Devilish Miracle
2人の観客に1枚ずつカードを選んで覚えてもらいます。2枚のカードをデックに戻したらよくカットして、おもむろに5枚のカードを抜き出します。5枚のカードの表面を観客に見てもらい、自分が覚えたカードが含まれていたかを確認すると、1人の観客が「あった」と答えます。マジシャンは、5枚のパケットから「見えないカード」を1枚抜き出してテーブルに置きます。すると不思議なことにパケットは4枚になってしまいます。ここで「あった」と答えた観客に覚えたカードを教えてもらいますが、4枚のパケットの中にはありません。つまり観客のカードが見えない状態でテーブルに置かれているわけです。次に、テーブルに置いた見えないカードを表向きにして、テーブルの隅に置いてある残りのデックに向かって投げつけます。デックをスプレッドすると、そこには表向きの観客のカードが現れます。 これだけでも充分に不思議ですが、まだ2人目の観客のカードを当てていません。ここで2人目の観客が覚えたカードを教えてもらったマジシャンは、スプレッドされた裏向きのデックの中から、また「見えないカード」を1枚抜き出して、今度は4枚のパケットの方に差し込みます。するとパケットの枚数は5枚に代わり、ファンに開くと、中央には表向きになった2人目の観客のカードが現れます。
エドワード・マーローの代表作のひとつです。1948年に、エドワード・マーローとカーメン・ダミコの連名で発表されました。
Devilish Miracle
MALONE meets MARLO 1
演技 : Title1/Chapter19
解説 : Title1/Chapter20
演じているのはマーロー派のビル・マローンです。1948年に原案が発表された後、マーロー自身も改善を続けていたようですので、このDVDに収録されているのは、完成された手順といっても良いものではないでしょうか。2人の観客を相手にカード当てを演じることは、冗長な上に演技全体が長くなってしまいますし、1人目のカードを当てた時点で驚きが大きければ、2人目は蛇足になりかねません。この作品では、1人目のカードを当てた時のインパクトが充分でありながら、さらに2人目のカード当てでも満足させてくれる構成になっています。
ツッコミを入れようと思えばいくつか考えられます。しかし、それが気になるのはマジシャンだけな気がします。あまり演じられるシーンを見かけないのも、こういったことが一因なのかもしれません。それでも、一般の観客に充分な驚きを提供できるのは間違いありません。(2017.09.10)
悪魔の技
〜 A DEVILISH MIRACLE RETOLD 〜
ブラザー・ジョン・ハーマン カードマジック
p.242
ブラザー・ジョン・ハーマンが、珍しく他人の作品について時間を費やして練り上げた作品です。同書の別作品で使われている「カウントバック」という独自のテクニックを活用しています。マーローのデビリッシュ・ミラクル現象に対して、このカウントバックをうまくフィットさせることで、マジシャンをも煙に巻く作品が出来上がりました。原案を見て「なるほど賢い」と思った直後にこの改案を見せられても、きっとさらに驚くことになるでしょう。
この現象の弱いところは、現象の歪みです。ふたりに覚えてもらったカードをわざわざ入れ替えて当てるという捻り方が、無駄な「やりすぎ感」を生んでしまいかねません。現象が濁って見えるか、不思議な現象の積み重ねに見えるかは、演出次第とも言えます。ハーマンの作品では、そのあたりが念入りに考察されているような印象を受けました。解説文には特に記されていませんが、少ないセリフの絶妙な配置に、そういった意図を感じます。(2017.09.17)
デビリッシュ・ミラクル
あそびの冒険 全5巻
「4 ミラクル・トランプ・マジック」
p.99
松田道弘氏の改案です。原案に比べて演じやすくなっています。手順の冒頭でかなりの重要な部分は完了しているので、その後の演技に集中しやすい作品とも言えるかもしれません。全体的に無理のない技法のみで作られているので、難易度は決して高くはありません。
原案をあちこち手直ししたと解説されている通り、観客の2枚のカードのコントロールを初め、いくつか改善されている点があり、それらは非常に適切な改良だと思います。なお、松田氏自身の改案と高木重朗氏のアイディアが含まれているようです。(2022.12.04)
デビリッシュリー・ダイレクト
高木重朗の不思議の世界
p.11
高木重朗氏の改案です。今見せたばかりの観客のカードをこっそりとデックに戻すアイディアが非常に自然で、まったく怪しさを感じさせません。このアイディアは前述の松田道弘氏の改案にも取り入れられています。解説文はたったの3ページで、イラストも2枚しかないにも関わらず理解に支障はありません。これこそ、複雑なことをせずに現象を達成している証拠ではないでしょうか。原案でやりたかった現象を、ダイレクトに起こして見せる秀作です。ふたりの観客のカードをわざわざ入れ替えて当てるという「現象の歪み」のようなものはそのままですが、段階的により強い驚きを与えるという意図は見事に達成しています。(2022.12.11)
デビリッシュ・ミラクル
カードマジック大事典
p.215
原案の手順を簡素にまとめた解説です。二人の観客に選んでもらったカードをデックに戻す時に、それぞれ特定のポジションに移動させる必要があります。その部分にアイディアを適用した改案もありますが、原案の手順ではどう処理しているのか。残念ながらこの解説ではやり方までは書かれていません。1ページ半程のボリュームで原理は正確に解説されていますが、具体的なやり方や細かな台詞回しなどは書かれていませんので、技法編で学んだことを駆使して自分らしく作り上げていくという姿勢が必要です。(2022.12.18)