garamanのマジック研究室

Elevator Card

3枚のカードを使います(仮にスペードのA・2・3としましょう)。この3枚は3人の人だと思ってください。残りの1組のカードをエレベータに見立てて演技が始まります。

エレベーターの一階(つまりカード1組の一番下)にスペードの3を裏向きにセットすると、エレベータで上がってきたかのように最上階(カード1組の一番上)から出てきます。1階から最上階に移動したわけです。続けて、スペードの2を最上階にセットすると今度は一階に移動します。最後にエレベータの中程の階(カード1組の中程)にスペードのAをセットすると、1枚目と同様最上階に移動しているのです。

現象としては、複数のカードで Ambitious Card を演じているような感じにも見えます。

エレベータ・カード (松田道弘)

遊びの冒険 全5巻
「4 ミラクル・トランプ・マジック」p.165

エレベータ・カードの歴史に触れながら、松田道弘氏の改案が解説されています。このマジックの原案は、エドワード・マーローによるもので「ペネトレーション」というタイトルだったそうです。その後ビル・サイモンというアマチュアマジシャンによって名付けられた「エレベータ・カード」というネーミングの方が一般化したようです。

この本では、松田氏が原案のほんのわずかな「キズ」を指摘して改案を解説しています。怪しげに見える手つきを排除して、更に見た目の分かりやすさを追求したことにより、「マジック」がまた一歩「魔法」に近づいたような感じがします。(2004.09.18)

エレベーター・カード (気賀康夫)

奇術入門シリーズ トランプマジック
p.60

原案の難易度を少し落とした簡単な方法が気賀康夫氏によって解説されています。エレベータに見たてるというストーリーを最大限に生かし演技できるのではないでしょうか。4ページに渡って12枚の挿絵付で詳しく解説されていますので、習得も比較的容易です。

ちなみに、この本の脚注によるとマーローの原案は「トランプの不思議(高木重朗著)」に解説されているそうです。さらに、ビル・サイモンの改案も「奇術研究第2号」に同じ高木氏が解説されているとのことです。(2004.09.18)

エレベーター・カード

トランプ手品百科
p.107

この本は堤芳郎氏によって、初心者向けに書かれた本です。そのためか説明はとても短いです。たった2ページでしかも半分以上がイラストなので、要点(タネ)だけを知るには良いのですが、あまりにも扱いが乱暴なような気もします。解説されている方法をどのように演じることが効果的なのかを考えながら練習すると、意外と奥が深いことに気がつくと思います。同書の中には所々で演技上の注意事項などのアドバイスがあるので、参考にしてください。「タネを知ったら即演技」みたいな事は避けましょう。(2004.09.18)

ビル・サイモンのエレベーター・カード

ステップアップ・カードマジック
p.74

3と2のカードによる移動を2回ずつ見せる事により、現象がとても分かりやすくなっています。ビル・サイモンの改案です。通常、同じ現象を繰り返して演じることはタブーとされていますが、この手順はリピテーションが驚きを増幅させる好例と言えるのではないでしょうか。ただし、黙々と手順を追うだけでは繰り返しがしつこく感じられると思います。観客とのやり取りの中で自然に必然性を持って繰り返す事が肝心です。効果的に繰り返す事が出来れば、とても分かりやすく、見ている人の負担も少ない名手順です。

6ページにわたって詳細に解説されています。(2005.09.10)

エレベーター夫妻

テクニカルなカードマジック講座
p.57

基本的なエレベーター現象を基に、全体的な現象の判りやすさと、カードが移動した事の説得力、ストーリー性を高めた荒木氏による作品です。通常は3枚のカード(A・2・3)を使用して構成されるマジックですが、この作品ではA・2・3がそれぞれ2枚ずつ(一宮夫妻・二宮夫妻・三宮夫妻と名付けて)、合計6枚のカードを使用します。実際に移動させるのは3枚のカードです。どのカードを移動する時も、そのカードとペアになるカードの存在を意識させる事で、ビジュアルな説得力を増す事に成功しています。使用するカードが増えた事によって現象が複雑になるのではないかと懸念して読み進めましたが、読み終わってみれば全体を通して判りやすさが断然増しています。

8ページにわたって、20枚のイラストを使用して解説してあります。難しい技法は使用しませんし、簡単な技法でありながらもキッチリと解説されています。さらに付属の CD-ROM に実演映像も収録されていますので、習得に必要な条件は全て揃っていると言えるでしょう。

また、日本でも屈指のカードマジック研究家でもある著者によると、エドワード・マーローの「ペネトレーション」ではなく、それ以前にダイ・バーノンが発表した「エース・ツー・スリー」という作品をエレベーター・カードの原案として挙げています。(2007.04.29)

螺旋階段
〜 Spiralvator 〜

パケット・トリック
p.152

マックス・メイビンによる、赤黒4枚ずつを使用したパケット版エレベーターカード手順です。1970 代後半に考案した作品がベースになっていますが、当時はまだデュプリケート・カードを使用した手順だったそうです。その後、レギュラー・カード8枚だけを使用したこの手順にたどり着き、GINII 1986 年 8 月号に掲載した作品をこの本に収録したとのこと。手順を見ていると、元々の作品の手順でどこにデュプリケート・カードが使用されていたかは想像がつきます。また、それをどのようなアイディアで解決したのかも推察できます(あくまでも推察ですが)。

