garamanのマジック研究室

Levitation

ステージ上で台に寝かされた女性がゆっくりと浮き上がり、周りに何もないことを示すために輪が通される。誰もが見たことのある有名なシーンです。マジシャンがステージでの人体浮揚を実現させるよりも前に、ダニエル・ホームをはじめとする霊媒たちは、自身が浮き上がるところを人に目撃させていたようです。また、ヨガ行者たちも、修行の末に自らの体を重力に逆らって浮かせることができるまでになったと、自分の能力を誇示してきました。飛行機の発明のように「空を飛びたい」という思いとは少し違って、この神秘的な「浮揚」への憧れは、国を問わず人の心を捉えていたようです。

このページでは、大掛かりなステージでの人体浮揚だけでなく、人体を浮かせる現象は全て同じ括りにしてまとめます。

Balducci Levitation

Stars of Magic 2
演技 : Title1/Chapter60
解説 : Title1/Chapter61

バルドゥッチ・レビテーションは、舞台で助手を浮かせるのではなく、目の前でマジシャン自身が立ったまま少し浮くという現象です。1974年にエド・バルドゥッチによって発表されたそうですが、その発明者は不明なようです。このDVDでは、ポール・ハリスが実演・解説をしています。

堂々と神秘的に演じて観客の心をうまく捉えることができれば、本当の魔法を見たかのような反応が得られることもあります。逆に自信なさげにちょっとしたマジックというくらいの印象で演じると、鼻であしらわれる可能もあります。そういう意味では演じるのに勇気がいる作品かもしれません。

しかし、道具を使わず、即席にいつでも実演可能な人体浮揚ですから、大きな魅力があるのは間違いありません。室内でも屋外でも実演きますが、角度には弱い方法ですので、その点だけはじっくりと研究することをお勧めします。風船片手にパントマイムをしながら、途中でこの作品を演じるとインパクトは絶大です。(2018.06.24)

人体浮揚篇

大魔術の歴史
p.97

トリックの解説を目的としたものではなく、「人を浮かせる」という現象に対する様々なアプローチをまとめた記録です。その流れで巧妙な仕掛けにも触れていますので、結果的にはトリックが解説されている作品もあります。

西洋では、多くの聖人たちについて、瞑想中に浮いたという伝説が残っています。中東ではイスラームの僧が屋根の上まで舞い上がり、インドではヨガの行者が浮きあがり、日本でも役行者や仙人などの伝説の中に、人体浮揚の記述が残っています。真偽のほどはともかく、世界中で人体浮揚に対する畏怖の感情があるのは共通のようです。

マジックというエンターテインメントとしての人体浮揚は、19世紀頃から花開いたと言って良いでしょう。ロベール・ウーダンがステージに小さな台を置き、その上に一本の細い杖を立て、息子のウジューヌがその杖の先に肘を乗せて、空中で横たわる様子はインパクトのある現象で、今イラストを見ても不思議に見える現象です。この作品を皮切りに、名だたるステージマジシャンの多くが、この現象に様々なアプローチを施してきました。

この本では、アレキサンダー・ハーマン、ジョン・ネビル・マスケリン、ハリー・ケラー、ハワード・サーストン、ハリー・ブラックストンらの名前とともに、彼らの工夫が分析されています。(2018.07.08)

宙に浮く行者

奇跡・大魔法のカラクリ
p.105

インドのヒンズー教の行者は、修行の末に宙に浮く術を身につけるという話は、何世紀にもわたって信じられてきました。1820年頃にこの現象が報告されて以来、座ったままわずかに浮き上がるとか、空中を歩いて峡谷を渡るなど、様々な話が飛び交い、同時にその真偽について様々な憶測を呼びました。

この本では、初めてこの現象が報告されたときの様子や、それから100年後に一人のインドの行者がロンドンで実演した時の様子などが、簡潔に紹介されています。ロンドンでのパフォーマンスは写真に撮られ、多くの雑誌に掲載され、その時のトリックは暴かれてしまいました。その原理もイラストを添えて解説されています。しかし、それ以前の話も全てがトリックだとは言わない姿勢が紳士的です。(2018.07.15)

