garamanのマジック研究室

Chicago Opener

マジシャンが持っている一組の裏向きのデックの中に、あなたが覚えた1枚のカードを、同じく裏向きに差し込みます。すかさずマジシャンは一組のデックを両手の間に広げると、丁度いま差し込んだ辺りに一枚だけ裏模様の違うカードが見つかります。その裏模様の違うカードを裏返すと、紛れも無くはじめにあなたが覚えたカードなのです。あなたが覚えたカードの裏模様が変化したことになります。

まだ終わりません。裏模様が変化したカードは一旦テーブルに置いておき、改めてもう1枚のカードを選んで覚えます。(仮にスペードのAとしましょう)先ほどテーブルに置いておいたカード(はじめに選んだカード)と今選んだスペードのAをこすり合わせると、なんとはじめに選んだカードもスペードのAに変化してしまいます。

あなたが覚えたカードは裏模様も表の数字も変化してしまうのです。

アル・リーチが「Red Hot Mama」を考案し、その後、ジム・ライアン、フランク・エバーハードらの手を経て、フランク・ガルシアが「Chicago Opener」を発表。さらに翌年、フランク・ガルシアが更なる改案を施して「Chicago Style」を発表。この「Chicago Style」が、結局アル・リーチの「Red Hot Mama」によく似ているという事情が、クレジットを複雑にさせています。しかも、日本で翻訳・紹介されている手順は「Chicago Style」を元にしたものが多いにも関わらず、名前は「シカゴ・オープナー」と紹介されていることも事態をさらに複雑にしています。

私のサイトでは、これらの系統の作品は全て「Chicago Opener」としてまとめて扱います。


シカゴ・オープナー
〜 Chicago Opener 〜

カードマジック入門事典
p.209

フランク・ガルシアによる傑作手順です。挿絵も無く、1ページ半で簡単にまとめられた解説ですが、理解するのには何の問題もないでしょう。デックを用意して解説どおりに演じればすぐに覚えることが可能でしょう。ただし、手順どおりに演じたからといって相手が不思議がってくれるほど簡単でもありません。手順が簡単だからこそスムーズに淀みなく演じられるように練習してからの実演をお勧めします。

手順は観客からみてもシンプルですから、スムーズに演じる事ができれば、疑わしい動作を一切感じさせないうちにビジュアルな現象を起こせます。(2005.05.29)

X Marks The Spot

パーティ・アニマル 第1巻 日本語字幕版
演技 : Title 2/Chapter 26 & 27
解説 : Title 2 / Chanpter 28

観客に「タネ教えて」と言われたときに演じるという便利な作品です。「教えたら業界に干されるから、、、」という雰囲気で周りの目線を気にしながら、こっそりと観客に教えてしまうという作品です。もちろん実際にはタネを教えませんが、観客は何か秘密を教えてもらえるものと期待を高めながら顔を寄せてきます。

そんな中、観客に一枚のカードを選んで覚えてもらいます。覚えたカードをデックに戻したら、周りの目を気にしながら、こう告白します。「実は今、こっそりマークをつけたんですけど、見えました?」と。裏向きのデックを広げながら、小さなマークを付けたカードをみんなが覗き込んで探していると、デックの中央辺りには、デカデカと X マークが付いたカードが現れます。誰が見てもわかる大きな X マークが付いたそのカードをひっくり返すと、本当に観客が覚えたカードです。観客にこのカードを押さえておいてもらい、今度は、別の観客で演技を続けます。二人目の観客にも一枚覚えてもらったら、デックに戻し、混ぜてしまいます。また、大きな X マークを探すためにみんなで覗き込みながらデックを広げていきますが、最後まで広げてもマーク付きのカードはありません。あれ?と思っていると、マジシャンが一人目の観客が押さえているマーク付きのカードを指差して「そこにあるじゃないですか」と一言。まさかと思って確認してみると、二人目が覚えたカードになっています。

途中から「タネ教えてくれてないじゃん!」となりそうなものですが、彼の演技がそうさせません。コミカルな中にインパクトの強い現象を盛り込むことで、そんな事はどうでも良くなっています。「タネ教えて」の返しとして秀逸な作品です。(2017.01.28)

シカゴ・クローザー

ゆうきとものクロースアップ・マジック
p.121

ゆうきとも氏による改案です。「シカゴ・オープナー」は、名前の通りオープニング・アクトとして相応しいいものですが、そこに改案のヒントを求め、あえてルーティーンの最後にクロージング・アクトとして演じることができる作品に仕上げられています。実際、付属のDVDでは「サインカードでGO!」という一連のルーティーンの最後に実演されています。

デックには、裏面の色が違うカードを1枚だけ混ぜておきます。第一段は、観客が表を見ながら自由に選んだカードが、偶然にも色違いのカードだったという現象。この、一人目の観客が選んだ色違いのカードはテーブルの上に出しておきます。続いて第二段では、二人目の観客に選んでもらってサインまでしてもらったカードで、アンビシャスカードを行うのですが、なんと一番上に上がってきたのは、一人目の観客が選んだカード。テーブルに置いたはずのカードがトップから出てきてしまいます。不思議に思ってテーブルのカードをひっくり返すと、いつのまにか二人目がサインしたカードに変わっています。そして、クライマックスの第三段。は、秘密。。。ありえないどんでん返しが待っています。

たった1枚のギャフカードで起こす奇跡。クローザーと題するだけあって、どんなマジックの後にでもすぐに始められる手順になっています。その上難しい技法はほとんど使われません。秀逸です。(2018.05.06)


Matchbook Prediction

マインド・ミステリーズ・トゥー 第7巻 日本語字幕版
演技 : Title3/Chapter8
解説 : Title3/Chapter12

リチャード・オスタリンドの改案です。本人が解説の中で「Chicago Opener の改案だ」と言っているのでここに分類しておきますが、もはや別作品です。現象としては Open Prediction に分類した方が適切かもしれません。観客が1枚のカードを引いて覚えたら、デックの中程に差し込んでもらいます。デックはそのままテーブルに置いて、観客には覚えたカードを念じてもらいます。マジシャンはそれを当てるのに苦労し、一服しようとタバコを取り出し、マッチブックに火をつけますが、そのマッチブックがバイスクル柄。観客にそのマッチブックを広げてもらうと、観客の覚えたカードが印刷されています。日常にあるアイテムが突如予言の道具にかわる面白さから、観客からは大きなリアクションが返ってきます。

マッチブックを一度テーブルに置いて、改めて観客に別なカードを引いてもらい、覚えたらデックの中程に戻してもらいます。今度こそ道具を使わずにズバッと当てるのかと思いきや、マジシャンはまたテーブルの上のマッチブックに目をやります。観客も「まさか」と思いつつマッチブックに手を伸ばし、もう一度広げると、今度は2枚目のカードが印刷されているのです。

2度目の観客の反応はとても大きなものになります。Chicago Opener の改案とは言いますが、最後のフィニッシュに演じるのに相応しい逸品です。(2020.03.08)