるべく、マジシャンはグラスに被せられたハンカチをゆっくりと引いていきます。徐々に露になるグラスの中には、確かに3枚のコインが入っています。


インビジブル・ノイズ Invisible Noise (Joe Safuto)

世界のコインマジック
p.288

コインとグラスが奏でる音を巧みに利用した、ジョー・サフュトーの作品です。コインマジックのテクニックを練習していると、音を鳴らさないように気を使うことが多くなりますが、あえて音を鳴らす事で効果的な現象を作り出しています。個人的な意見ですが、音を利用した作品には上質なものが多いような気がします。

特別な仕掛けは一切ありません。基本的なテクニックをいくつか組み合わせるだけですので、比較的簡単な部類には入ると思います。ただし音が重要な要素ですから、周りがざわついている状況では適しません。解説は4ページ、11枚のイラストを添えてしっかりと解説されています。

また、現象の説明では3枚のコインを移動させたところまでしか書きませんでしたが、この作品には続きがあります。もう一度グラスにハンカチを被せ、コインを1枚投げ入れます。今度は手の中のコインが確かに消えているにも関わらず、あの音が聞こえません。もう1枚のコインを投げ入れますが、今度も音が聞こえません。3枚目もやはり音がしません。ここからがクライマックスです。元々3枚のコインはテーブル上に並べられていたのですが、1枚目のコインが置いてあった場所を思い出して、そこを指先で押してみます。その瞬間、グラスからチャリンと音が聞こえます。2枚目・3枚目のコインがあった位置も次々と押していくと、その度にグラスから音が聞こえます。グラスに被せられたハンカチを取り除くと、そこには確かに3枚のコインが入っています。(2009.01.24)