メンタリストになる!
ラスベガスのマジシャン、サイモン・ウィンスロップの「How to be a mentalist」の翻訳です。CBS ドラマ「The Mentalist」の主人公が見せる、人の心を読んだような驚異的なパフォーマンスを、一般読者にも身につけられるように解説した本、というコンセプトだそうです。そもそも実在しないドラマの主人公と同じ能力が習得できるわけはありませんが、実用に耐えうるちょっとしたコツはいくつも紹介されていますので、全てがまやかしではありません。この本の内容を、全て言葉どおりに受けてめる方は極めて少ないとは思いますが、実際に人間関係に悩んで、藁にもすがる思いでこの本を手にしてしまうと、ちょっと危険かと思います。表現が極端な箇所や、心理学における古い情報を鵜呑みにしているような箇所が散見されます。ひどいところでは、妖しげな新興宗教かと思うくだりもあったりします。くれぐれも過度な依存をしないようにご注意ください。笑って受け流せるくらいの余裕を持っていて、事前にドラマをご覧になっている方なら楽しめるのではないでしょうか。
信憑性のない情報でいかに相手を説得するかというテクニックも使われているようです。1つだけ引用すると、「もっとも信頼できる研究では、たいへんな数の科学者たち --- 全体の90パーセント以上 --- が超常現象に懐疑的だとされている。」という文章が特徴的です。懐疑的な人が多いのは確かでしょうが、その根拠を示す文章として、こんなに信頼できなさそうな文章が他にあるでしょうか?「もっとも信頼できる研究」って何でしょう?それに、こんな質問に90パーセント以上の科学者がまじめに解答した事が信じられません。
「笑って受け流しながら、面白いところを拾っていく」それが、この出版社の本の愉しみ方なのかもしれません。
レビュー
なし