garamanのマジック研究室

トリック

貧しいラビの家を飛び出し、サーカス団を経てマジシャンとして人生を駆け上がっていくモシェ。しかし、そこは20世紀のプラハ。ユダヤの血を引くモシェには、ナチス政権下を生き抜くという厳しい運命が待っていた。ホロコーストを生き抜いた老マジシャンがたどり着く境地とは。

一方、21世紀初頭のロサンジェルスでは、夢みがちな1人の少年が両親の離婚という悩みに立ち向かっていた。ある日、少年は一枚のレコードにであう。そこに記録された愛の呪文が、きっと両親の仲を元に戻してくれると信じたが、古いレコードには傷があり、ちょうどその部分だけが聞けなかった。少年はレコードに愛の呪文を吹き込んだ本人を探し出し、愛の呪文を教わることにした。果たして少年とその両親の運命は。

時代も場所も違う2つのストーリーが交互に進行していき、お互いの謎が少しずつ明らかになっていき、最後にはきれいに融合していきます。考えさせられるテーマでありながら、ユーモアを交えながら柔らかなタッチで紡がれるストーリーが、すっと心に染み込んできます。ひとりひとりの豊かな表情が心に残る、切ないながらも暖かい作品です。

エマヌエル・ベルクマン (著)
浅井 晶子 (訳)
新潮社

レビュー

なし