Portable Hole
このマジックには奇妙なものを使用します。それは「袋の無いがま口」です。そう、口金しかないのです。ところが、マジシャンがこの「袋の無いがま口」を開くと、中からコインが何枚か出てきます。『コイン以外にも不思議なものを入れています』と言いながら、次に取り出したものは、「持ち運びできる穴(ポータブル・ホール)」です。直径10cmくらいの黒い円盤状の穴を取り出して、それをテーブルに置くのです。そして、先ほど取り出したコインを次々とその穴の中に落として消してしまいます。
ポータブル・ホール The Portable Hole(David Roth)
世界のコインマジック
p.80
デビッド・ロスの代表作です。この本の著者であるリチャード・カウフマンは冒頭で「この演技はデビッドの天才的な創造力と統合力によって生み出された、最高峰のコインマジックである」と絶賛しています。手順はとても長く複雑で難しいです。しかし、たとえ習得するのに何年かかったとしても、決して後悔することは無いでしょう。
この本では、実に21ページに渡って詳細な解説がされています。しかも小野坂東氏による翻訳ですので自然な日本語に訳されていて、とても分かり易いです。ポータブル・ホールに関して触れている他の本においても「詳しくはリチャード・カウフマンの COIN MAGIC を参照」と書いているくらい上質な解説を、小野坂氏が自然な日本語に翻訳したのがこの本ですから、ポータブル・ホールに関する最高の解説文であると言えるでしょう。(2004.08.14)
The Portable Hole
Stars of Magic Vol.8
演技 : Title1/Chapter12
解説 : Title1/Chapter13
デビッド・ロスの実演と手順解説が収録されています。手順については、前述の 世界のコインマジック に解説されているとおりです。デビッド・ロスの代表作だけに、数え切れないほどの実演経験に裏づけされた、熟練の演技です。手順を理解していても、やはり本人の演技を見ると嘆息が漏れます。
演技時間は3分程です。洗練された構成で、3分があっという間に過ぎます。全体を写したカメラと手元のアップを狙っているカメラで撮影されています。実演の後は、本人による解説が8分ほど収録されています。解説では、正面だけでなく、左後ろ・右後ろのアングルからも撮影されているので、文章では表現の難しいような部分も、よく確認できます。(2012.05.19)
ザ・チェンジ・バッグ
デビッド・ウィリアムソン ウィリアムソンズ・ワンダー
p.49
デビッド・ロスが放った一級のミステリ作品が、デビッド・ウィリアムソンによって一級のコメディー作品に変化しました。全く元の作品を感じさせないくらいの改案です。タイトルが大きく変わっているのもそのはず、あの「穴」を使いません。小さな小銭入れから3枚のコインを取り出して始まる手順で、開始早々小銭入れの口金から袋が落ちてしまいます。そこからは、マジシャン自身が小銭入れとコインに翻弄されるかのような展開が広がります。
演技はコミカルですが、その裏で使われる技法は意外と多いです。リテンション・バニッシュ、ハン・ピン・チェン・ムーブ、キック・ムーブなどは技法とも思っていないくらいに慣れた方なら、一度は試してみて欲しい逸品です。(2019.12.22)
バー・フライト
エリック・ミード クロースアップマジック
p.53
ポータブル・ホールのような現象ですが「持ち運べる穴」というコンセプトは無くなっていますので、観客から見た印象は別物かもしれません。マジシャン目線ではポータブル・ホールの改案と言って良いでしょう。この本はマジック作品の解説に主眼を置いているわけではなく、効果に対するアプローチとして作品が解説されています。バーなどのくだけた状況で突然マジックを乞われた時に、即興でインパクトのある不思議を起こすには。それを実現するための作品が「バー・フライト」です。
即興で演じるためにわずかに準備が必要です。それは、テーブル上に自然にペーパーナプキンを置いておくだけです。もしマジックを演じる流れにならなければそのペーパーナプキンは使わずに会話を続ければ良いわけですが、エリック・ミードはそうした消極的な待ちの姿勢は推奨していません。この状況を生かせるようにその場の会話をコントロールして、「人は実際に見たことを信じられなくなることがある」という話題に促し、誰かから「マジシャンならそれを実演して見せてほしい」と頼まれるように仕向けます。
観客から借りた3枚の銀貨を、テーブルに(ペーパーナプキンの横に)並べて置きます。右手で1枚ずつ拾って左手に3枚とも握り込みます。(たまたま?)手近にあったナプキンの上に拳を移動してさらに強く握り込むと、ナプキンがヒラっと動きます。演者自身も驚きつつ手を開くとコインは2枚に減っていて、ナプキンの下から1枚のコインが現れます。同じように2枚目のコインもナプキンの下に移動しますが、3枚目は少し違います。すでに移動済みの2枚のコインをナプキンの上に置き、左手に3枚目を握った状態にします。が、気がつけば左手は空になり、ナプキンの上のコインはいつの間にか3枚になっています。(2025.08.12)