Tuning Fork
マジシャンは、右手で音叉をテーブルに叩きつけて、鳴るはずの音を左手で搾り取って、グラスの中に注ぎ入れます。音だけが入ったグラスをゆっくりと傾けると、先ほどまで聞こえなかった音が鳴り出します。幻想的な現象です。そしてマジシャンはこの現象をコインでも実現してしまいます。グラスの中に3枚のコインを入れてガチャガチャと音を鳴らします。その後コインを取り出しますが、グラスの中には音の余韻だけが残っていると言うのです。そして、グラスを傾けて右手の拳の中に音の余韻を注ぎ入れるのです。右手の拳を左右に振ると確かにガチャガチャと音が聞こえます。しかし、あくまでも音の余韻でしかないので、拳を開くとそこにコインはないのです。
デビッド・ロスの名作です。
音叉
〜The Tuning Fork〜
コインマジック大事典
p.463
コインマジック大事典の最後を飾る名作です。Tuning Fork が日本語で解説された例は少ないと思いますが、この事典で詳細に解説されています。見る側の想像力を要する作品だけに、手順解説のみでは支離滅裂になりかねないところですが、セリフも含めた解説によりひとつひとつの動作の意味がよくわかるようになっています。これだけ親切なら、観客に与える印象を意識しながら演技ができるでしょう。また、コインのクリップの仕方ひとつとっても自然に演じるには難しいのですが、デビッド・ロスが実際にやっている工夫まで細かく記述されています。9ページにわたって21枚のイラストを添えた詳細な解説により、作品全体の完成度の高さがよくわかります。(2022.05.15)
Tuning fork
Stars of Magic 9
演技 : Chapter24
解説 : Chapter25
デビッド・ロス本人による演技と解説が収録されています。使い慣れたコインについての解説なら文章だけでも理解は難しくありませんが、Tuning Fork のようなあまり扱わないもののハンドリングについては、やはり映像があると助かります。また、この作品にはデビット・ロスが独自に考えた特別な道具が必要になります。その作り方や扱い方についても文章だけでは分かりにくい点がありますので、本人による映像があるのはありがたいところです。コインマジック大事典の解説と同じ手順を本人が実演して解説しています。レクチャーの時の映像がそのまま収録されていますので、実演後に参加者への解説が行われ、参加者からの質問にも答えています。単に手順を追うだけではなく、音への注意を促す細かなポイントまで詳細に解説されています。
Stars of Magic シリーズの最後を飾るにふさわしい作品です。参加者の熱意まで伝わっています。(2022.05.22)