宙に浮く女性

奇跡・大魔法のカラクリ
p.140

ステージ上で行われた最もポピュラーな人体浮揚についての解説です。マジシャンに催眠術(!?)によって眠らされた女性が、台の上に横たわっています。ところが台を外しても女性の体は落下することなく浮かび続けます。ここでマジシャンは空中に横たわる女性に大きな金属の輪を通して、女性の周りには何もないことを証明してみせます。人体浮揚といえば、このパフォーマンスを想像する方が多いでしょう。この最もポピュラーな演出について、大きく2つの方法を解説しています。マジシャンによって仕掛けや演出には違いがありますが、大まかな原理はこの本に解説されている通りです。(2018.07.22)

天空の琴

日本奇術演目事典
p.33

空中に浮きながら琴を爪弾く様子を描いた錦絵が紹介されています。櫻綱駒壽(さくらつな こまじゅ)という幕末に活躍した軽業師が、大阪から江戸に下ってきて大活躍した頃の錦絵です。琴も奏者も一緒に空中に浮き、それを観客たちが見上げています。これはもう軽業ではなく手妻と呼ぶ方が適切でしょう。一般向けの伝授本の挿絵などとは違い、雅な世界観が描かれた錦絵ですから、大きくカラーで掲載されているのはありがたいところです。

錦絵には「大坂下り櫻綱駒壽 浅草観音境内ニ於興行仕候」とあります。「大阪から櫻綱駒壽がやってきます。浅草寺の境内で興行いたします。」といった意味ですから、宣伝のようです。そうであれば、多少盛った表現になっている可能性はあります。とはいえ、奏者と琴が一緒に浮いたように見える演目が存在していたのは事実で、日本独自の雅なマジックと言えるでしょう。(2018.07.29)

天空の琴

日本奇術文化史
p.203

日本奇術演目事典」で紹介されている「天空の琴」と同じ錦絵が紹介されています。残念ながら、こちらは小さな白黒の画像になっていて、一目ではその壮大さがわかりにくいです。それでも、左下に描かれた観客の様子を見れば、その驚きは相当なものであったことが想像できます。本文の解説には、仕掛けに対する考察が補足されています。

櫻綱駒壽が幕末の軽業名人と呼ばれたのは、足技で桶を扱ったり、ハシゴを使ったバランス芸を見せたりするだけでなく、このようなトリックをうまく利用することで、いわゆる「軽業」の域を超えていたからなのかもしれません。(2018.07.29)

屏風の上で空中立ち

日本奇術演目事典
p.181

「盃席玉手妻」に掲載されている「屏風の上より半身を出(いだ)し、空中に立(たち)て見せる傳(でん)」が紹介されています。屏風の裏側に回り込んだ女性が、ふわっと空中に浮き上がり、屏風の上から上半身が見えるくらいの高さに留まってみせます。それを座りながら見ている男性2人が、屏風を見上げる姿勢で驚いている様子が描かれています。上・中・下の3巻セットですが、この挿絵が描かれているのは上巻で、その解説が文章で書かれているのは下巻です。

下巻の解説文も撮影されたページが掲載されています。また、その文章の翻刻も現代語訳も添えられています。ただし、この文章の通りに実演できるとは思えません。実演されていたのなら、これ以上の何らかの工夫があったはずです。(2018.08.05)

天女の舞

日本奇術文化史
p.269

日本奇術演目事典」で紹介されている「屏風の上で空中立ち」と同じ画像が紹介されています。残念ながらこちらには下巻の解説文章の画像は掲載されていません。原文は紹介されていないものの、そのトリックについては説明があります。また、現代ではどのような方法を採用しているかにも、一言添えられています。

どうやら、この屏風の向こう側で浮き上がる手妻は「盃席玉手妻」でしか扱われていないようです。(2018.08.05)