garamanのマジック研究室

Chink A Chink

マジシャンは、テーブルに4つの角砂糖を正方形になるように並べます。1辺が 30cm 程度の正方形になるイメージです。マジシャンは両手で角砂糖を1つずつ覆い、指先を怪しげにヒラヒラさせます。その後両手をテーブルから浮かせると、1つずつあるはずの角砂糖がどちらかの手の下に集まっています。この瞬間移動とも言うべき現象を何度も繰り返し、4つの角砂糖は徐々に1箇所に集められます。


MALINI-BEY CHINK-A-CHINK (S. Leo Horowitz)

STARS OF MAGIC (日本語版)
p.52

マックス・マリーニが得意としていたアイディアが元になっており、マリーニの発案というのが定説のようです。3個の角砂糖を使ったマリーニのアイディアに触発されて、モハメッド・ベイ(本名、サム・レオ・ホロウィッツ)が4個の角砂糖を使った手順に仕上げました。マリーニ自身もベイの手順を非常に高く評価していたようで「自分が生きている間は公開しないで欲しい」と頼んだいう事です。ベイはその依頼を忠実に守りぬきました。そのため長い間公開されなかったのですが、マリーニの死後、ついに[Stars of Magic] に発表されました。

この発表の時点で完成された名手順といえるでしょう。その後あまりにも有名になってしまい、手軽に演じられてしまうことも多く、逆に良い演技でこの作品を見る機会は少ないかもしれません。どこかで見た手順を一度忘れて、このホロウィッツの作品を改めて味わってみるのも良いでしょう。ホロウィッツの手順は2段構成です。1段目は良く知られたもので4箇所に置いた角砂糖が一箇所に集まる現象です。2段目は左手に3つの角砂糖を握り、4つ目の角砂糖をポケットにしまったにも関わらず、左手を開くと角砂糖が4つに増えているという増加現象。最後にポケットにしまった角砂糖を取り出して実際に増えた角砂糖を全て見せて終わります。

難しいテクニックは殆どありませんが、人前で演じた経験が大きく効果を左右する作品でもあります。(2009.04.26)

チンカチンク

クロースアップ・マジック
p.89

モハメッド・ベイの手順の1段目だけを、ほぼそのまま解説してあります。3ページで7枚のイラストを添えた簡潔な解説です。必要最小限にして充分な解説と言えるでしょう。最後にいくつか注意点が述べられていますが「この手順では右手と左手を絶対に交差させてはいけません」というのが大きなポイントになります。モハメッド・ベイの手順も交差しないのが特徴ですが、右手と左手が近づく事がないのに角砂糖が移動するからこそ、テクニックを感じさせない現象になるのです。テクニカルな印象を極力省く事が大切です。

もっとも手軽に演じられる手順です。それだけに安易に実演してしまうとその技量を疑われるのがオチです。よっぽどの個性がないと成立しないとも言えます。(2009.05.02)

チンカ・チンク

マジック大全
p.196

著者の松田道弘氏自身が「モハメッド・ベイの手順の前半部分です。」と明示しているように、前半部分を忠実に解説しています。4箇所にある角砂糖が一箇所に集まりますが、その集まる場所が4つのうちの1つではなくテーブルの中央です。たったそれだけの差ですが、雰囲気が随分と変わるものです。終わったときの印象を考えると、中央に集める方が自然であるとも言えます。

4ページにわたって、7枚のイラストを添えて詳しく解説してあります。手順解説は箇条書きで22のステップに分けてあります。この本によると、アルバート・ゴッシュマンはビール瓶の王冠を使い、ダグ・ヘニングは貝殻を使っていたそうです。角砂糖程度の大きさであれば素材は自由に選べますから、個性を出して演じてみたいものです。(2009.05.02)

角砂糖の移動(チンカ・チンク)

クロースアップ・マジック事典
p.111

特に記載はありませんが、モハメッド・ベイの前半の手順です。手順解説は1ページ程で簡潔です。イラストも2枚だけですが、理解に支障はないでしょう。手順解説は1ページですが、全体として3ページにわたってチンカ・チンクについての記述がありますので、実に2ページ分相当の周辺知識が得られます。

マックス・マリーニの優れた工夫も補足されており、実用的なアドバイスに満ちた内容です。(2009.05.09)