garamanのマジック研究室

Three Fly

左手の指先でファン状に広げて持った3枚のコイン。そのうちの1枚が一瞬で右手の指先に移動します。手の中に握り込んだコインが移動するのではありません。指先で持ったコインが見える状態のまま一瞬で移動します。もちろん1枚だけではなく、連続で次々と移動させ、3枚全てが移動してしまいます。

クリス・ケナーの不朽の名作。


スリー・フライ

クリス・ケナー エキセントリック・カードマジック
p.222

雑誌「Magic Man Examiner」に掲載された、クリス・ケナーの手順です。その後、プロ・アマ問わず多くのマジシャンが実演し、その過程で少しずつ形を変えて現在に至りますが、そのルーツはこの手順です。コインを極力隠さずにシンプルに移動現象を見せることが特徴で、その上、観客の視覚だけでなく聴覚まで利用して、さりげない説得力を持たせています。人によってはこのあたりのことを力説したくなるところでしょうが、クリス・ケナーは、ユーモアいっぱいの文章で軽妙に解説しています。とはいえ決して解説の手は抜いていません。4ページにわたって12枚のイラストを添えた、シンプルな手順にしては充分すぎるくらいの丁寧さです。(2019.07.06)

スリー・フライ

クリス・ケナー エキセントリック・カードマジック
p.36

クリス・ケナー自身の改案です。解説の冒頭で「マジシャン仲間を完全にぶっとばすために、、、」と冗談めかして書かれているように、この作品は、マジシャン仲間も驚くようなオチを特徴としています。指先に持った3枚のコインが、見える状態のまま1枚ずつもう一方の手に移動するという現象は変わりません。しかし、最後に全てのコインが銅貨に変わるというオチをつけているのです。このオチのために難易度はぐっと上がっています。シンプルなスリーフライでは満足できないような目の肥えた観客が相手ならオススメの作品ですが、そうでなければあまりオススメはできません。なぜなら、もとの作品は3枚のコインしか存在していないように感じるからこその移動現象だからです。最後に他のコインの存在を感じさせてしまうのは勿体ないことです。

タイトルが [Three Fly] ではなく、[Three Fry] になっていますので、いわゆるスリーフライだと思って見ているマジシャンたちを驚かせようという意図が込められているのでしょう。(2019.07.14)

トリオ
〜 Trio 〜

ギャリー・カーツ マジック・コレクション
p.103

1990年の "Unexplainable Acts" で発表されたギャリー・カーツの作品です。全体の手順は長いです。空の両手からコインが1枚ずつ現れ、その3枚のコインが一気に消え、再び1枚ずつ現れ、今度は1枚ずつ右手から左手に飛行し、最後に1枚ずつ全てのコインが消えてしまいます。4段目の飛行部分がスリー・フライ現象に相当しますので、ここに取り上げておきます。

実はジョナサン・タウンゼントが発案した3枚のコインの飛行現象を、1987年頃にダイ・バーノンやクリス・ケナーに見せたようで、それに影響を受けたクリス・ケナーが1992年の本でスリー・フライと命名して発表したものが有名になりました。それに対して、ギャリー・カーツはこの長い手順を1990年に発表していますので、クリス・ケナーよりも前にギャリー・カーツが発表していることになります。飛行現象のみに焦点を当ててスリー・フライと名付けたセンスが多くのマジシャンに影響を与えたのか、はたまたギャリー・カーツの手順は実演するには難易度が高すぎたのか、理由はわかりませんが後に発表されたクリス・ケナーの手順がスリー・フライの原案と認識されるようになっています。

全体を通して滑らかに演じるには相当な練習が必要ですが、それでも極端に難しい技法を用いるわけではありませんので、コインマジック好きな方は挑戦しがいのある手順ではないでしょうか。(2023.11.19)

Misty Like A Dream

CREATIING MAGIC
演技 : Chapter2
解説 : Chapter6

マッチに火をつけ右手に握り込むとそれが銀貨に変わり、その銀貨を2枚・3枚と増やします。3枚の銀貨をまとめて消したあと、空中から1枚ずつ銀貨と取り出します。3枚の銀貨でスリー・フライを演じた後、その銀貨をまた1枚ずつゆっくりと消してしまいます。一旦コインマジックを終えてカードマジックを演じようとデックを取り出しますが、その箱から出てきたのは3枚の銀貨。ポケットにしまったはずの3枚の銀貨が、また1枚ずつ現れ、3枚のチャイニーズコンに変化したり、また銀貨に戻ったり...

ギャリー・カーツ マジック・コレクションに解説された [Trio] よりも現象が増え、充実のルーティーンになっています。次から次に現象が起こりますが、本人はゆったりと、かつ観客とのコミュニケーションを楽しみながら演じているため、裏で行っている難しさを全く感じさせません。(2023.12.03)