Airtight
あなたが選んだ1枚のカードが、マジシャンの手によってデックの中に戻されます。今、マジシャンの右手には一組のデック、左手には膨らませる前の風船が乗っています。マジシャンが、風船に向かってデックを叩きつけた瞬間、デックは風船の中に入り込んでしまいます。風船は、膨らませる前の状態ですから、デックが入ってピチピチの状態です。
このまま風船を膨らませていくと、確かにデックが中に入っているのが分かります。風船の口を押さえて、上下に揺すりながらカードをさらにごちゃ混ぜにします。あなたが選んだカードは風船の中で裏も表も分からない状態で存在しています。
マジシャンはこの風船を割ることなく、あなたのカードだけを取り出して見せます。
Jay Sankey の名作です。
エアタイト
〜 Airtight 〜
ジェイ・サンキー センセーショナルなクロースアップ・マジック
p.153
ジェイ・サンキーが実際に演じていた、立って演じる時の手順です。一つ前に演じる作品とのつなげ方など、実用的なアドバイスもあります。日本のテレビ番組でもジェイ・サンキー自身によって演じられた事がありますが、その後も多くのマジシャンがこの作品を演じています。カード以外のアイテムを使い、そのアイテムならではの現象を起こすこの作品は、一般の観客にとってもマジシャンにとってもインパクトが絶大です。カードマジック特有のテクニックも確かに使われていますが、完全に脇役です。世の中には、テクニックを直接見せ付けるような作品も存在しますが、この作品は、テクニックを裏方に回し、現象の不可思議さを前面に出した秀作です。テクニックに溺れていては、きっとこの発想は出てこないでしょう。まさに魔法(マジック)です。
5ページにわたる解説に8枚のイラストが添えられており、詳しい解説です。(2012.06.16)
エアー・タイト
世界のクロースアップマジック
p.244
雑誌「Richard's Almanac」に発表された原案の手順です。当時この原案手順を見た人のほとんどは実演しようとは思わなかったようですが、ジェイ・サンキー自身がレクチャー等で演じる姿を見た人達は挙って自分のレパートリーに加えていったそうです。文章で書いて伝えるのが向いていない現象なので、ぜひパフォーマンスを見てほしいと思わせる作品です。発表当時の手順なので若干荒削りな感じもしますが、アイディアの力強さを感じると同時に、その後発表された改案がいかに洗練されているかがよくわかります。
解説の最後には、もう1つのエンディングとして、デックが入った風船を長い針で貫き、割れた風船のかけらと観客のサイン入りのカードが針に刺さった状態で終える、という派手な手順も紹介しています。
3ページ程の解説に8枚のイラスト。簡潔です。(2014.07.20)