garamanのマジック研究室

Card Through The Handkerchief

あなたが覚えた一枚のカードが、一組のカードの中に戻されよく混ぜられます。その後、マジシャンは一組のカードをハンカチで包み、ハンカチの四隅をまとめて握ります。一組のカードは、四隅を握られた事によって袋状になったハンカチの中でぶら下っている状態です。マジシャンがそのハンカチを左右にゆらゆらと振ったり、上下に揺すったりしている内に、一枚のカードがゆっくりとハンカチを貫通してきます。その一枚のカードは、はじめにあなたが覚えたカードなのです。

とてもビジュアルなマジックで、クロースアップよりはパーラー向きかもしれません。


CARD THROUGH THE HANKERCHIEF
-ハンカチを貫通するカード-

ターベルコース・イン・マジック 第3巻
p.236

もっともオーソドックスな基本的手順です。誰が発明したのかも分からないほど古くからある手順ですが、とてもビジュアルで効果的です。ハンカチから一瞬でカードを取り出すのではなく、ゆっくりと貫通していく様子は本当に不思議です。ハンカチは借りたものでもできますし、事前の準備も不要ですので、カード一組さえあればできる即席マジックとしても優秀です。

解説は短いですが、挿絵付きで簡潔にまとめられていますので、基本的な技術があれば比較的簡単に習得することが可能です。(2005.01.23)

NEW ERA CARD THROUGH THE HANDKERCHIEF
-新・ハンカチを貫通するカード-

ターベルコース・イン・マジック 第3巻
p.237

原案の欠点を補いつつ、ストーリーを加えた手順です。原案の手順では、ハンカチで包んだ後に裏表を検める事ができませんが、この方法ではカードが貫通する直前までハンカチの裏表を検める事が可能です。また、ストーリー性を持たせた演出になっています。解説のままの台詞では不自然になりがちですが、こういった演出を加える事によってマジックの世界をより魅力的に演じることは大切です。(2005.01.23)

THREE CARD THROUGH THE HANDKERCHIEF
-ハンカチを貫通する3枚のカード-

ターベルコース・イン・マジック 第3巻
p.240

3名にカードを一枚ずつ選んでもらい、ハンカチに包んだ一組のカードから一枚ずつ貫通させていくという手順です。技術的には前述の「NEW ERA CARD THROUGH HANDKERCHIEF」と同様ですが、3枚のカードを一枚ずつ貫通させていく過程で、その都度、ハンカチの裏表をさりげなく確認させることができますので、原案の手順を知っている人でも不思議に見えるように構成されています。解説も4ページに亘って詳細にまとめられています。(2005.01.23)

ハンカチを通り抜けるカード

ロベルト・ジョビーのカード・カレッジ2
p.59

原案より少しやさしく演じられるように工夫された手順です。ジョビーの解説によると、原案は1800年代の後半、シカゴで活躍していたマジシャンによって考案されたそうです。残念ながら名前は分かっていません。。。この本で解説されている手順は、ドイツのカリオスト・メイヤーからジョビーがレクチャーを受けたものだそうです。

この手順では、途中の技法を簡単に行うための工夫が施されていますが、その副作用として、透けることのない厚手のハンカチである必要があります。そのため、観客からハンカチを借りて演じることができる原案の即席性は若干失われます。と言っても、ハンカチの四隅を握ってしまうとシワができてしまいますから、そもそも借りたハンカチで演じること自体を私は避けています。そういう意味では、副作用は無いと言って良いのかもしれません。。。改良した手順を解説した後には、原案の方法も補足してありますので、この一冊だけで原案と実用的な改案の2つを知ることができます。(2005.10.31)

CARD THROUGH THE HANDKERCHIEF

THE BLACKSTONE BOOK -OF- MAGIC & ILLUSION (Paper Back)
p.182

原案の手順をハリー・ブラックストーンJr. が解説しています。「古典的で巧妙なカードマジック」として、CARD THROUGH THE HANDKERCHIEF を取り上げています。ハリー・ブラックストーンJr. だけでなく、その父親であるハリー・ブラックストーンのお気に入りのマジックでもあり、ポール・ロッシーニもそのルーティーンに組み入れていたそうです。ロッシーニはナイトクラブで演じるマジシャンでしたからこのビジュアルなカードマジックは重宝したのだと思います。

13枚の挿絵付きで4ページわたって細かく解説してあります。このページで紹介しているどの本よりも詳しく取り上げています。(2005.10.31)

カードとハンカチ

プロがあかすカードマジック・テクニック
p.208

S.W.アードネスによる解説です。ギャンブルの場でも使えるほど、全く不自然さを残さずにテクニックをこなすのが本来あるべき姿だというのが、アードネスの一貫した姿勢ですから、原案に潜む(精神的に)難しいテクニックを手軽にできるようにアレンジするという妥協はしていません。ロベルト・ジョビーの解説では、少しでも手軽に同じ現象を起こせるように工夫が施されていますが、それでも解説の最後で「テクニックが身についているのなら、古い手順の方をお薦めする」と付け加えられています。その手順が、まさにコレです。

全体的に大雑把な説明なのですが、なぜか所々に「細かすぎないか?」と思えるような一文があったりします。でも実際に演じてみると、確かにこの一文が効いているのが判ります。優しい解説者なら、そういう一文には自分で(なぜ、そうするべきなのか?を)補足するものですが、アードネスには、そういった配慮はありません。アードネスに言わせれば「黙って言われた通りにやってみな。」といったところかもしれません。

イラストはたったの2枚。文章はたったの2ページ。大雑把な解説。。。にも関わらず、読み返すたびに一番親切な解説に見えてくるのが不思議です。(2007.01.20)

Card Through Handkerchief

ビジョンズ・オブ・ワンダー 第3巻 日本語字幕版
演技:Title1/Chapter4
解説:Title1/Chpater14

トミー・ワンダーによる改案です。相手に選んでもらったカードをファンの中に戻したら、ファンを閉じてそのままハンカチに包んでしまいます。ここが原案や他の改案と違うところです。

実際にはそのまま包んでいるわけではなく、ハンカチで包む動作に紛れて巧みに観客のカードを抜き出していますが、パスなどによるコントロールではなく、この作品にぴったりな技法を考えだして解決しています。演技を見ている観客の反応はとても大きく、このクラシック作品が決して子供騙しではないことを証明しています。また、実演だけではなく解説もされていますが、トミー・ワンダーならではの、細かいところまで考え抜いたアドバイスが収録されています。この作品は、基本的なものとして色々な本で解説されていますので、とてもシンプルな原理で構成されています。そのため、手順の説明は簡単にできてしまうのですが、この作品について5分も語れるほど、トミー・ワンダーは考え抜いています。(2020.01.26)