garamanのマジック研究室

Bullet Catch

日本では「弾丸受け止め術」などと呼ばれています。銃そのものは15世紀の前半頃から戦争に使用されていましたが、その威力・恐ろしさが一般に認知されていくに従い、そのインパクトの強さを利用するため、マジックの演出としても取り入れらるようになります。始めは何らかの現象が起こる合図としてマジシャンがステージ上で音を鳴らしただけかもしれません。しかし17世紀頃になると、銃が持つ本来の機能である殺傷能力を利用して、マジシャンの命を脅かすような作品が生まれます。マジシャンは自分に向かって銃を撃たせ、その銃弾を胸の前に構えた皿で受け止めるといった危険術を始めたのです。銃が大砲になったり、受け止めるのが皿ではなくリンゴだったり、挙句の果てには歯で受け止めるといった現象までが開発され、多くのマジシャンが様々な演出を考え出しました。そのどれもがセンセーショナルで、ショーのトリを飾るパフォーマンスとして採用されました。

マジックに失敗は付き物ですが、このマジックの場合は銃口がマジシャンやアシスタントなどに向けられているため、失敗が死に結びついてしまう大変危険なものでした。実際にこのマジックでは何人もの命が失われています。

銃口の前のマジシャン

大魔術の歴史
p.162

「弾丸受け止め術」がマジックとして利用されるまでの歴史的経緯や、基本的な演出、そのトリックなど細かく解説されています。真偽の程は確かではありませんが、ロベール・ウーダンが書いた自身の回想録からは、彼がアルジェリアの回教徒達を驚かせたエピソードが紹介されています。また数々の痛ましい事故についての記述もあり、過去のマジシャン達のこの作品に賭ける執念を感じるようなエピソードも描写されています。中でも「弾丸受け止め術」の代名詞的存在であるチャン・リン・スーについては、彼自身の謎や死の真相についての様々な説が紹介され、写真つきで多くのページが割かれています。

マジシャンは常に新しい方法を模索するもので、方式の異なる銃が登場すると直ぐに新たな方法が生み出されていきます。この作品自体があまり演じられなくなりましたが、20世紀以降のマジシャンも多くのトリックを考案しています。そんな好奇心旺盛な現代のマジシャンの名前もいくつか紹介して、全体で18ページのボリュームになっています。(2011.01.30)

奇術師のロシア式ルーレット - 弾丸受けとめの術 -

トリックスター列伝
p.162

初めてこの作品を演じたマジシャンの事や、ロベール・ウーダンのエピソードなどに軽く触れたあと、チャン・リン・スーやセオドア・アネマンの話題へと展開していきます。チャン・リン・スーについてはその死の真相を語ると共に、彼の正体が明かされるまでの経緯も書かれています。続いて、著者の松田道弘氏をして「玄人の目から見ても非の打ちどころのない完璧な演技をみせた」と言わしめる、セオドア・アネマンの演技について、2ページにわたって詳細な手順を写実的に表現しています。ただし、このトリックを解説するのは気が引けたらしく、そのメインアイディアのヒントを掲載するにとどめています。気にしすぎと思われるかも知れませんが、何人ものマジシャンが実際に命を落としている作品だけに止むを得ない処置かもしれません。(2011.02.06)

5. TWENTIETH-CENTURY SORCERERS 1-5

MAGIC A PICTURE HISTORY
p.169

「TWENTIETH-CENTURY SORCERERS (20世紀の魔術師たち)」という章で [Bullet Catch] について触れられています。これだけでも、[Bullet Catch] がマジックの歴史の一部を構成する大きな作品であった事が窺い知れます。内容はやはりチャン・リン・スーの演技とその死に関する記述から始まります。続いて、この作品で命を落としたマジシャン達の名前や没年が淡々と記されます。さらに著者のミルボーン・クリストファーの古い友人でもあるジーン・ヒューガードが近代的なライフルを使って演じたシーンや、著者自らが演じた時の状況などがリアルに綴られています。

ジーン・ヒューガードの演技はイラストで、チャン・リン・スーの舞台は写真で紹介されています。この本の記述や写真などが、他の本で引用されていることが多いようです。(2011.02.12)

悪霊を撃った銃

奇跡・大魔法のカラクリ
p.63

フランス政府からの依頼でアルジェリアに派遣されたロベール・ウーダンが、アラブ人たちが崇拝するマラブーよりも強い能力を見せつけることで、戦争を事前に防いだという物語が2ページに渡って紹介されています。最後にトリックの解説もあります。

ウーダン自身が発行した回顧録から引用した物語ですので信憑性はいまいちですが、よくできたお話です。(2011.02.19)

Ching Ling Foo, Chung Ling Soo, and The Great Lafayette

The Illustrated History of Magic
p.241

この本は全24章からなりますが、第14章では東洋(風)マジシャン達の肖像が綴られています。その中の最後の4ページほどにチャン・リン・スーの記事があります。1918年3月23日、"Defying the Bullets (弾丸への挑戦)" と題して演じられた彼の最後の演技について触れた後、当時の新聞での反応や、事故後の調査内容などが詳細に語られています。このページで紹介したどの本よりも詳細な説明です。

この本の記述は他の多くの本に引用されています。(2011.02.28)