Emotional Reaction
あなたは1組のデックを持ち、表が自分の方に向くように広げながら1枚のカードを決めます。決めたカードのところでデックを2つに分けるのですが、そのとき左手側の一番手前に決めたカードが来るように分けます。今、両手にパケットを持っていて左手の一番手前には決めたカードがあることになります。決めたカードを自分だけで良く覚えたら、左手のパケット全体を胸に押し当てておきます。これで覚えたカードは誰にも分からなくなりました。
右手に持ったパケットは他の観客に渡して充分にシャッフルしてもらいます。ここまで、マジシャンは一切カードに触れていません。。。マジシャンはシャッフルされたパケットを受け取ると、中央あたりで2つに分け、そこにあなたが胸に当てているパケットを返すように言います。あなたは、パケットを返す前にもう一度覚えたカードを確認して、更に一度カットしてパケットのどこに覚えたカードがあるか分からなくしておきます。マジシャンはあなたからパケットを受け取ると、1組のデックを何度かカットします。
これで、あなたが覚えたカードがどこにあるのかは、誰にも分からない状況になりました。ここでマジシャンはあなたにも見えるようにカードを広げると、あなたの反応を見ながら覚えたカードを見事に言い当ててしまいます。
イモーショナル・リアクション
〜 Emortional Reaction 〜
カードマジック入門事典
p.57
ダイ・バーノンによる演出の妙を体験できる素晴らしいマジックです。原理が非常にシンプルであるために軽視されがちですが、ここに説明されている手順を身につければ超能力者を演じることも可能です(悪用厳禁!!)。数多くのマジックを中途半端に演じるよりこの一つだけを完璧に自分のものに出来れば、それだけで超一級のエンターテイメントを提供出来るようになるでしょう。
日本には昭和35年に「奇術研究」という雑誌に既に紹介されていたそうですが、決して使い古されたトリックではありません。道具に頼ったマジックが流行っている中で、このマジックは逆に新鮮な驚きを作り出せること請合いです。(2004.10.16)
エモーショナル・リアクションを考える
タロットカード・マジック事典
p.153
タイトルどおり、エモーショナル・リアクションについての考察です。非常にシンプルな手順でありながら、そのインパクトは絶大です。いや、手順がシンプルであるからこそ不可能性がより一層高められ、不気味なほどの印象を与える作品になっている、と言った方が正確かもしれません。この作品が考え抜かれた作品である事は言うまでもありませんが、それは簡素化された手順だけではなく、何気ない台詞や演者の所作の一つ一つにまで行き渡っています。
この本ではそんな台詞の重要性についての考察や、一つの動作に隠されたいくつもの意味をあらためて整理するといった試みが見られます。短い台詞で的確な指示を与えながら、他の観客にはそんな指示があった事を印象付けない絶妙な台詞。日本とアメリカの文化の違いによって、この絶妙な台詞が上手く直訳できず、カードマジック事典では高木氏が苦心の翻訳をされているようです。そのあたりの裏話も垣間見える興味深い内容が4ページに渡って書かれています。(2008.01.06)
イモーショナルリアクション
新版 ラリージェニングスのカードマジック入門
p.115
バーノンの手順を加藤英夫氏が解説しています。とくに変更されたところはないようです。そもそも単純な原理を利用した作品で、手順も驚くほど簡単ですので、それに伴い解説もとにかく短いです。イラストもなく半ページほどの文章だけで説明されています。この作品に長い説明は必要ありません。また、イラストで補わなければ分かりにくいというところもありません。そのため、どうしても短い解説になりがちですが、その影響で多くの方に見過ごされているのではないかと感じます。
知っているという人でも、実際に演じた事がないという人は多いでしょう。簡単に見える分、演じ甲斐がないと感じてしまうかもしれません。しかし、見る側の視点で捉えると、とても不可能性の高い作品ですし、テクニック的に簡単な分、雰囲気作りに気を配れる作品ですので、ぜひ一度お試しください。(2013.02.16)
Emotional Reaction
FAVORITES
演技 : Title1/Chapter2
解説 : Title1/Chapter5&6
ロベルト・ジョビーがお気に入りのマジックを演じて解説した9作品を収めたDVD「FAVORITES」で、真っ先に収録されているのがこの作品です。シンプルにして天才的な作品だと興奮気味に語るジョビーの様子からも、この作品への愛着が伝わってきます。
演技では、2人の観客を相手に演じています。1人の観客が上半分のパケットをとってボトムカードを覚えている間、下半分のデックをマジシャンが受け取るのではなく、もうひとりの観客に渡してしまいます。原理的にも支障はないですし、観客が複数いるならこの方法は不可能性が高まって良いと思います。ただ、折角不可能性を高めてから観客のマインドを読み取ろうとしている割には、喋り過ぎな気がします。もう少しシリアスな演出の方が(それが似合うマジシャンならですが)相応しいのではないでしょうか。
解説では、Prorogue、Setup、Conflict、Resolution、Epilogue の5段回に分けて詳しく、そして楽しそうに語っています。原理が素晴らしいので簡単に実現できる作品ではありますが、そこは古今東西のカードマジックに精通したジョビーですので、様々な示唆に富むアドバイスをしてくれます。さらに、いろいろなシチュエーションを想定して、3つの補足アイディアを紹介しています。(2020.01.13)