4枚の赤いカードを螺旋階段に見立て、黒いカードを一枚ボトムにおきます。合計5枚になったパケットをくるっと水平に半回転させると、黒いカードがトップに移動しています。これを4回繰り返すわけですが、3枚目のカードの移動ではとても説得力のある見せ方になっています。4枚の赤いカードの下に3枚目のカードを置くとき、フェイスをチラッと見せてしまうのです。チラッと見えた黒いカードが、赤い4枚のパケットのボトムに置かれ、その後くるっと回しただけでトップから現れる、というインパクトのある現象になります。そしてこの現象をレギュラー・カードだけで演じているわけですから、最後には8枚のカード全てを確認してもらう事も可能です。

マックス・メイビンらしく、相手の心を見透かしたような作品に感じられました。というのも、1枚目の移動では、黒いカードを裏向きのままボトムに置くため、観客の心理としては「ボトムに置いたカードは本当に黒いカードなのか?」という疑念を抱かせているからです。マックスは恐らくわざとそうしているはずです。2枚目の移動でも同じように裏向きで移動させるため、観客は益々疑念を深めます。1枚目の移動では気にしなかった人も、2枚目ではちょっと気になるはずです。そこまで準備してから3枚目の移動時に「チラッと見せる」工夫をしているため、「本当にボトムに置いたカードがトップに上がってきている」と感じるのです。

そして、最も大切な事は3枚目のカードが本当に移動していることを「説明してない」という点です。あくまでも「チラッと見えてしまった」という状況が大事です。3枚目のフェイスを意図的に見せて説明してしまうと、「1枚目と2枚目はなぜフェイスを見せられなかったのか?」という当然の疑問が沸きます。それに対してマックスの手順では、3枚目も他のカードと同じように移動させているだけで、他の移動の時との差がありません。フェイスが見えたのは偶然なのですから。偶然フェイスが見えたカードが正しく移動しているのを見た観客は、1枚目・2枚目のフェイスを確認していない事に疑問を持たないものです。偶然手にした情報は、過大評価されるのです。(2008.03.23)

私案エレベーター・カード

現代カードマジックのアイディア
p.120

松田道弘氏による改案です。ポイントは3点。1つ目は3枚のカード(A、2、3)の位置関係を明確にする事。デックから3枚のカードを離す事も意識されています。2つ目は極力長い時間フェースが見える状態を保つ事。表向きの状態が長いほどクリーンな印象を与える事になります。3つ目はパケットを3つに分けて、それぞれのパケットで一度にエレベーター現象を起こす事。こちらはビル・サイモンのアイディアを拝借したようです。

6ページにわたって説明されている内容は比較的詳しいので、難しく感じるところはありません。1部独特な技法も出てきますが、この本の他の作品で詳しく解説されています。(2008.05.11)

アクロバット一家

ロベルト・ジョビーのカード・カレッジ1
p.127

ロベルト・ジョビーの改案です。基本的なテクニックのみで解決した習作といった印象です。タイトルに「エレベーター」というフレーズを入れていないのは、特定のカードが上下するだけの現象ではないからです。途中で裏表が逆になりながら上下するようなアクロバティックな動きを取り入れています。4枚のカードが次々に移動していきますが、毎回少しずつ難しくなっていくというストーリーになっており、原案の単調な印象を破っています。

たったの2ページでイラスト3枚の解説ですが、必要にして充分な解説です。(2010.01.30)

Elevator Passengers / Penetration

MALONE meets MARLO 2
演技 : Title1/Chapter18
解説 : Title1/Chapter19

原案者のエドワード・マーロー自身の改案でしょうか。[Elevator Passengers] というタイトルの作品です。マーロー自身は [Penetration] というタイトルで発表したわけですが、その後、ビル・サイモンによって名付けれられた「Elevetor Card] という名称が普及したのをうけて、この改案名も [Elevator Passengers] になっているようです。この改案では、移動するカードは4枚になっています。1枚目はボトムからトップに、2枚目はトップからボトムに、3枚目は表向きのデックの中程に裏向きに差し込むと、なぜか向きが表向きに揃ったうえに、不思議な動きでニュッと現れます。そして最後の4枚目は、裏向きのデックのトップに置いてデック全体をスプレッドすると、中央から表向きに現れます。

正直なところ、せっかく [Elevator Passengers] というタイトルにしているにもかかわらず、3枚目と4枚目は Elevator が無関係になってしまったような印象を受けます。たしかに、起きている現象は、よりインパクトが強くなっています。オチも強くなった気はします。しかし、タイトルに無理に Elevator と付けない方が良かったのではないかと思うのは、私だけでしょうか。

なお、この DVD では改案の演技解説の最後に、原案のバージョンもしっかりと解説されています。(2017.09.02)

S.W.エレベーター

クリス・ケナー エキセントリック・カードマジック
p.163

クリス・ケナーの、まさにエキセントリックな改案です。デックに表向きに差し込んだ観客のカードが、観客側に少し突き出た状態のまま、徐々に上がってきます。タイトルにS.W.と付いていることから想像がつくかと思いますが、S.W.Erdnase の「S.W.E シフト」を使用します。その技法を繰り返すたびに、カードが徐々に上がってきます。技法をダイレクトに使用して作品へと昇華させる好例です。

解説だけでは実現不可能にも思える技法で、実際にカードを手にとってやってみると、本当に不可能だと実感するでしょう。それほど難しい技法ではありますが、世の中にはこの技法を完璧にこなすマジシャンが実際に何人もいます。その1人になるために多くの時間を割くことができれば、魔法使いの仲間入りができるかもしれません。(2019.08.25)